医者か社長か、揺れた医学部生が起業を選んだ理由
医者か、社長か
医者が第一候補だった
学生時代からずっと、いつか起業したいという思いがありました。高卒で起業する道も考えていましたが、医者になってから起業したほうが希少価値が出るのではないかと考え、医学部を目指すことにしました。田舎で「一番すごい職業はなにか」と大人に聞くと、たいてい医者という答えが返ってきます。人の命を救うという側面もあり、納得しやすい選択でした。しかし、 世界を変えた偉大な起業家たちを見ていると、この人たちのほうがすごいのではないかとも感じていて、医者と起業家という二択のあいだで揺れていました。
合格後も気持ちは変わらなかった
医学部の受験で合格したあとも起業したいという気持ちは変わりませんでした。本当は合格した瞬間に休学したかったのですが、まずは1年、医学部生として全力で過ごしてみようと思い直しました。サークルや研究室にも出入りして、それはそれでよい経験でしたが、一度休学して起業を試してみたいという思いを止められませんでした。
試行錯誤の連続だった創業初期
旅行メディアが3か月で5万フォロワーを超えた
休学してすぐに起業しましたが、最初からうまくいったわけではありません。いくつか試したなかで手応えがあったのが、自社で立ち上げた旅行メディアでした。3か月ほどで5万フォロワーを超え、これができるならと、知り合いの経営者からSNS運用代行の案件をたくさん紹介してもらえるようになり、そこからマーケティング支援の事業が本格的に始まりました。
「はいどうぞ」と宿泊券をすぐに贈る方法が、世の中になかった
マーケティング支援のなかで、SNSのプレゼントキャンペーンとして宿泊券が当たる企画を実施したところ、反響がとても大きく、宿泊券をほしい人がこれほど多いのかと実感しました。それなのに、ほしいと思った人にすぐ「はいどうぞ」と贈れるサービスは既存のものにはありませんでした。それができる仕組みを作ろうと考えたのが、StayGiftを立ち上げたきっかけです。
シェアハウスの仲間に支えられた1年目
コロナ禍で旅行メディアが止まった
一番大変だったのは、創業から1年目です。とにかくがむしゃらに動くしかなく、お金にも余裕がありませんでした。1年目はシェアハウスに住んでいて、そこの仲間にご飯を分けてもらっていた時期もあります。旅行メディアが5万フォロワーまで伸びたタイミングで新型コロナウイルスの流行が重なり、旅行系のコンテンツはおすすめに出づらくなってしまいました。同時期にいくつかの事業が止まってしまった1、2か月がもっとも苦しい時期でした。同じころにマーケティング支援の案件が増えていったことと、シェアハウスの仲間の存在に、ずいぶん助けられたと感じています。
StayGiftが選ばれる理由
カタログにはない「選ぶ」価値
StayGiftの強みは、宿泊券やレストラン、スパやエステのチケットを「はいどうぞ」と直接ギフトできるプランの豊富さと、プラン内容の明瞭さです。カタログギフトのようになんでも選べる形式にもよさはありますが、贈る側が一つを選んで渡すことで、「自分のために選んでくれた」という思いが相手に伝わります。
交換もできるから気軽に贈れる
贈られた側が好みでなかった場合や、引っ越しなどで利用しづらくなった場合は、交換もできるようにしています。受け取り画面のメッセージにも、好みでなければ交換できる旨をあらかじめ記載しているので、贈る側も気軽に選べる仕組みになっています。
使いやすさは、毎日の改善の積み重ね
もうひとつの強みは、使いやすさです。ただのECサイトではなくギフトサービスなので、カート機能の代わりに、作成途中のギフトへヘッダーからいつでも戻れる機能を用意するなど、細やかな部分の改善を粛々と積み上げてきました。いまでも毎日のようにアップデートしています。
このあたりは実際に使ってみた方にしかわからない部分なので、ぜひ一度使ってみていただけるとうれしいです。
20代・30代の利用がもっとも多い
ユーザー層としては、20代・30代の利用がもっとも多くなっています。なかでも、ご両親へのプレゼントと結婚祝い関連が多いのが特徴です。友人の結婚祝いにレストランチケットをみんなでお金を出し合って贈る、結婚祝いのお返しとして親戚に贈る、ご両親の結婚記念日に贈る、社会人になって最初の給料でご両親に贈る、といった使われ方をしています。ライフイベントが重なりやすい年代であることが、利用の多さにつながっていると感じています。
47都道府県、そして世界へ
ホテルやレストラン、スパ・エステのギフトを当たり前に
プランをご用意できている都道府県は、現在33まで広がりました。ただし、選べるだけの品揃えが揃っているのは東京・大阪・神奈川・愛知・福岡・兵庫・京都といった主要7都府県にとどまります。横浜に2万円台のスパが少ない、新宿に3万円台のレストランチケットが少ないといった「穴」を一つずつ埋めていく段階です。今後は対応できる都道府県をさらに増やし、最終的には47都道府県すべてで、ホテルやレストラン、スパ・エステのギフトを選べる状態を目指しています。
今はまだ、「ホテルやレストラン、スパ・エステってチケットとしてギフトできるかもしれない」とひらめいた人だけが見つけられるサービスにとどまっています。
それを、ギフトシーンで誰もが想起できる当たり前の選択肢にしたいと考えています。
ヨーロッパが示す、体験ギフトの未来
3〜4年後には47都道府県での展開がある程度できており、グローバル展開がちょうどスタートしているような状態にしたいと考えています。体験ギフトの分野では、ヨーロッパに年間1,000億円規模を売り上げる最大手があります。ヨーロッパではすでに体験ギフトが当たり前の存在になっており、日本でも同じような広がりを競合とともに作っていけたらと考えています。
SEOとインフルエンサー施策で認知を広げる
ユーザーを増やす取り組みとしては、SEOに力を入れており、「ホテルギフト」「レストランギフト」「スパギフト」といったキーワードで検索上位に表示されるようになりました。加えて、インスタグラムでのPRも強化していて、すでに多くのインフルエンサーからの登録が集まっています。9月からは3ヶ月に1回以上のペースで、プレゼントキャンペーンとインフルエンサー施策をあわせて実施していく予定です。
やりたいことがわからない学生へ
私は「やりたいこと」を探すよりも「他者に比べてきつくないと感じられること」を探したほうがよいと思っています。
歌やスポーツのように多くの人が楽しいと感じる分野だけでなく、ほとんどの人はやりたがらないけれど自分にとっては「そこまで苦ではない」という領域を見つけることが重要だということです。それは自分が貢献しやすい領域ということなので、やりがいや幸福感、それに金銭的報酬も得られやすい領域だからです。
それを「やりたいこと」と表現するかどうかはその人のキャラによるだけなので多分どうでもいいんじゃないでしょうか。
編集後記
今回は株式会社トリピの加藤江さんに取材させていただきました。医学部合格後も起業への思いを変えなかった行動力と、「やりたいことより、きつくないことを探す」というアドバイスがとても印象的でした。就職活動でやりたいことが見つからず悩んでいる学生は多いと思いますが、今回のお話が、その悩みを少し軽くするきっかけになればうれしいです。貴重なお話をありがとうございました。