インタビュー

フェルミ漫画大学の脚本家からAI時代の「取材」を武器にする経営者へ

更新: 2026年9月17日
フェルミ漫画大学の脚本家からAI時代の「取材」を武器にする経営者へ
PROFILE
アルファブルーム株式会社 代表取締役
平木昌宏

アルファブルーム株式会社で代表取締役をしております平木昌宏と申します。テクノロジーとエンタメという2つの領域を軸に、企業や業界のキーパーソンへの取材をもとにしたメディア運営やコンテンツ制作をおこなっています。学生時代からライターとして活動し、2024年4月に法人化してからは「取材力」と「AIを活用した情報検知の速さ」を武器に、事業を広げてきました。

高校卒業後、物販からライターへ

中国からの輸入物販から始めた

私は2000年生まれで、今年26歳になります。高校を卒業したのが2018年のことですが、その頃からずっと「自分のビジネスを持ちたい」という思いがありました。最初に始めたのは書籍とはまったく関係のない、中国からの輸入物販でした。中国で仕入れたスマホアクセサリーなどを「Amazonやメルカリで適正価格で売って利益を得る」というビジネスでした。比較的うまくいっていたのですが、輸入元が全て中国からだったこともあり、2020年のコロナ禍で完全にストップしてしまいました。

コロナ禍でライターを始めた

物販だけでは食べていけなくなり、始めたのがライターの仕事でした。当時、ビジネス系YouTuberが増えてきていた時期でしたが、ビジネスというジャンルは、「エンタメに比べてネタが尽きやすい」という弱点がありました。要は、「自分がやってきたことしか話せないことから、すぐに似たような動画ばかりになってしまう」ためです。そんな中で、オリエンタルラジオの中田敦彦さんが「書籍の要約」をし始めていたのですが、それの「ネタ切れにならず、かつ自分の体験と交えて話のレパートリーが作れる」という点に目をつけました。そこで、「書籍要約の台本を作る仕事を始めた」のが、2019年~2020年にかけてのことでした。

フェルミ漫画大学で学んだ伝え方

仮説はうまくはまり、書籍要約ライターの仕事が一気に増えていきました。当時「書籍要約 ライター」で検索すると、「私の名前が最上位に出てくる」くらいでした。その流れで携わったのが、登録者数129万人のYouTubeチャンネル「フェルミ漫画大学」の脚本家という仕事です。今でもしっかり再生数を稼いでいるチャンネルではありますが、「このようなコンテンツが読まれるんだ」、「こういう伝え方がいいんだ」などのコンテンツ制作の基礎を学ぶ良い機会となりました。「フェルミ漫画大学」で得た経験が、今の会社の礎になっているのだろうと感じています。

コインチェックで得た組織力

仕事がどんどん増えていく一方で、当時は大学生でしたから、「社会に出た経験」がなく、「1人で戦えても、組織で戦う力はない」と気づきました。そこで、「組織力をつける」ためのインターン先として選んだのが、暗号資産取引所を運営するコインチェック株式会社でした。暗号資産というテクノロジー自体に未来を感じていましたし、実力主義の会社だったこともあり、オウンドメディア「Coincheck Column」の編集長を担当させてもらいました。

ChatGPTの登場が転機

書評ライターの仕事がなくなると感じた

個人で活動していた頃から、「学生のうちに会社を作ろう」という思いはありました。フェルミ漫画大学の脚本家やコインチェックの編集長として、割と順調に活動していた2022年末から2023年にかけての時期に、ChatGPTが一般公開されました。私自身、公開された直後から既に触っていましたが、「これまでのボットとは全く違う」と感じましたし、アップデートのたびに進化のスピードが速いと驚かされました。特に、「書籍を読み込んで要約する」という作業は、AIが得意とする領域とドンピシャで重なっていました。そうしたこともあり、「もし会社を作るなら、今の延長線上に自分の仕事はないだろう」と強く感じた瞬間でした。

