インタビュー

どのHRメディアにも属さず俯瞰して見る。それが私の存在意義であり企業の懐刀。

どのHRメディアにも属さず俯瞰して見る。それが私の存在意義であり企業の懐刀。
PROFILE
株式会社FINDAWAY 代表取締役
梅田貴久

創業の経緯

リーマンショックが独立の引き金に

創業の経緯は、実はものすごくチープなんですよね。当時いた会社には、セールスプロモーション事業部と、私が率いていたHR事業部という二つの柱がありました。リーマンショックの影響で、セールスプロモーション側が一気に5億円ほどの赤字に転落してしまって、私の事業部は1億円の黒字を出していたのですが、それでも会社全体は支えきれなくなっていったんです。

その会社にはヘッドハンティングされて入社したのですが、数年後には「この会社にいては未来が明るくない」と判断し、自ら身を引き仕方なく起業を考えました。離職する時には、大手求人メディアやその他からも「うちに是非来て欲しい」というオファーがいくつも来ていて、待遇的にかなりの好条件を提示されたのですが、それらは全て断りました。私は初めから起業を志していなかったのですが、置かれた状況の中で独立という選択肢が最後に残された自分が進むべき道と考えました。だからこそ「自ら道を切り拓くしかない」という覚悟が決まり、その想いを込めて採用課題を解決するビジョンで「FINDAWAY」を設立。

特定の色に染まらない生き方を選んだ

私がどこにも属さなかった理由は、企業と学生や求職者の立場を俯瞰して見たかったからです。一つの大手メディアに入社すれば、その会社の視点でしか見えなくなるし、自由に動けなくなる。更にそのメディアの色に考え方も染まってしまう。それでは変動するマーケットの中で公平な視点を保てないから、敢えて独立系のままで存在すべきと考えたのです。

その分、私が起業すると言えば、有難い事に全てのクライアント企業もこちらに移ってきてくれる関係だったので、創業した当月からずっと15期連続で黒字成長が続いています。あるメディアメインで展開するのではなく全社を併行な立場で競わせる。そういう不思議な立ち位置に今の私はいるのだと思います。それが確実にHR市場の成長になるから…。

新卒で入った大手電機メーカーがキャリアの始まりで、20代後半になるとIT業界のエンジニア採用に特化した代理店からヘッドハンティングを受け、HR広告業界に入社しました。二社目も同じハント転職した代理店にいた頃には新たに求人メディアを立ち上げる話が動き出して、求人雑誌のような紙媒体は消えて、HR業界にもインターネットの時代が来ると社内外に説いてまわり、被リンクの構造を作りながら求人サイトの土台や企画を一から組み立てていったのです。検索エンジンを作ったことのない状態からのスタートだったので、本当に基礎の基礎から手探りでした。

会社の強みと働き方

理系採用とIT採用に強い独立系の最強代理店という立ち位置

いろいろな求人メディアの立ち上げに関わってきたので、気が付けば各メディアのいいところも悪いところも、ほぼすべてを知っている業界内でも唯一無二の立場になっていました。おかげでマーケットの理解度は一般的な代理店の数倍以上の水準になっていて、非公式にリニューアルや新コンテンツの相談を受けることも多々あるくらいです。

この貴重なレアな経験を持つFINDAWAYは、IT業界のように採用に苦戦しやすい領域に強い会社です。理系の獲得に苦しむ新卒採用や、エンジニア経験者が採れない中途採用など、業界団体を通じて相談が持ち込まれることも多いです。正直、私から営業をかけることは殆どなく、噂を聞いた企業や企業団体から直接オファーが来るといった受動的なスタイルですが非常に有難い限りでそんな状況が生まれている事に感謝しかありません。

ほとんど辞めない少数精鋭の組織が自慢

会社経営の上で大変だったと感じたことは、あまりありません。その理由は強いて言うなら、人をどんどん増やして規模を拡大するスタイルを取っていないことでしょうか。営業一人ひとりの力を、他社の営業5人分くらいに育成する。そういう少数精鋭のやり方をしているので、今の社員数は14人ほどです。この人数でありながら実績は大きいので、帝国データバンクなどの評価機関からの評価もかなり高いと思います。

