記者を目指した学生時代
スポーツ記者を目指した学生時代
高校時代は、漠然とスポーツジャーナリストになりたいと思っていました。とにかく野球が好きで、ずっと野球に関われたらいいなという、考えがありました。プレイヤーとしては難しいと感じていたので、それならスポーツ新聞などの記者はかっこいいなと。浪人して上智大学に受かったときは、目標に1歩近づいたような、少しだけ現実味が湧いた感覚がありました。
新聞学科で学生新聞づくり
上智大学には新聞学科という学科があって、私はそこに所属していました。当時はマスコミなどのメディアに行きたかったので、どうせなら真剣に頑張ってみようと思ったんです。学生新聞をつくる新聞部での活動が、学生時代の中心でした。実はスポーツ新聞社で学生アルバイトもさせてもらったのですが、「何かちょっと違うな」と感じた側面があったんです。
30歳までに「選べる自分」をつくる
最終面接で本音を語った
就職活動の時期はリーマンショック直後で、近年でも1番内定率が悪いタイミングでした。就職活動をする中で働いたこともないのに、やりたいことなんて結局わからないと思っていたんですよね。だから30歳くらいまでに何でもいいからスキルを身につけて、やりたいことが見つかったときに選択できる自分になりたかった。そのためには人脈や経験、スキルが大事だと考えていました。器用な性格でもなかったので、最終面接まで進んだら言いたいことを全部言うようにしていたんです。キャリアビジョンを聞かれたら「30歳くらいなら別のキャリアを考えている可能性もあると思います」と。だいたい落ちましたが、それを面白がって採用してくれたのが、20人くらいの求人広告の会社でした。
5年で約300人規模へ
リクルートの求人広告代理店で、地域密着でやってきた老舗の中小企業を、リクルート出身の方が事業承継という形で引き継いだ会社でした。新しい社長が「会社を大きくしたい」と言っていた第2創業のタイミングで、この人面白いなと思ってジョインしたんです。当時2、30人だった会社が約5年で300人くらいになり、売上も10倍ほどに。全国展開や海外展開、M&Aもおこなう会社で、私も大阪支社の立ち上げメンバーの一人として拠点開設直後に行かせてもらいました。当時は結果も出せていませんでしたが、社長に「こういうことをやりたい」と言い続けていたら、行かせてもらえたという感じですね。大変でしたが、会社が大きくなるフェーズをいろいろと経験させてもらいました。
採用と教育が重なる領域へ
大阪支社の立ち上げでは教育事業で学校営業の立ち上げにも関わりました。その後、転職して東京に戻り、長期インターンシップの求人マッチングサイト「キャリアバイト」を運営していた会社にジョインしています。のちにエン・ジャパングループに売却され、今はもうない会社ですが、長期インターンシップという概念をつくった会社といっても過言ではないと私は思っています。インターンシップを新卒採用の文化にしようという考えが魅力的でした。最初は採用、次に教育、そして採用とキャリア教育が重なる領域へ。これまでの経験がかみ合わせられると感じました。
トップセールスを経て独立
キャリアバイトの会社では、トップセールスも一通り取らせてもらいました。独立する人も多い会社で、私もご縁があって2017年10月に独立し、2018年4月に会社を設立しています。30歳のときでした。振り返ると、私は採用と教育の領域でずっとキャリアを積んできた人間です。人事の分野で起業しようと最初から決めていたわけではなく、結果的にそうなったという感覚に近いかもしれません。
すべての中小企業に人事部を
社外の人事部という存在
弊社のメイン事業は、中小企業向けの人事コンサルティングとアウトソーシングです。「まちの人事 専門家派遣」というブランドで展開しています。中小企業やベンチャー企業には、基本的に人事部がありませんいません。そういった会社に対して社外の人事部という形でサービスを提供し、採用、教育、定着、組織改善まで丸ごと担っています。拠点は群馬と宮城で、関東・東北を中心に、中小企業の人事ノウハウに強みをもつ会社だと思っています。
2つのまるごとパック
サービスは大きく2つあります。1つは、採用から定着までを担う「採用・定着まるごとパック」。もう1つは「組織改善まるごとパック」で、ヒアリングのうえで社内外のプロジェクトチームをつくらせてもらいます。働きやすい環境づくりや人材教育の仕組み化、離職率の改善などです。最近は外部のプロ人材を活用したいという相談も多いので、そういったものニーズもうまく取り入れながら、よりよい職場環境を一緒につくっていく、そんなイメージです。
地方にこそ人事の専門家を
私の地元は群馬です。30歳くらいになると、地元の友人から家業を継ぐといった話も出てきて、いろいろな相談が来るようになっていました。東京には、私のような人事コンサルをしている人が山ほどいます。しかし地方には、そもそもそういう専門家がいないので、相談相手もほとんどいない。だからこそ力になれることが多そうだと思ったんです。故郷の企業や友人の力になりたいという気持ちが、最初のきっかけだったかもしれません。
メディアとコミュニティも運営