AIにできないのは「取材」だと気づいた

そこで気づいたのが、「AIに絶対に真似できないものは何か」という問いです。行き着いたのは、「現地に赴いて情報を取ってくる」ことと「人と人とのコネクション」、そして「速さ」でした。取材や一次情報が生まれる場所には、必ず人と人との関係性があります。「1次情報が出た直後にすぐ察知して追加情報を取りに行く」というスピード感は、「最速で現実世界の情報を取ってこれる人間にしかできない」と気づいたのです。そして、それらが全て合致する「取材」を軸に会社を作ろうと決め、2024年4月にアルファブルーム株式会社を創業しました。

アルファブルームの強み

情報を検知する速さ

弊社は「取材力」と「AIを活用した現代にフィットする情報検知力」の2つを強みとしています。従来の編集プロダクションは、「熟練の職人のような書き手がしっかりとしたコンテンツを作る」というスタイルが中心でした。紙の媒体が主流だった時代であれば、それはとても重要で当たり前のことだったかと思います。しかし、一度に得られる情報量が膨大になった現代で、「昔ながらの作り方だけで情報の最新性に追いつけるのか」と問われれば、「そうではない」と思います。弊社の強みは、まず情報を検知する速さです。弊社では、「二次情報が出た」瞬間に、AIで全て検知できる体制を整えていて、媒体ごとに求められているネタをすぐに拾える仕組みを作っています。

軸はテクノロジーとエンタメ

弊社には、「テクノロジー」と「エンタメ」という2つの軸があります。テクノロジーは、「題材として難しく、書き手が少ない」という業界の課題がありますが、自動運転やAI、ブロックチェーンなどの分野の第一人者への取材を重ねることで、「最先端の情報を理解できている」という強みがあります。あわせて、「人間は本能的に情報のどこに反応するのか」という「エンタメとしての訴求力」も持ち合わせています。実際、この2つを両立できている会社は、なかなかないのではないかと思っています。

業界自体が難しかったり、ネタが拾えていなかったりすることが主な理由にはなりますが、テクノロジーの分野には、まだまだ発信しきれていないものの、面白い領域がたくさんあります。ですから、まだ弊社でも追いきれていない「テクノロジーの面白さ」を自慢の編集力で伝えていきたいと思っています。

5年後、10年後に見据えるビジョン

今後のビジョンは、「5年後」と「10年後」の2段階に分けて考えています。「5年後」においては、「今の事業をさらに伸ばしていくフェーズ」だと捉えています。

「10年後」のほうは、「そこまでに培った情報ネットワークやデータの蓄積を生かしていきたい」と考えています。他社にはない、自社だけのデータやネットワークを活用しながら、別事業にも手を広げていきたいです。

メディアと金融とAIの融合

現在、構想中の方向性のひとつは、「メディアと金融、AIが融合する領域」です。例えば、X(旧:Twitter)では、米国居住者向けに「Xマネー」というサービスが始まりました。これは、X(旧:Twitter)上で、「メンションするだけで相手に送金」でき、「預金すると利回りが得られる」というものです。言わば、「X(旧:Twitter)上の銀行」のような機能です。

実際、国内でも、SBIグループが「SBIネオメディアホールディングス(SBIグループのメディア・エンタテインメント・マーケティング事業を統括する持株会社 )」という企業を立ち上げ、フジテレビなどと提携しながら、メディアと金融、AIを融合させる動きを進めています。そのため、弊社としても、「メディアの強みを生かしつつ、金融領域とも融合できる分野に取り組んでいきたい」と考えています。

編集後記

高校卒業後すぐにビジネスの世界に飛び込み、書籍要約ライターやフェルミ漫画大学の脚本家を経て、ChatGPTの登場をきっかけに「取材」という武器を選び取った平木さんのお話は、私自身も就職か起業かで悩むことがあるだけに、とても刺激になりました。スモールスタートで挑戦を重ねていく姿勢は、自身のキャリア選びにも取り入れていきたいと感じました。貴重なお話をありがとうございます。