インタビュー

「石橋は叩いて走れ」ブラック企業からの再出発、そして多角経営へ

「石橋は叩いて走れ」ブラック企業からの再出発、そして多角経営へ
PROFILE
株式会社KAZE企画 代表取締役
藤本義隆

創業までの道のり

商売思考は子どもの頃から

もともと商売思考が強いんですよ、子どもの頃から。二十代で上京してからは一旦就職したんですが、これがブラック企業だったんですよね。

ブラック企業で覚えた独立心

給料が半年ほど出なくなって、生活のためにサラ金からお金を借りるような時期もありました。それでも、「とにかくここにずっといてはいけない」という思いだけは強くて、2年で10年分ぐらいの経験を積もうと決め、実際には2年7か月で独立したんです。ただ、時期がバブル崩壊直後だったこともあって、独立してもなかなかうまくいきませんでした。結局、別の会社にスカウトされて再就職することになったんですよね。

格闘技と会社員の二足のわらじ

それからしばらくして、私は格闘技のプロ選手になりました。しかし大した成績は残せなかったので、しばらくはサラリーマンをしながら格闘技に専念していたという感じです。空手やキックボクシングにのめり込んでいたのもこの時期ですね。引退したあとに、私の先生から「空手道場をつくらないか」と声をかけていただいて、それがひとつの転機になりました。

道場開設から法人化へ

その頃、格闘技の選手は辞めていたので、一度フリーのグラフィックデザイナーとして仕事を再開しました。もともとデザイナーという仕事から独立した経験があったので、そこに戻った形です。それから3か月ほどで空手道場を開くことになり、ほとんど同時のタイミングで法人化しました。事業を増やしていくうえで、法人にしたほうが銀行からも資金を借りやすいという判断があったからです。こうした経緯で立ち上げたのが、弊社「株式会社KAZE企画」になります。

弊社が手がける多角事業

事業の6~7割は子どもに関係

弊社の事業は、割合でいうと6~7割ぐらいが子どもに関わるものです。もしかするともう少し多いかもしれません。デザイン事業やイベント事業、空手道場、中学校の野球チーム運営サポート、児童福祉の事業まで、いろいろな形で子どもに関わる仕事を手がけています。

内製化がもたらす相乗効果

事業同士の相乗効果としては、たとえばイベント事業でいうと、告知物やホームページなど集客に関わる部分をすべて内製でおこなえるところが強みです。もともと私自身がグラフィックデザイナーとして独立した経緯があるので、外注せずに完結できるんですよね。空手道場や野球チームの運営を実際におこなっているからこそ、スポーツチームのホームページ制作や集客のコンサルティングにも説得力が出てきます。児童福祉の施設では、イベント事業とのつながりでパフォーマーや芸能人を呼んで子どもたちに喜んでもらったり、空手道場で培ったメソッドを子どもたちの教育に取り入れたりしています。何百人、千人近くの子どもを見てきた実績をもとに伝えられるので、保護者からの信頼度もかなり厚くなりますね。

コロナ禍で味わった苦境

売上7割減、破産も検討

コロナ禍になって、イベント事業は壊滅状態になりました。全売上の7割が半年から1年の間になくなってしまったんです。イベントに限っては全て無くなりました。従業員の給料が払えなくなって、頑張ってくれていたスタッフも限界を迎えて辞めていきました。銀行への返済も毎月あったので、内部留保がどんどん減っていく状況で、正直、破産まで考えて弁護士に相談したこともあります。

融資を機に児童福祉事業へ転換

そんな中、コロナ関連の融資を受けられたので、その資金をすべて児童福祉事業に投じて、業態転換に踏み切りました。まったく経験も資格もない分野でしたが、「今行くしかない」という思いだけで決断しました。銀行にもかなり褒めていただいたのですが、そう簡単に別の業態へ転換できる企業は少ないそうです。おかげさまで、5年経った今では3施設ほど立ち上げられました。

これから目指すもの

子どもの可能性を伸ばしたい

私が大切にしているのは、人と人、人と未来をつなげるという考え方です。事業の6~7割が子どもに関係しているので、子どもが持っているポテンシャルを伸ばして、成長を後押しできることに喜びを感じています。空手道場に通う子どもたちも、児童福祉施設で見ている障害のある子どもたちも同じで、そこに関わる周りの人たちが喜んでくれるような仕事を、これからも社会に認められる形でつくっていきたいですね。

課題は人材採用

今の課題は、正直なところ人手不足です。業務をもう少し拡大したいと思っても、採用がうまくいかないと前に進めません。事業ごとにその都度課題は変わってきますが、今は人材の採用が一番の壁になっていますね。

学生へのメッセージ

まず一歩踏み出してみる

これから就職やキャリアを考えるみなさんに伝えたいのは、まず行動してみようということです。頭で考えているだけでは、計画通りにはいかないんですよね。走りながら考える、そのくらいの感覚でちょうどいいと思います。前に進むと必ず向かい風が来ますが、その風が怖くて足を止めてしまうと、結局何も変わりません。私自身、最初に入ったのはブラック企業で、給料が出なくなってサラ金から借りるような経験もしました。それでも、行動をやめなかったからこそ、今の多角事業につながっていると感じています。自分に合った仕事を探し続けるより、まず一歩踏み出して、向かい風に耐える努力をしてみてください。私の座右の銘は「石橋は叩いて走れ」です。一見、無謀な賭けに見えても、走り出す前にはしっかりデータを見て慎重に判断しています。「行ける」と思った瞬間に、思い切って走る。この勇気を持てるかどうかで、人生はきっと変わっていきますよ。

編集後記

今回のインタビューを通して、藤本さんの「まず行動する」という姿勢の強さが印象的でした。ブラック企業から格闘技選手、デザイナー、そして経営者へと、一見バラバラに見える道のりが、すべて「子どもの成長を支えたい」という軸でつながっていることに驚かされました。コロナ禍で全売上の7割を失いながらも児童福祉へ大胆に転換した決断力は、慎重な準備があってこそだと知り、勇気を出す前の下準備の大切さを学びました。就職やキャリアに迷っている学生の皆さんにも、ぜひ読んでほしいお話だと感じます。