緊急登板から始まった精神科医療ITの道
富士通FIPから独立して起業
もともと私は富士通FIPでヘルスケアのビジネスに携わっていました。2008年に会社員を辞めて起業し、個人事業主として、医療情報システムを扱う会社のコンサルティングをおこなっていたんです。そのうちの1社が、現在の株式会社レスコでした。
緊急登板で社長に
2014年後半から、当時の創業者が社長を務めるなかで、私は営業組織強化の面で常務執行役員として参画していました。その後、2016年に創業者が退任することになり、引き受ける人がいなかったため、私が緊急で社長を務めることになりました。当初は、この会社の社長になるとは思っていませんでした。
精神科に特化した電子カルテ
弊社は、精神科病院向け電子カルテの提供をはじめとした、精神科医療に特化したITソリューションを展開しています。精神科病院での電子カルテシェアは、当時からトップで、おそらく今もトップだと思います。もともと精神科病院を対象とした専門の電子カルテがなかった時代に、発想して形にした先駆者だったことが大きいと感じています。
完全クラウド型への挑戦
新製品づくりが一番重かった
社長になってから一番重かったのは、新製品づくりです。それまで売ってきたオンプレミス型の電子カルテを、完全クラウド型に変えて新製品をつくりました。製品コンセプトを思いついたのが2018年、実際に作り始めたのが2020年で、目鼻がつくまでに5年ほどかかりました。作り始めるのも、作っている最中も、完成させるまでも大変で、すべての段階にあらゆる苦難がありました。
時代の変化に先んじていた
今、医療情報システム業界は、過去に例のないパラダイムシフトを迎えています。その変化に順応できる製品を先につくれていたことは、ある意味で幸運だったのだと思います。ほかにも、創業者の時代に思いついた先駆者利益を、確実にシェアにつなげてきたことも大きかったです。私自身は、特にすごいことをしたとは思っておらず、運にも助けられたと感じています。
目指すのは医療情報のインフラ
医療情報が循環するインフラ
大きな目標は、国民の健康づくりにつながる新しい病院情報システムを提供する企業になることです。その先には、医療情報が国民に開かれ、循環する社会づくりがあります。私たちが自分たちの健康のために、自分たちの医療情報を利用できる。ガスや電気、水道と同等の情報インフラをつくっていきたいと考えています。富士通FIP時代から長くデジタルヘルスに関わり、さまざまな経験を積むなかで、そうした結論に至りました。
課題は人材の育成
一番の課題は、人材育成だと考えています。医療に関する専門知識を持っていて、新しい感性や技術も備え、社会貢献につながるデジタルビジネスがやりたいという思いを持った人をどう育成し、どう見つけていくのかが大切です。専門人材を育てる仕組みがまだ整っていないのは、弊社だけの問題ではないと思います。まずは今いる人材の「育成」に力を入れていきたいです。
学生へのメッセージ
決めたことを続けられるか
学生のみなさんには、やりたいことを見つけてもらいたいなと思います。ただ、私自身はやりたくてこの仕事を始めたわけではない気もしていて。だからこそ大切なのは、決めたことを続けられる人になれるかどうかではないでしょうか。自分が行きたくて行った場所ではなくても、置かれた場所で楽しんでやれる人は多いと思います。何が大事なのかと考えると、結局はそこにいきつく気がしています。
編集後記
思いがけず社長を引き受けることになった経緯から、完全クラウド型の新製品づくりまで、飾らない言葉で語ってくださったのが印象的でした。特に心に残ったのは、「決めたことを続けられる人になれるかどうか」というお言葉です。少しビジネスに触れている身として、やりたいことが見つからず迷う場面もありますが、置かれた場所で楽しみながら続けていく姿勢の大切さを学びました。国民の健康づくりを支える情報インフラという大きな目標に向けて歩まれる姿を、これからも追いかけていきたいです。貴重なお話をありがとうございました。