インタビュー

「時間という贈り物」から始まった──AIで人の可能性を広げる教育への挑戦

「時間という贈り物」から始まった──AIで人の可能性を広げる教育への挑戦
PROFILE
次世代AI教育株式会社 東京支社長
松元 春秋

大阪発、AI速報ドットコムから始まった物語

AIの活用が立ち上げの起点に

次世代AI教育株式会社は、2023年に大阪で立ち上がった会社です。会社を建てる前から、AIを活用しまくっていた人間が3人いて、そこからスタートしました。私は東京支社長を務めているのですが、東京支社ができたのは少し後のことで、2023年の10月ごろに立ち上げています。

会社をつくるのとほぼ同時に、私たちは「AI速報ドットコム」というメディアを立ち上げました。ちょうどChatGPTが入ってきて間もない頃で、GPT3.5から4になるくらいのタイミングです。当時はプロンプトエンジニアリングの時代で、いかにうまくプロンプトをつくるかがすべてでした。

ChatGPTだけでなく、Midjourneyなど画像生成のツールも含めて、いろいろなAIに触れながらメディアをつくっていましたね。

AI速報から広がった事業

AI速報ドットコムでは、ニュースをAIで自動的に収集・記事化して、その記事に合う画像もつくっていました。さらに、記事の内容が合っているかをAIに確認させるところまで、自動化していたんです。

2023年の時点でそこまでやっていたのは、かなり早かったと思います。当時から9割ほどAIに頼って、残りの1割を人間の力でやっている感覚でした。

その結果、「AI速報」というキーワードで検索上位を取ることができ、メディアが弊社を知ってもらう入口になりました。それまで1日10時間以上かかるような作業が、1日30分ほどで完了する。その世界観に触れたとき、AIから「時間という贈り物」を受け取っているような感覚があったんですよね。

温かさをまとうAI教育を目指す

ただ、それをお金稼ぎのためだけに使ったり、悪用したりする人たちが、これから増えていくかもしれないとも考えました。

そこで私たちは、AIを「思いやりの集合体」と捉えて、「温かさ」を大切にしていこうと決めました。これが代表の髙野の創業に対する思いで、その考え方に賛同する人たちが集まっている会社です。

事業としては、ニュースメディアの発信のほか、AIでメディアを運営してきた実績をもとにした業務効率化・DX化の支援をしています。ホームページの制作や、AIの研修なども行っていますね。

研修は自分たちで実施することもあれば、研修そのものをパッケージにして、研修を得意としていない会社に、OEMのような形で提供することもあります。

私自身は表舞台に立つ役割が多く、講演会や大学での授業など、さまざまな場所に登壇するのが仕事ですね。

AIを使いこなす力が分かれ道になる

プロンプトエンジニアリングからハーネス・ループエンジニアリングへ

最初のころ、ChatGPTを教えるのは今と比べればシンプルでした。プロンプトエンジニアリングを中心に教えればよかったからです。ただ、最近はAIを使いこなす力にも、いくつかの段階があると言われています。

まず1段階目がプロンプトエンジニアリングです。2段階目がコンテキストエンジニアリングで、AIに何をどう食べさせるのかという部分ですね。ここまでできれば、かなりレベルの高い方だと思います。

さらに、その先にハーネスエンジニアリングがあり、その中でもループエンジニアリングというところまで進んでいる人がいます。

ここまでできる人とできない人の差は、どんどん広がっていますね。AIをどのレベルで使いこなしているかによって、業務効率がまったく違ってくるからです。

一人が100人分を代替する時代

これは自社だけではなく、社会的な課題でもあると思っています。AIを高いレベルで使いこなせる人が1人いれば、その分野の100人分の仕事が片付いてしまう。そうなると、これまで必要だった人数が、必要ではなくなる可能性がありますね。

私たちは新卒の学生さんや、これから転職を考える方など、仕事を探さなければならない人が一気に増えていくのではないかというイメージを持っています。だからこそ、AIと向き合っていかなければいけない。そのために、どうやってAIを使う力を教育すべきかを常に考えています。

法人の「集合体」という形

弊社では、正社員として雇用する形を取っていません。全員が業務委託で動いています。

コアで動いているのは8人ほどで、そのメンバーはそれぞれ自分の法人を持っていたり、事業をそれぞれ持っています。私も自分の法人を持ちながら、次世代AI教育株式会社の東京支社長という立場で動いています。

いわば「事業者の集合体」のような形ですね。考え方としてはDAO(自律分散型組織)のようなイメージで、自分たちで仕事ができる人たちが集まって会社を動かしています。そのほかにも、作業者・代理店などさまざまな人が関わっています。

だから、単純に人を増やせば課題が解決するとは考えていません。実際に、他の会社さんでも、業務自体を「AIでいいじゃん」とAIに仕事を任せていく流れが増えていると聞きます。これはかなり大きな問題だと思っていて、だからこそAIの教育ができる人材を育てていく必要があるんです。

私たちが必要だと考えているのは、「Forward Deployed Engineer(FDE)」のようなレベルの人材です。現場の中に入り、構築から実装まで一通り担えるような人ですね。

そうした人材はなかなかいません。ただ、そのレベルの人が1人いるだけで、組織の生産性を大きく変えられると思っています。

学生たちに伝えたいこと

焦る必要はどこにもない

私は大学で授業をさせていただいたり、学生さんとイベントをしたりする機会も多くあります。そのなかで感じることは、今の学生さんはかなり難しいポジションにいるということですね。

弊社は30代のメンバーが多く、いわゆる「ゆとり世代」です。私たちは比較的自由にやってきたところにAIが入ってきて、すごくフィットした感覚がありました。

一方で、今の学生さんたちと話していると、言われたことはやるけれど、自分たちで発展させたり主体的に考えたりすることには、まだ慣れていない方も多いように感じます。そういう意味では、AI時代に苦労する人も多いかもしれません。

ただ、AIが入ってきたからといって、焦る必要は全くないと思っています。人間の代わりにAIが仕事をやってくれる。ただそれだけのことだからです。

好きなことにエネルギーを注ぐ

自分の好きなことや、想いを込められるものに、時間と空間とエネルギーを注ぎ込めれば、すごく素敵なものになると思います。AIは、そこにレバレッジをかけてくれる存在です。

だから、就職などの型にはまりすぎず、自分たちで思い描いた理想を叶えていくような人生にしてほしいですね。AIと会話することも、結局は人間と会話することと同じだと思っています。大事なのはコミュニケーション能力であり、言語化する力です。

そしてAIを使えるか、使えないかを分けるのは「主体性」だと思っています。使い方のコツは私たちがお伝えできますが、自分から使ってみよう、自分で考えて発展させてみようという姿勢が何より大切です。

もし本気で仕事に向き合いたい人や、仕事ができる人間になりたい人がいるなら、私たちはいくらでもAIを教えていきたいと思っていますね。

編集後記

今回お話をうかがって、AI活用のスピードの速さと、その裏にある「温かさ」を大切にする姿勢が印象的でした。ゆとり世代の自由さとAIの相性の良さという視点は、私自身の世代とも重なる部分があり、考えさせられました。

焦らずに好きなことへエネルギーを注ぐという言葉も、これから就職活動に向き合う学生にとって、大きな支えになる言葉だと感じます。私自身も、主体性を持ってAIと向き合っていきたいと思いました。貴重なお話をありがとうございます。