高校生で決めた道
宇宙と経営、最後の二択
高校生の時、将来どうしようかと悩んでいました。父が経営者だったこともあり、自然と「自分も経営をやってみたい」という思いが芽生えました。一方で、理系が得意で宇宙にも興味があったため、「宇宙に関わる仕事もいいな」と考えていました。人生の選択肢は最終的にこの2つに絞られましたが、宇宙へのロマンと経営への憧れの狭間で、どちらを選ぶべきか長い間頭を悩ませました。結局、宇宙のことは「ただ知りたいだけ」だと気づいたんですよね。それならば経営者になって事業がうまくいけば、いずれ宇宙のことも知れる立場になれるだろうと考えて、最終的に経営者になることを決めました。
理系の経営学を求めて
AIの研究室に入った
経営者になるにはどうしたらいいかと考えたとき、理系が生きる経営の学び方はないかと探して、経営工学や工業経営という分野にたどり着きました。実際に入ったのは東京理科大学で、たまたまAIに関して有名な教授が在籍していたため、AIに非常に興味を持つようになりました。私は、AIの基礎研究領域の認知心理学を扱う研究室に在籍し、勉強させていただきました。ただ当時はまだ第二次AIブームで、インターネットもない時代でしたから、今のAIとは比べものにならないくらい素朴なものでした。
修行としての9年9か月
経営の基礎を学んだ日々
卒業と同時に起業したい気持ちはあったんですが、まだ力が足りないと感じて、まずは経営コンサルティング寄りの会社に就職しようと考えました。外資系のコンサル会社もいくつか受けたんですが、レベルの高さに圧倒されて。そのなかで縁があったのが、栃木県にあるシステム会社です。全国の税理士事務所などを支援する会社で、経営についてとことん学ばせてもらえる環境でした。そこでシステムエンジニアとして働きながら、経営の知識を積み重ねていきました。
インターネットとの出会い
もともと3年以内には独立するつもりで入社したんですが、実際に働いてみると仕事が面白く、重要なポジションも任されるようになって、結局9年9か月在籍しました。その間に、インターネットに出会ったことが大きな転機になりました。これはすごいことになると直感して、インターネットの領域で起業しようと、会社にいる間に決めさせていただきました。
起業、そして今の事業
Web制作から始めた理由
独立した当初、開発力やサーバー運用の技術力はあったんですが、それをどう売るかがまったくわからなかったんですよね。Webで販売していくのが一番だろうと考えて、まずはWeb制作会社として創業しました。2年ほどWeb制作を中心に手がけて、3年目あたりから満を持して自社のプロダクト開発を始めるという流れです。
開発・運用・マーケの三本柱
弊社は創業当時からサーバー運用を手がけているんですが、この仕事は経験を積まないと対応できないことが本当に多いんです。人数が少なかったころは分業もできず、開発中にサーバートラブルが起きると開発が完全にストップしてしまうようなこともありました。今は運用するメンバー、開発するメンバー、マーケティングするメンバーがそれぞれいて、カバーし合える体制になっています。この経験があるからこそ、これから新しいビジネスを立ち上げたい起業家の方々のバックエンドを、私たちが支えられるんだと思っています。創業から数えると25年、法人設立からも23年ほどの実績があります。
25年で味わった苦労
普及しなかったプロダクト
一番大きかったのは、私たちで作ったプロダクトを普及させようとしたけれど、結局うまくいかずにクローズしたものがあることです。思い描いたビジョン通りに進まないことは、社員のモチベーションにも関わってきますし、本当に大変でした。ただ、失敗したからと落ち込んでいる場合ではなくて、それも次につながる経験でしかないと思って、前に進んできました。
AIとセキュリティの最前線
AI対AIの防御という現実
現在、業界だけでなく人類そのものが大きな変革期に入っていて、AIをどうビジネスに使いこなすかが問われる時代になっています。しかもこれからは、AIがセキュリティを突破してくる時代になるので、AIで防御しなければならない。つまりAI対AIの戦いになってくるんですよね。人間がその領域にほとんど改善を加えられなくなるなかで、私たちの専門領域でしっかりお客さまにサービスを提供していかないと、お客さまのビジネスそのものが止まってしまいます。
サーバーの先にあるロボット
AIがいろいろなことを支援するようになると、人類の進化はさらに加速していくと思うんです。イーロン・マスク氏が進めているような惑星探査も、これからはロボットが担う時代になっていきますが、そのバックエンドには結局、今のサーバー運用の延長線上にあるものが控えています。そこがトラブると、ロボットも止まってしまう。自動運転も同じで、セキュリティを保てなければ、家電まで含めてすべてがインターネットにつながる時代のなかで、命に関わることが普通に起きかねません。責任の重い領域にいるんだなと感じますね。
宇宙と寿命、その先の景色
スターリンクが変える通信網
高校生のときに悩んだ「宇宙」という領域が、今まさにホットになってきていますよね。世界的な著名経営者 を中心に、スターリンクをベースにしたネットワークが、地球上だけでなく宇宙規模に広がっていくと見ています。月に基地を作ってロボットを開発し、そのまま火星に応用していくという構想も進んでいて、そうなると宇宙上でも通信リンクが必要になってきます。
200年生きる前提で考える
これから100年、200年という単位で、人類がどこまで他の惑星に進出していくのかは見ものだと思います。もうひとつ興味深いのは、AIの進化によって人の寿命自体も延びていく可能性があることです。普通なら80歳くらいで人生を終えるものだと思われがちですが、もしかすると200年先まで生きているかもしれない。それくらい長く生きることも前提に、これから考えておく必要があるんじゃないかと思っています。
学生に伝えたいこと
ビジョンを先に決める
私の経験から言えるのは、将来何をするのかを先に決めて動いたほうが、行動が早くなるということです。私自身、起業のために会社を辞めるとき、周りからは「このまま残ったほうがいい」と言われるような状況でした。それでも会社のなかで経営を学ぶより、自分で起業してしまったほうが圧倒的に勉強になると思ったんです。実際、そのとおりでした。
無心になってやってみる
やりたいと思ったことがあるなら、賢く考えすぎるより、まずやってみないとだめだと思います。もちろん将来のビジョンはしっかり持っておかないと、後悔することにもつながりますが。私は高校生のときに早くそれを決めたので、ある意味やっていることはずっと変わっていないんですよね。足りない能力は、その都度プラスしながら今に至っています。後悔しない人生を送りたい、それだけなんです。
編集後記
高校1年生で「経営者になる」と決めてから、その軸がまったくぶれていないお話に、同じ学生として背筋が伸びる思いでした。宇宙という夢を一度手放しながらも、経営という選択のなかでまた宇宙の話に戻ってくる構成に、人生の伏線を感じます。AIを使いこなすには専門知識こそが必要という言葉は、これから就職活動をする世代にとって、まさに今考えるべき指針だと感じました。