10代から映像の世界に生きてきた
20代からずっと、映像の世界で生きてきました。映像だけでなく、演劇も含めて、この世界には10代のころから足を踏み入れています。
日本を放浪したりしながら、東京で仕事をしたりしていたのですが、体を壊して新潟に帰ってきました。新潟に戻ってからもフリーランスとして仕事を続けながら、映画・映像・演劇を教える専門学校の立ち上げに関わることになりました。
会社は「一緒にやりたい人」のためにつくった
専門学校の立ち上げに関わりながら、並行して映像制作や演出、演劇の仕事もずっと続けていました。そうしているうちに、大手との仕事が増えてきたことと、自分の制作のなかで「どうしても一緒にやりたい」と思える人間に出会ったことが重なりました。
フリーランスのままだと、どうしてもタイミングが合わず、その人たちとずっと一緒に仕事をすることができません。それなら会社を立ち上げて、自分が責任を持ってみんなを見ていけばいいと思ったのが、会社を立ち上げた経緯です。簡単に言うと、そんな感じですね。
正社員としての経験はありません。なろうと思ったことがなかったんです。誰かに自分のことを決められるのは、あまり好きではなくて。あとになって「就職しておけばよかったな」「そのほうが世の中は楽だよな」と思うことはいくらでもありましたが、それでも、そうではないものを優先してきたところがあります。
学校も、実は中退しています。当時はインターンという言葉もなくて、学校に先輩たちがどんどん仕事を持ってきてくれるなかで、仕事がしっかりあるなら学校に行っている意味がないのでは、と思ってしまいました。仕事を優先していたら学校に行く時間がなくなって、学校側と話し合った結果、そうなりました。その学校自体も、いまはもうなくなっています。
企業CMから映画祭の運営まで
事業としては、企業のCM制作のほか、新潟国際アニメーション映画祭の実行副委員長として、映画祭の運営や上映、ワークショップなどにも携わっています。
そのほかにも、数年に一度のペースでオリジナルの企画を立てて、映画の制作や上映を手がけています。お客さまは、いまのところ主に新潟の方が中心です。
社員は2名で、企画ごとにフリーランスの方や他社のスタッフに来ていただく形が基本になっています。
クオリティより「ハマるかどうか」
弊社の強みについては、正直、自分ではなかなか言葉にしづらいところがあります。ただ、他社から見たときの魅力というのは、広告というよりもひとつのクリエイティブというか、アートに近い部分にあるのだと思います。だからこそ、ハマるハマらないの差はすごく大きく出るはずです。
「何でもやります」とはお伝えしているのですが、やりながら「こうしたほうがいい」とご提案していくスタイルは、ほかとはすこし違うのかなという気がしています。
価格については、いつも苦労しています。新潟は地方なので、映像の価格がどうしても安くなりがちなんです。東京だとそこまで高いとは思われない金額でも、新潟だとそうはいかない。そこは、いつも苦労するところですね。
大変だったことを聞かれることも多いのですが、大変じゃなかった時期はありません。ただ、大変な方ばかり見ていてもしょうがないと思っています。世の中の社長さんも、一緒にやっているスタッフも、それぞれ私の知らないところで苦労しているはずです。そこにばかりフォーカスしても、あまりいいことはありません。
これからも「作りたいものを作れる」状態でいたい
これからのことで言えば、まず継続すること。もっといろいろな人に「あそこは面白い」と思ってもらって、出資したい、一緒に何かやりたい、と考えてもらえるような存在でありたいと思っています。
人を増やす増やさないは、あまり大きくは考えていません。縁だと思っているので。関わってくださる方が、若い世代であっても、年上の方であっても、こちらに魅力を感じてくれたり、一緒に何かやりたいと思ってもらえたりすれば、それが自然と広がっていくものだと思っています。
まずは、作りたいものを今以上に作れる状態でいることが大事だと考えています。映画を撮ること、芝居を作ること、映画祭の運営、そして新潟の映像を取り巻く環境づくり。そこに関与していけたら面白いなと思っています。
事業としては、オリジナルの映画企画を通して映画を撮ることを、これまでどおり続けていきたいです。フィクションでもドキュメンタリーでも、実写でもCGでもアニメーションでも、そこにこだわりはなく、そのときどきに社会から求められているものを発信していきたいと思っています。
いまの経済的な仕組みは、正直かなり厳しい状況にきています。みんなそれをわかっていながら、どうにもできずにいる。そのなかで、自分たちにできることを考えて、実行していきたいですし、同じように物事を考えられる人と出会いたいと、いつも思っています。
大人の「もっともらしい言葉」は信用しない
最後にキャリアに悩む学生の方へのメッセージとして伝えたいのは、大人のもっともらしい言葉は、あまり信用しないほうがいいということです。
誰かが成功した話は、あくまでその人だけの話です。参考にするのはいいと思いますが、その人に何とかしてもらおうとは思わないほうがいい。どこかの会社に入ったとしても、最後に決めるのは自分だと思っておいたほうがいいと思います。
好きなことをやって、取り返しはいくらでもつきます。だから、頑張れとしか言えません。それでも、困ったらいつでもおいで、というくらいの気持ちではいます。何もできないかもしれませんが。
編集後記
今回インタビューをさせていただいた梨本さんは、質問に対してまっすぐ答えるというより、逆にこちらへ問いを投げかけながら対話をしてくださる方でした。「マッチングとは何か」という話のなかで、既存の枠組みをただ埋めるのではなく、新しい組み合わせから何かを生み出そうとする姿勢に、はっとさせられました。就職か独立かで悩む学生は多いと思いますが、「最後に決めるのは自分」という言葉は、進路のかたちを問わず心に残るのではないでしょうか。