営業・制作・事務の三職種で構成されていて、離職率はほぼゼロ。私自身も財務会計から経営企画、営業、コンサルティングから制作ディレクターまで、いろいろな役割を兼務しながら会社を運営しています。2024年からは東証プライム上場のベクトルグループにJOINし、更なる経営基盤の盤石化。上場企業と同じ水準の月次決算での動き方が求められるようになり不慣れで大変でしたが、それもまたFINDAWAYの運命(さだめ)だと思っています。

今後のビジョン

二代目社長の育成を進めている

私はもう50代後半に入っていて、そろそろ次世代の代表を選ぶ時期に来ています。今、社内の4人の役員を筆頭候補として、次の社長を選任したいと思っています。

全員で攻めて守る組織づくりへ

これから創っていきたい組織は、社長一人が突出して強い組織ではなく、サッカー日本代表のように全員で攻めて全員で守れるようなバランスの取れた組織です。次の世代には私では出来なかったそういう組織であり会社を創って欲しいと強く思っています。

学生へのメッセージ

エージェントの言葉を鵜呑みにしない。

学生さんに伝えたいのは、人材紹介やエージェントの裏側を知っておいて欲しいということです。エージェントに希望を伝えてマッチングしてもらうという仕組みは否定するものではありませんが、一人ひとりの希望をすべて満たすのは現実的に難しく、企業側の都合から逆算して紹介が進むことも少なくありません。エージェントの意見をそのまま鵜呑みにして活動すると、ミスマッチが起きやすくなります。自分も本気で企業選別しないといけません。選択を間違うと苦労するのは確実に自分です。

四つの手段を併用して自分で選ぶべき。

企業選びの方法は、自分で調べる、イベントに足を運んで体感する、AIを使って探す、エージェントに任せる、大きく四つに分かれます。どれか一つに絞るのではなく、四つとも使いながら自分の五感で選ぶことが大事です。企業の質問に対する回答の仕方を見れば、その会社の人事レベルが分かるようなポイントもあるので、社名や規模や上場に惑わされず、俯瞰して判断できるようになると、入社後の「失敗した」は確実に減らせると思います。

新卒の場合、少なくとも最初の1、2年はその会社にいたほうが良いことが多いので、最初に入社する企業の選び方を間違えないことが、とくに大切だと考えています。

FINDAWAYの事業領域には人材紹介(エージェント)業は敢えてありません。企業にとって採用活動を人材紹介だけに頼ると、営業利益を削られていくうえに、人事側のノウハウも育ちにくくなります。広告と人材紹介を併用しながら、自社で考えて動ける人事に全力でサポートしていく事が、結果的に学生や求職者にとっても良きナマの情報が届けられることにつながると考えています。

人材業界の未来予測

エージェント事業はいくつかの大手に統合される?

これから10年、15年で、人材紹介業は淘汰されて数社に集約されていくと予測しています。すでに小規模な人材紹介会社複数社が人材データベースを共有する仕組みが始まっていて、現在の金融業界のように、いくつかの大きな枠に統合されていく流れになるでしょう。

SNS発の求人メディアが生まれる?

一方で、TikTokやInstagram、YouTube、Xのような各世代の文化に合わせたSNS発信の求人メディアも、これから増えていくと見ています。ただし学生側には有利に働く一方、企業側には情報の薄いエントリーが増えるというマイナス面もあります。AIが進化するほどESの同質化も進むので、今度は企業の人事側がそれを見極める力を持たなければならなくなるはずです。

AI面談はまだ発展途上

AI面談についてもよく企業から相談を受けますが、正直まだ実用レベルには遠いと感じています。HR業界の知見を吸収したいAI業界の企業からも相談が来る立場なのでよく分かるのですが、全てがそうではないでしょうが今のAI面談の多くは本格的な選考というより、応募者を絞り込むための一次的なふるい落としに使われている事も多いと思います。AI自体を否定しているわけではなく、時代の流れとして使いこなす力は必要だと思いますが、この世に前例のないものをAIが生み出すことは今のところ難しいのです。HR業界は、まだしばらくはAIだけでは取り崩しにくい領域だと考えていますが、それもいずれ変わるでしょう。

編集後記

今回のインタビューでは、業界最大手メディア複数からのオファーを断り、独立系という立ち位置を守り続けてきた梅田さんの経営哲学が印象的でした。少数精鋭でほぼ離職者が出ない組織づくりや、就活をエージェント任せにしないアドバイスは、就活を控える私たち学生にとってもすぐに参考にできる内容だと感じます。AI時代のHRのあり方についても示唆に富むお話をうかがえました。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。