弊社ではほかに、ご当地ビジネスメディアとして「東北ITトレンド」「北関東ITトレンド」を運営しています。地域の最新ビジネスニュースを発信することで、関係人口を生み出していくのが狙いです。記事は各地域のライターさんが書いていて、中心になっているのが地域のクリエイター共創コミュニティのメンバーです。関東や東北にいる副業・フリーランスの方々が、私の取り組みに共感して一生懸命一緒に動いてくださっています。記事づくりやCMSへの投稿、SNSでの拡散まで担ってもらっているんですよ。
手探りだった独立1年目
口約束で終わらせない
大変だったのは、最初の1年ですね。個人事業主を含めて、自営業のやり方をまったく知らない人間だったんです。独立直後は前職から仕事をもらえていたのでまだよかったのですが、契約書などを含めて雑にいろいろ進めていました。揉めるところまではいかなくても、「もっとこうしておけばよかった」と思うケースは多かったです。サービスブランドもお金もない。人脈はあっても、個人で動くと責任はすべて自分に来る。右往左往した1年でした。口約束だけで終わらせず、もう少し慎重に進めればよかったと思っています。
独立ご祝儀の先で学んだ
ちゃんと仕事をしてきた人であれば、独立初期は周りが「独立ご祝儀」のように仕事をくれると思います。私もお客さんから役員や人事部の立ち上げなど、いろいろなオファーをいただき、その方々を全員お客さんにすればいいと思って始めました。でも、そんなに甘いものではないとよくわかりましたね。逆に、厳しいことを言ってくれる人のほうが面倒を見てくれて、長くお仕事をいただいているお客さんもいます。甘い考えで飛び出しましたが、結果オーライのいい経験になったと思っています。
100人の「まちの人事」を育てる
目指すは100人の育成
弊社は、まちの人事専門家派遣、ご当地ビジネスメディアの運営、そして共創クリエイターコミュニティの運営という3つの事業をおこなっています。その3つを通して実現したいのは、すべての中小企業に人事部を提供すること。それをやるには、人材が必要です。そこで一旦の目標として、100人のまちの人事・採用コンサルタントを育成することを掲げています。これが、弊社のビジョンです。
仙台東北と群馬北関東を深掘りする
弊社自体は、宮城仙台と群馬以外に拠点を増やすのではなく、この2つの地域を深掘りしていくつもりです。ただ、弊社のソリューションを自社ブランドとして提供するOEMのような形や、業務委託のコンサルタントがパッケージの販売パートナーとして関わるような形であれば、ほかの地域でもぜひ連携したいと思っています。現在、東北や北関東以外にも協力者の方はいるので、多くの地域で仕事を受けられる会社にしていきたいです。
学生へのメッセージ
真剣にやれば無駄にならない
就職活動を始めたばかりの人も、もう終わった人もいると思いますが、私は目の前のことを真剣にやることがすごく大事だと思っています。弊社のインターン生にも口を酸っぱくして伝えているのですが、真剣にやったことは無駄になりません。「これをやっていても意味がないんじゃないか」と思うこともあるかもしれません。でも、まずは真剣に続けてみてほしい。勉強でもスポーツでも、アルバイトや学生活動、恋愛でもいいと思います。どこかのタイミングで、いろいろなものがつながってくるはずです。
ドベからトップセールスへ
1社目では、営業がしたかったわけではなく、社長に「お前は営業だ」と言われたから営業をやっていた。本当にそれだけなんです。影響を受けやすい性格で、とりあえず与えられたことに真剣に取り組みました。最初は本当にドベで、かなり怒られました。それでも最終的には20代でトップセールスを取らせてもらい、自信もつきました。それが独立後、いろいろな人に評価してもらえるきっかけにもなっています。人材業界がすごくやりたかった仕事かといえば、そうではありません。ただ、お客さんに喜んでもらえたり、期待してもらえたりするうちに、だんだん好きになっていった気がします。
長い目で見ればつながる
巡り巡って、自分でメディアを立ち上げることになったのも、大学時代に新聞部にいた経験があったからです。仕事だけでなく、趣味や人とのつながりも含めて、真剣にやってきたことはいろいろなご縁を呼ぶと思っています。私自身、大学ではすごいと思う先輩がたくさんいて、悔しい気持ちを抱くこともありました。でも社会人のいいところは、長い目で見られることだと思うんです。受験のように1・2回のチャンスで結果を出さなければいけないわけではありません。真剣に向き合ったことは何かにつながるので、一歩一歩長い目で取り組んでもらえたらうれしいですね。
編集後記
「やりたいことがわからない」という悩みは、就職活動を控えた私自身にも身近なものです。神庭さんのお話で印象的だったのは、学生時代に夢見たスポーツ記者の道から離れても、新聞部での経験が巡り巡ってメディア運営につながっていたことでした。営業成績が最下位の状態からトップセールスになったエピソードからも、与えられた場所で真剣に取り組むことの意味を実感しました。学生起業に取り組むなかで成果を急ぎがちな私にとって、「長い目で見る」という言葉はとくに心に残っています。まずは目の前のことに真剣に向き合っていきたいと思います。