トランクルーム事業の始まり
親会社の建設事業から生まれた
弊社は2008年の創業ですが、それに先立ち、創業当時の親会社である株式会社デベロップが2007年に設立されました。
デベロップは現在、コンテナを使ったホテル事業を全国140カ所ほど展開しているほか、太陽光発電の事業や建設業もおこなっている会社です。コンテナを使った建設会社としてスタートし、その当時に主力だったのがコンテナ型のトランクルームでした。
そのトランクルームの運営会社として、弊社が設立されたという経緯があります。
二種類のトランクルーム
トランクルームには二つのタイプがあります。一つは鉄筋や鉄骨でできたビルの中を間仕切りしてお貸しするタイプです。
都心部に多く、空調やエレベーターも付いていて、カーペットが敷いてあるところもあります。クローゼットのような感覚で使っていただけるので、衣類や季節用品などの収納にも活用されています。
もう一つは、郊外でよく見かけるコンテナ型です。空調が効いていないため、資材置き場やアウトドア用品・野球道具などの収納として、使われることが多いですね。
上場までの道のりと苦労
建物型トランクルームへの展開
弊社は2008年以来、トランクルームの運営管理をおこなってきました。私は創業メンバーではなく、2016年にデベロップに入社しています。
その頃から、都内で「空調の効いた建物型のトランクルームをつくる」というミッションがあり、2019年に親会社から弊社に転籍しました。
建物型のトランクルームをつくるには、土地を買って建物を建てなければならず、資金が必要になります。資金を得るには、上場すると銀行からの借り入れがしやすくなるので、上場を目指すことにしました。
1万3,000室・230カ所に拡大
そして、2022年に東証グロース市場に上場して以降、建物型の物件を20棟以上つくってきました。これを不動産投資家の方に売って、私たちがそれを借りて運営するという形です。
現在は全部で1万3,000室ほど、場所でいうと230か所ほどに広がっています。トランクルームは基本的に無人で、お客様が好きなときに、自分で荷物を出し入れできる仕組みになっています。
上場準備で向き合った運営体制の整備
正直、上場するのは本当に大変でした。多くの株主に株式を持ってもらう以上、会社として透明性を確保しなければいけません。今まで曖昧にやってきたことを、きっちりとしたルールで運営する体制に整えるのに苦労しました。
あわせて、会社がこれから成長するのを理解してもらうための事業計画や、ビジョンづくりにも、かなり時間をかけましたね。
戦争のさなかでの決断
それで、やっと上場できそうだというタイミングで、2022年にウクライナ戦争が始まってしまいました。戦争が起きるとマーケットはシュリンクするので、3年もかけて準備してきたのに、ここで上場をやめるかどうか非常に迷いましたね。
結局、そこまで長引かないだろうと思い切って上場したのですが、実際には戦争が長期化し、株価もしばらく低迷してしまいました。
TOBで迎えた新局面
その後、同業であるエリアリンク株式会社によるTOB(株式公開買い付け)を経て、新たな事業体制となりました。同じトランクルーム事業を展開する企業との連携によって、業界全体の発展にもつながっていくことを期待しています。
同じ事業をおこなう会社によるTOBなので、業界全体としてもプラスに働くと考えています。トランクルーム事業をおこなう会社は、全国に1,200社以上あるといわれていますが、上場しているのは3社ほどしかありません。
私たちのように、建築基準法を満たした建物で運営する上場企業がシェアを広げていくことは、業界にとってもよいことだと思っています。
トランクルームが支える暮らし
マンションの収納不足
トランクルーム事業そのものは、全国で年率5%ほど伸びています。特に都心部はマンションの価格が上がっている一方で、部屋の面積自体が少しずつ小さくなっているんですよね。
マンションデベロッパーも収納部分を工夫して小さくすることが多く、入居してみると、こたつや扇風機をしまう場所がないといったことが起こります。夏冬で衣替えをする日本の暮らし方もあり、外に収納場所を求める人が増えてきています。
暮らしの変化に合わせた活用
たとえば家族の誰かがキャンプ好きで、テントやクーラーボックスなどの大型用品が増えてくると、家の収納を圧迫してしまうことがあります。家族それぞれが大切にしている物でも、置き場所をめぐって悩むことはありますよね。
そこでトランクルームに保管すれば、そうした荷物を家に置かずに済みます。キャンプに出かけるときも、自宅から駐車場まで何度も荷物を運ぶ必要がありません。トランクルームに立ち寄ってキャンプ用品を積み込めば、早朝に自宅と駐車場を往復することも減らせます。
