商社で見えた、建設業の構造課題
建設業への関心を育んだ原体験
父がハウスメーカーの設計士だったため、建設業は子どもの頃から身近な存在でした。実家も父が設計したもので、現場についていくことも多く、職人さんたちにもよくしていただいた記憶があります。
そのため幼い頃から建設業に携わりたいという思いがある一方、父とは異なる角度から貢献したい。その思いが、キャリアを選ぶ一つの軸になりました。
商社で感じた、製造業との違い
商社では、製造業と建設業、双方のお客様に関わっていました。同じ「ものづくり」を担う産業でありながら、両者を比較すると、生産性には大きな違いがあることを認識したきっかけでもあります。この20年間で、製造業の生産性が2〜3倍に伸びてきた一方、ものづくりの構造の違いから建設業ではその伸びが限定的です。
製造業では、産業革命以降、生産性を高めるための技術開発が重ねられ、工程や部品の標準化、機械化・自動化が進んできました。
一方、建設業では、一品一様のものづくりが基本です。建物ごとに条件が異なり、部材ひとつをとっても、案件ごとに作図し、製作できる工場を探し、品質・コスト・納期を調整する必要があります。多くの工程が、人の経験や判断によって支えられているのです。
こうした違いを目の当たりにする中で、製造業で培われてきた「標準化」や「工業化」の考え方を、建設業に合った形で取り入れることができれば、産業の生産性を大きく変えられるのではないか。 この問題意識が、BALLASの事業構想につながっていきました。
建設業をアップグレードする
日本国内のみでも75兆円規模の建設業は、社会インフラを支え、持続可能な発展に欠かせない産業です。
一方、建設就業者のうち20代は1割程度にとどまり、50代以上は6割に迫るなど、担い手不足は今後さらに深刻化していきます。
だからこそ、人の経験や労働力だけに依存せず、限られた人材でも産業を支え続けられる「データをもとにした供給力」を構築することが必要だと捉え、BALLASを創業しました。
建設業は、AI Nativeになれるのか
建設業を最適化し、人々を幸せに。
BALLASは、「建設業を最適化し、人々を幸せに。」をミッションに掲げ、建設サプライチェーンをアップグレードするテックカンパニーです。
プラットフォーム運営を通じて設計・調達・製造・施工に携わりながら一次情報を蓄積し、業界の標準化・最適化を推進しています。現場で行われている判断や業務プロセスをデータやルールとして構造化し、AIが扱える状態へ変えていくことで、AI Nativeな産業インフラの構築を目指しています。
サプライヤーという戦略
BALLASは、ソフトウェアを提供するだけではなく、自ら建設部材を供給するサプライヤーとして事業を展開しています。
お客様から特注部材の製作相談を受け、仕様や図面を作成し、最適な工場へ製造を依頼して納品する。その一連のプロセスを担うことで、設計・調達・製造・施工に関する一次情報を蓄積しています。
建設サプライチェーンは、多くの専門企業がそれぞれの工程を担うことで成り立っています。そのため、情報やノウハウも各工程に分散し、現場に入らなければ得られない情報や判断が多く存在します。
だからこそBALLASは、自らサプライチェーンの一部となり、そこで得たデータをもとに、AIが業務を遂行できる仕組みへと変えています。
一品一様の建設業を「工業化」する
建設業では、「特注だから仕方がない」と考えられてきたものが数多くあります。
しかし、一品一様でも、設計ルールを整理すれば、共通化できる部分と個別に対応すべき部分に分けられます。共通部分を標準化・モジュール化し、設計や製造のデータを繰り返し活用することで、一品一様という特性を残しながら、工業製品に近い効率性や再現性を実現しています。
さらに、蓄積したデータや判断をAIが扱える状態にすることで、これまで人が担ってきた業務をAIが遂行できる、AI Nativeな産業へとアップグレードしていく。
それがBALLASの目指す、建設サプライチェーンの最適化です。
組織づくりと、産業創造
様々な価値観の人と暮らした学生時代
