創業までの歩み
神戸で洋菓子を学んだ
25歳ごろから30歳ごろまでは、神戸の洋菓子店で勉強させていただいていました。その前には、税理士の勉強をしていた時期もあります。お菓子の世界とは少し違う道を歩んでいたんです。詳しい経歴は公式ホームページにも載せているので、ぜひチェックしてみてくださ い。
震災を機に地元へ戻った
30歳ごろに阪神大震災があり、神戸では仕事ができなくなってしまいました。そこで地元に戻り、先代の仕事を手伝うことにしたんです。先代は、お土産向けのお菓子づくりをメイン にしていました。手伝った期間は10年ほどになります。
40代でWAKANAを設立
40代になってから、今のわかな合資会社「WAKANA」を立ち上げました。先代の会社とは別の会社で、メインは小売店です。コンセプトも進め方もまったく違うので、新しく1から始めたというイメージです。地元の食材を農家さんから仕入れて、できるだけ自社で加工し、岡山の食材でつくったお菓子を全国の方に食べていただきたい。そんな思いからのスタートでした。
地元食材へのこだわり
農家さんの顔が見える食材
弊社では、農家さんの顔が見える食材を使って商品をつくりたいと考えていました。安心安 全という部分を、お客様にアピールしたかったからです。その後、時代の流れで原材料の偽 装などが話題になり、トレーサビリティが注目されるようになりました。私は、一次産業で よい食材ができていれば、最終的な商品もよいものになると考えています。おいしく仕上げ た商品を、一般の消費者の方に届けたいというのが原点です。
産官学連携で全国大会へ
最初は津山市で商売を始め、のちに鏡野町へ移転しました。当時、産官学連携の取り組みの 中で、トマトの生産者さんが新商品をつくりたいと考えていたんです。フルーツトマトとい う、甘いトマトですね。生産者さんはJAさんに出荷するのが普通で、消費者に届くまでの流れを知る機会がほとんどありませんでした。第18回全国農業青年交換大会で、農家の方々が、商品の製造から販売までのプロセスのすべてを発表会で紹介し、農林水産省経営局長賞を受賞されました。当時は農商工連携がまだ浸透していなかった時代なので、先駆けのような取り組みだったと思います。
全国への販路づくり
東京のギフトショーに出店
創業から2年目ごろには、東京のギフトショーに出店していました。産官学連携で開発した 商品を展示し、そこでさまざまな大手企業様と商談をさせていただいたんです。今も取引が 続いているのがANAさんで、弊社の商品はマイルで買えるようになっています。
百貨店や機内販売でも
高島屋さんのオンラインで販売していただいたり、郵便局様とお取引があったりします。バ レンタインの時期には、全国のカタログにも載せていただいています。2017年の夏にはANA さんの機内販売にも並びましたし、一部の商品はJALさんにも採用していただきました。3〜4年目のころには、三越さんや伊勢丹さん、阪急さんなど、いろいろな百貨店との取引もありました。
ネット販売は47クラブから
ネット販売を最初に始めさせていただいたのは、47クラブさんです。全国47都道府県の新聞社さんが協力してつくられたモールで、地域の商品を集めて販売していました。ここでの経験が、全国に向けて販売していく第一歩になったと思います。
少数精鋭で量産体制
大手さんと取引するには、生産体制が欠かせません。弊社は1店舗だけですが、設備投資を しながら生産効率のよい商品づくりを進め、全国に発信しています。製造も販売も含めて、 5人の少数精鋭で回しているんです。同じ規模の会社だと10人くらい雇っているところが多 いので、半分ほどでやっていることになります。売り上げも徐々に伸ばせています。
これからのビジョン
ヘーゼルナッツと海外展開
今、弊社で製造していないお菓子はアイスクリームだけです。ゼリーやチョコレート、焼き 菓子、生ケーキまで量産体制が整っていて、設備投資もひと通り済ませています。この強み を活かして、さらに全国へ売っていきたいです。来年か再来年ごろには、地元で植えている ヘーゼルナッツを農家さんと一緒に商品にして、発信していく予定です。海外へ輸出できる 商品の開発にも取り組みたいと考えています。
地域あっての会社
企業は地域にあってこそ、長く続けていけるものだと思っています。働きに来てくれるのも 地域の方ですから、地域で必要とされる会社として育てていかなければなりません。岡山県 にはすばらしい農産物がたくさんあるので、それを発信して、知っていただいた方がまた岡 山を訪れてくださればうれしいです。小さな力ですが、その一翼を担えたらと思って頑張っ ています。
学生へのメッセージ
やってみないとわからない
基本中の基本ですが、「やってわかるか、わかってやるか」のどちらかだと思います。お菓子づくりも営業も、いろいろな方との交渉も、チャレンジしなければ道は開けません。私自身、やってみて初めてわかったことがたくさんありました。
何でも自分でやってきた
私は製造も開発も営業もおこない、会計も自分でやっています。ECサイトに載せている写真も、プロに撮っていただいたものがある一方、照明から機材まですべて揃えて自分で撮ったものもあります。昔から会計の分野にも関わっていて、まだWindowsが出ていない時代に、日本版のデータベースやExcelのようなものを使っていました。そうやっていろいろなこと にチャレンジしてきたことが、今はすべて自分のために役立っています。
皆さん最初は素人
皆さん最初は素人ですが、10年もやれば、プロとまではいかなくても、趣味の範囲で十分によいものができると思います。弊社も、さまざまなことにチャレンジできる会社でありたいと考えています。1社でここまですべてやっている会社は、なかなかないはずです。独立を考えている方なら、いろいろなことを勉強できると思います。
編集後記
お菓子づくりから営業、会計、写真撮影まで、すべてご自身でこなされている大塚さんのお 話に驚かされました。しかも、それらは「やってみる」を重ねた結果だとうかがい、挑戦す る姿勢の大切さを改めて感じています。神戸での震災という大きな転機を経て、地元の農家 さんと向き合いながら商品をつくり、全国の百貨店や航空会社へと販路を広げてきた歩み
は、まさに行動の積み重ねだと思います。少数精鋭でも高い生産効率を実現している点は、 経営を学ぶ立場としてとても勉強になりました。「皆さん最初は素人」という言葉は、一歩 を踏み出せずにいる学生にとって心強い後押しになるはずです。