また、子どもが独立して夫婦2人になったタイミングで、部屋が余るといったライフステージの変化にも、トランクルームが役立ちます。最初から大きすぎる家を買うのではなく、少し小さめの家を選んで、荷物は外に置くといったような活用が可能です。
このように、家族構成の変化に合わせて、住まいの広さを補う役割もトランクルームにはあるんですね。
都心部でも1坪2万円ほど
トランクルームは都心部でも、1坪(3.3平米)あたり、大体2万円ちょっとです。こたつや扇風機だけなら0.5坪、畳1枚分ほどのスペースで十分なので、1万円台から借りられます。
昔は実家に荷物を預けるといった方法もありましたが、今はお金を払ってでも、快適さを手に入れることへの抵抗感が少なくなっています。若い世代でもトランクルームを借りることへの抵抗感が薄れており、部屋を広く使うために利用していただいています。
トランクルームのこれからの可能性
高齢者施設への住み替えでの活用
これから新しい組織体制になるため、私自身が会社の今後を決める立場ではありません。一方で、トランクルームというインフラが、社会にどう役立つかは考えています。
私自身も60歳を超えて、いずれ高齢者施設に入ることもあるかなと思っています。施設に入るとなると、身の回りの物をすべて持っていけるわけではありません。そんなときにトランクルームに荷物を移すことで、自宅を貸し出すなど、不動産の活用を検討しやすくなる場合もあります。
空き家の活用にも役立つ
今、空き家問題は地方だけではなく、世田谷のような地域でも増えています。家は人が住まなくなると、傷むのが早いんですよね。風が通らないと湿気がたまりますし、水道を長く使わず排水口の水が抜けると、下水管から悪臭が上がってくることもあります。
自分が施設に入ったあと、家をどう活かすか迷ったとき、トランクルームに荷物を移せば、その家を貸したり売ったりする選択肢が生まれます。
自分の暮らし方と持っている不動産の間を調整する機能としても、トランクルームの活用について、より多くの方に知っていただきたいですね。
二地域居住という新しい暮らし方も
国土交通省が進めている「二地域居住」という政策をご存じでしょうか。同省では、都市部と地方など複数の地域に生活拠点を持ち、それぞれの地域を行き来しながら暮らす「二地域居住」を推進しています。
地方の空き家を活用しようとしても、タンスや仏壇などの荷物が残っていると、人に貸しづらいことがあります。そうした荷物をトランクルームに保管すれば、その家を他の人に貸すことも可能です。自分は地元に戻れなくても、他の若い人にその場所を活用してもらえるでしょう。
このように、地方と都心の行き来を活発にする意味でも、トランクルームは役に立つと思っています。
学生に向けたメッセージ
学生時代にもっと勉強すればよかった
私は40年前に大学を卒業して、5社ほどを渡り歩きながら、多くの仕事をしてきました。好奇心が強いので、いろいろな仕事をしたくて、会社を移ってきたところがあります。
今の学生さんは起業する人もいれば、一社で経験してから別の会社へ移る人、何社か経験してから起業する人もいて、さまざまな道がありますよね。ただ、学生のような若い時期は二度と来ません。
私自身、大学時代は憲法の講義を取らずに卒業してしまい、今になって「取っておけばよかった」と後悔することがあります。大学には、今なら受けたいと思う授業がたくさんありました。遊ぶことも楽しいですし大切ですが、ぜひ勉強もしてほしいと思っています。
ゼブラ企業という考え方
ゼブラ企業という言葉をご存じでしょうか。会社として利益を上げることと、社会貢献の両方を大切にする企業をゼブラ企業と呼びます。これはアメリカで、10年ほど前から言われてきた考え方です。
起業するにしても会社に所属するにしても、会社が社会の中にある存在だということを意識して、社会にどう役立つかという視点を持ってほしいと思います。会社に入ってからも、利益だけでなく、社会にどう役立つかを考えてもらいたいですね。
また、自分が正しいと思うことを会社の中で伝えて、自分自身が力を発揮していくためには知識が必要です。知らないことがあると負けてしまうこともありますし、知っていることが多いほど、自分の発言力も高まります。
学生の頃にいろいろな勉強をしておくことが、社会に出てから自分自身を強くすることにつながると思います。私自身が後悔しているからこそ、学生の皆さんには後悔しないように勉強してほしいですね。
編集後記
今回のインタビューで印象に残ったのは、トランクルームが単なる収納スペースではなく、ライフステージの変化や、空き家の活用につながるというお話です。暮らし方が変わる場面で荷物の置き場所を確保することが、不動産の活用にもつながるという視点は新鮮でした。
また、学生時代の勉強が社会に出てからの発言力につながるという言葉も、これから社会に出る立場として心に残りました。貴重なお話をありがとうございました。
※取材日:2026年9月2日