大学進学を機に上京し、大学や出身地の異なる学生が集まる男子学生寮で生活していました。BALLASの共同創業者の一人とも、ここで出会いました。
振り返ると、寮生活と会社づくりには、共通するところがあると感じています。異なるバックグラウンドを持つ人が、それぞれの違いを活かしながら、同じ時間を共有するという点です。この経験は、現在の組織づくりにもつながっています。
特性を活かす組織づくり
BALLASでは、個人が培ってきた経験や勘は応用レイヤーとして、その知識や判断を、誰もが活用できる基本レイヤーの仕組みへ変えていくことを大切にしています。
設計、施工、生産管理、営業、テクノロジーなど、異なる専門性を持つメンバーの知見をデータとして蓄積し、仕組みやプロダクトへ還元する。
そしてAIが業務を担う時代だからこそ、人はそれぞれの創造性をさらに磨き、個々人の特性を掛け合わせることで、より大きな価値を生み出す。そのような組織を目指しています。
社会の公器となる
BALLASは現在5期目を迎え、110名を超える組織になりました。
会社の成長とともに、社員をはじめ、顧客である建設工事会社様やパートナー企業様など、関わるステークホルダーが増えています。
BALLASの事業を通じて、建設工事会社様の持続的な競争力向上、パートナー企業様の持続的な経営改善ができる環境をつくり、その先に、建設業全体の付加価値の最大化へつなげる。ひいては建設物を利用する方々もより幸せを享受いただく。
掲げるビジョンを、社会にとっての実際の価値へと変えていくこと。 BALLASも「社会の公器」としてより良い社会づくりの一助となるよう日々精進しています。
学生のみなさんへ伝えたいこと
社会の役に立てたと思える人生に
私自身は人生の終わりに、「少しでも社会の役に立てた」と振り返れる人生にしたいと思っています。
そのなかで、自分が取り組むべき一丁目一番地が建設業です。
建設業は、多くの企業や人が関わり、社会に対して大きな影響を持つ産業です。その構造をよりよくすることができれば、建設業だけでなく、社会全体にも価値を届けることができる。
その可能性に、これからも向き合い続けたいと思っています。
目的から逆算し、前に進める
BALLASの行動指針「BALLAS信条」の中でも、「ゴール思考」という考え方を掲げています。
私自身も日々大切にしているのは、与えられた役割や目の前の業務をこなすだけではなく、「何を実現したいのか」というゴールから逆算して考えることです。
言い訳なしで、目的のために何が必要かを考え、仮説検証を繰り返す。その先にしかゴール達成はありませんし、それさえやり続ければ表面上の形は変わったとしても必ずゴールに辿り着きます。
自分の頭・体・心で動き、新たな時代を切り拓く
学生のうちは、進路や将来について、周囲の人の考えや様々な価値観に触れる機会が多いと思います。
もちろん、人の意見を聞くことは大切です。ただ、最終的に自分の人生を彩るのは自分次第です。
私自身、会社を立ち上げた後も、周囲から「双日にいたほうがよかったのではないか」と言われることや、批判されることも多々あります。
それでも、自分で選んだからこそ出会えた人や、得られた経験、何より揺るぎない覚悟があります。
周囲の意見を思考停止で受け取るのではなく、自分の頭で咀嚼した上で、感じた違和感や関心を大切にしていただきたい。
そして、ぜひ大きな課題に挑戦し、多くの人に深く価値を届ける仕事をしていただけると嬉しく思います。
編集後記
建設業は、正直これまで自分とは遠い世界だと思っていました。
しかし、人手不足や供給力の低下は、多くの産業が直面する共通の課題です。社会課題を解決するフィールドの一つとして、建設業への見方が変わりました。特に印象に残ったのは、他の産業で培われた良い仕組みを、建設業に合った形で取り入れていくというアプローチです。
私自身も「ビジョン図鑑」を通じて、学生のキャリア選択と企業のマーケティング支援という、異なる領域を掛け合わせた事業に取り組んでいます。手段にとらわれず、実現したいことから逆算して考える。今回伺った「ゴール思考」を、自分の活動にも持ち帰りたいと思います。