インタビュー

飲食から軽トラックへ。埼玉の仲間と見つけた「日本にないもの」

飲食から軽トラックへ。埼玉の仲間と見つけた「日本にないもの」
PROFILE
代表取締役
益城大作

飲食業からものづくりへ

飲食の習慣が変わってしまった

飲食店を経営していたころ、コロナがあり政府側からお酒はだめ、夜はうろつくのをやめようという通達が出た時期がありました。それをみんなが1年、2年と続けていくと、外食をしないことが習慣になってしまうんですよね。外食がなくても生きていけるという発想に変わってしまって、実際に今もそうなっている部分があります。このまま飲食だけで進めていくのは危険だなと感じて、飲食と本当に真逆のことをやろうと思ったのが、創業の経緯です。

固定費をかけない通販事業

今取り組んでいるのはネット通販です。24時間働いてくれますし、飲食業でデメリットになっていた部分を、今回すべて解消しようと考えました。極力固定費をかけない設計にしていて、役員報酬を抜くと月の固定費は20〜30万円あるかないかくらいです。個人事業主の規模の固定費で、あとはすべて流動費で設計しています。流動費は売上が上がらなければかからないので、そこが飲食店との大きな違いだと思っています。

埼玉の中小企業3社で作った

中小企業の場合、作ることと売ることは全く別だと思っています。私自身は売る方が得意で作る方の知識はなかったので、埼玉県内の中小企業に自分で電話をかけて、こういうことをやりたいという話を各社の社長にプレゼンテーションしに行きました。今は弊社を含めて3社で1つのプロジェクトとして動いています。軽トラックのフレームを1から開発して、すでに販売されているものにない部分を探しながら形にしていったら、日本で唯一のものができたと思っています。

軽トラックに目をつけた理由

キーワードプランナーで見えた市場

ネット通販をやるうえで、市場が大きすぎるものは大手の参入によって潰されてしまうので、中小企業には向いていないと考えました。Googleのキーワードプランナーで検索数を調べていくと、月間1万から10万くらいの間が狙い目で、10万を超えると大手が参入してきますし、5000以下だと市場規模が小さすぎて商売になりません。軽トラックの荷台関連は国産だと30万円、輸入品だと5万から6万円という価格帯で、10万円台のブルーオーシャンがまったくありませんでした。国産でこの帯を狙えば売れるのではないかと思ったのが、軽トラックに目をつけたきっかけです。

全メーカー共通のわずか3cm

軽トラックすら持っていなかった

一番苦労したのは、軽トラックを持っていなかったことです。日本の軽トラックメーカーは複数のメーカーがあって、年代によって形が少しずつ違います。それを1つの量産型モデルで全車種共通にできるよう当てはめるのが、最も難しかったです。

たどり着いたのはわずか3cm

2mほどのものを作るなかで、全メーカー共通で合わせられる範囲は、わずか3cmでした。そこがずれてしまうと、逆に取り付けができなくなってしまいます。メーカーごとに専用のものを作ってしまうと、お客様が車を乗り換えたときに使えなくなってしまうんですよね。そこにたどり着くまでが非常に大変でした。

ホームセンターに通う日々

どうしたかというと、毎日ホームセンターに通って、実際に来られている軽トラックのお客様を待ち、いろいろなメーカーや型番の車を見つけたら声をかけさせてもらうということを続けました。かなり泥臭いやり方ですが、それが一番早かったです。

今後の課題とビジョン

円安を追い風に輸出へ

今取り組もうとしているのは輸出です。円が弱いので、アメリカや南米でも軽トラックが流行っていて、問い合わせが来るようになりました。その一方で、海外からのお客様はご高齢の農家の方が多いんですよね。日本は人口減少をたどっていますし、いずれ需要が細っていくのは自然なことなので、他のマーケットに広げていかないとどうにもならないと思っています。

中小企業と手を組みモデルになりたい

会社単位で考えると、1つの会社だけでできることには限りがありますし、どうしてもスピードが遅くなります。M&Aのような動きも活発になってきていますが、私はいろいろな会社と組んで、今まであるようでなかったものをどんどん形にしていきたいと思っています。中小企業の強みを生かして、その枠を広げていくモデルになっていきたいです。今回の軽トラックも、私自身に最初から知識があったわけではなく、1年ほどしっかり勉強しただけです。自分の力だけで全てを成功させようとすると、初期投資も知識も簡単には埋まらないので、それぞれ強い分野の人の力を頼って連携することで、スピードは何倍にも早くなります。

学生へのメッセージ

AIだけに埋もれないでほしい

今は何でもAIに聞けば、ある程度の答えが出てきます。しかし、細部はプロにしかわかりませんし、AIにもまだわかりません。今回の軽トラックの話も、チャットGPTに聞いても出てこないと思います。0から1を作るところはまだ難しくて、1から100に広げるところはAIが早いです。50代、60代の知恵や知識を提供できる部分があるなら、いくらでも力になりたいと思っています。

編集後記

今回のお話を伺って、飲食からものづくりへと大きく舵を切った決断力に驚きました。特に、ホームセンターに通い続けて実際の持ち主に声をかけたというエピソードは、AIでは代替できない現場の強さを感じさせるものでした。学生起業に関わる身として、目の前の課題にどう泥臭く向き合うか、もう一度見つめ直したいと思いました。貴重なお話をありがとうございました。