実家は内装業、でも最初に選んだのは金融機関だった
父方の祖父が、内装の会社を営んでいました。なので、まったく縁のない業界だったわけではありません。私自身は、大学を卒業したあと信用金庫に就職し、金融機関で働いていました。事業内容としては、内装とはまったく別の世界です。
ひとり暮らしで気づいたこと
入社して1年ほど経ったころ、実家を出てひとり暮らしをはじめました。その中で「内装系のことをやってみたい」という気持ちがどんどん強くなっていったんですよね。結局、金融機関は1年ほどで辞めて、いまの役員と一緒に創業したというのが、事業をはじめた経緯です。
通常のリフォームも手がけてきたからこその強み
弊社は2021年ごろから個人事業主としてスタートし、法人化したのは2024年です。実は、その前の3年間は「もどせるリフォーム」に特化していたわけではなく、通常のリフォームも手がけていました。
「もどせる」がいちばんの武器
お客様からのご要望もありましたし、私自身も賃貸に住んでいたことから、賃貸を強みにしていこうという流れが自然にできていきました。通常のリフォームの施工方法や業界の内情を知っているからこそ、賃貸に特化しても実力で差がつくというのが、弊社の強みだと思っています。そのうえで、賃貸でも床や壁を変えられて、退去時には「もどせる」というところが、いちばんのネックであり武器です。
空間は「面」から作る、という発想
弊社が掲げているビジョンは、賃貸だろうと持ち家だろうと、部屋の空間をコロコロと変えていく文化を作ることです。分譲住宅を購入したら、その空間は完成されたものとして、自分では変えなくていいという考え方が世の中の通常だと思いますし、賃貸でも借りた時点の状態のまま、というのが一般的です。そこに一石を投じたいと考えています。
スタイルという名の提案
差別化のポイントは、大きく4つあります。ひとつ目は、空間は「面」から作るという発想で「スタイル」というものを作ったことです。床、壁紙、カーテンはどれも大きな面で、そこから空間ができていくという信念を持っています。この3つを掛け合わせた「スタイル」をひとつのまとまりとしてお客様に選んでいただくことで、基本的に失敗しにくくなります。
商品を絞る、セレクトショップという考え方
2つ目は、情報を増やしすぎないということです。カタログをすべてお見せして、そこから全部選んでもらうというやり方が世の中の常ですが、私たちはあえて商品を絞っています。壁紙だけでも日本のメーカーで5,000種類以上はあると言われる中で、そこからお客様に選んでもらうのはなかなか酷な話です。かなりセレクトした商品だけをサイトに載せているので、言うならばセレクトショップに近いイメージですね。
AIで完成イメージを10分以内に
3つ目は、AIの活用です。写真を送っていただければ、床や壁紙、カーテンを変えたときの仕上がりイメージを、10分以内に何度でも作ることができます。新しい家でも、いまの家でも、変えたあとの空間がどうなるのかが伝わりやすくなっています。
アフターサポートに力を入れる理由
4つ目は、アフターサポートです。もともと内装の仕事をしていたこともあり、施工したら終わりではなく、保証などのアフターサポートに力を入れています。LTV(顧客生涯価値)を上げるためにも、ここは大事にしているところです。
「ホテルライク」の正体
参入障壁が低い業界だからこそ、お客様との対話も大切にしています。よく「ホテルライクにしたい」というご要望をいただくのですが、実際にホテルに行ってみると、床は基本的にカーペットなんですよね。インスタグラムで「ホテルライク」と調べると、無機質なコンクリート調のインテリアが多く出てきますが、実際のホテルとは少し違います。本当に無機質な空間にしたいのか、カーペットのような質感を求めているのか、お客様とお話ししながらすり合わせていくようにしています。
関東と関西、そのさきの全国展開へ
これまでは関東圏でサービスを展開してきましたが、先月から大阪に拠点を構え、関西圏でもサービスを提供できるようになりました。将来的には福岡や東北地方など、さらにエリアを広げていきたいと考えています。5年以内という期間を区切りながら、事業の拡大を目指しています。
通常のリフォーム事業はまだやらない
正直なところ、私たちは普通のリフォームができないわけではありません。単価で見れば、通常のリフォームのほうが規模の大きい案件も多くあります。ただ、いまはあえてそこに手を広げていません。
空間をマネキン買いできる文化に
数字だけを追うのであれば、通常のリフォームに進出したほうが合理的です。それでも私たちが大事にしたいのは、カタログから選んでもらうのではなく、空間をマネキン買いできるような文化を作ることです。この文化を広めるために、必要であればいろいろな地域に展開しますし、関東と関西だけで十分であれば、そのまま進めていければと思っています。
住まいのリフォームというと、水漏れしたり壁紙が黒ずんだりといった「壊れたから直す」タイミングで検討されるのが一般的で、「おしゃれにしたいから空間を変える」という発想はまだあまり根づいていません。ここを一般的な文化にしていきたいというのが、いちばんの思いです。
お金や仕事内容で会社を選ばなかった
40代の先輩を見て感じたこと
新卒で入社した当時、感じたことがあります。金融機関に入ると、40代、50代の先輩たちを目の当たりにして、年功序列の中で自分の将来がある程度見えてしまうんですよね。21歳、22歳くらいのときに、そのことをすごく感じました。そのときに、お金で選ぶとか、業務内容で選ぶというのはやめたほうがいいなと思ったんです。ありふれた答えかもしれませんが、本当にやりたいことをやるというのが、いちばんよかったと思っています。それが、いまよりよい条件でなかったとしても、です。
違和感を言語化する
私自身、これが本当に好きだったかというと、正直よくわからない部分もあります。ですが、普通に生活している中で「これって、こうじゃないの」と感じることと、社会の実態とのズレに気づくことは大切だと思っています。賃貸のことも、そうした違和感がきっかけでした。服を選ぶときの選び方に違和感を覚えたり、外に出かけて帰ってくるのがだるいと感じたり。そうした自分なりの持論を持っておくことが、いいのではないかと思います。
編集後記
今回、重田さんのお話をお伺いして、印象に残ったのは「違和感を言語化する」という考え方です。私自身、就職活動やキャリアを考えるうえで、好きなことを見つけなければと焦ってしまうことがあるのですが、日々のちょっとした「なんかこれ、違うかも」という感覚を大事にすればいいのだと気づかされました。銀行員という安定した道からリフォーム業界へ飛び込んだ重田さんの決断力と、それを支えた原体験のリアルさが、とても印象的なインタビューでした。