遊びに明け暮れた学生時代
選択肢は独立の一択
正直、そんな立派な学生時代を過ごしてきたわけではないんですよね。本当に遊んでばかりで、どこかに就職するという選択肢自体があまりありませんでした。学生時代はフリーマーケットで物を売買したりしていて、そのころからお客さんを相手にする商売が性に合っていたのかもしれません。22歳のときに会社を作ったのが、私にとって最初の独立になります。
20代はお金を追いかけていた
携帯ショップから探偵業へ
会社を作ったあとは、ネットワークビジネスに誘われて挑戦し、そこそこうまくいきました。そこから、まだインターネットが当たり前ではなかった時代に、富士通の「テレジェニックシリーズ」というFAXなどを備えた多機能端末を使ってお米といったものを注文できる仕組みの販売にも携わりました。そのあとは携帯ショップを5店舗ほど展開し、飲み屋も1店舗経営していました。阪急三番街と嵐山では、住商テレメイト株式会社(現・株式会社ティーガイア)さんと一緒に、当時の携帯の白黒液晶の裏にセル画や家族の写真を入れられるお店もやっていましたね。
そこからさらに、探偵業にも手を広げました。きっかけは、経営していた飲み屋のお客さんに探偵をつけられたことです。その探偵を捕まえて、逆にうちで採用してしまって、探偵会社を始めることになりました。興味があったわけでは全くなくて、探偵をつけるのにお金を払う人がいることに驚いて、これはビジネスになると思ったんです。
お金がゴールじゃない
20代は本当にお金を追いかけていました。ただ、探偵の仕事は誰かが不幸になったときに儲かる仕組みで、精神的にもあまり良くなかったんですよね。お金が儲かった瞬間に頑張らなくなる自分もいて、お金がゴールになってはいけないんだと、あの時期に学ばせてもらった気がします。結婚するタイミングで、古着を扱う前職の会社に役員として入ることになりました。
古着業界で見えた課題
一点物ゆえの非効率
前職では、古着を一点ずつ扱う作業のたいへんさを痛感しました。原価率や利益率は高いのですが、どうしても商品一つ一つに手間がかかってしまいます。この作業をデータ化していくことと、在庫が一つしかない商品でも、世界中のさまざまなマーケットプレイスに出品できる仕組みを作れないか、と考えるようになりました。当時は国によって価格が違うことも理解していたので、海外を主戦場にする発想が自然と生まれていきました。
もともと社長とは知り合いで、私がそれまでいろいろな事業をやってきたのを知っていたこともあり、会社を任せてもらうようになりました。結果として、会社の規模を10倍以上に成長させることができました。ただ、会社が儲かったことで社長がやる気を出して現場に戻ってきて、方向性の違いを感じるようになったんです。この業界で一番じゃないと嫌だという思いもあり、辞めることを決めました。
ワサビ創業のきっかけ
コンサル会社としてスタート
弊社は、コンサルティング会社としてスタートしました。いろいろな会社の売上を伸ばすお手伝いをしながら、そこで得たお金をすべてシステムへの投資に回していったんです。私自身はエンジニアではないので、エンジニアやサポートのメンバーを社外から引っ張ってきてチームを作り、社内で足りない部分は社外の力も借りながら開発を進めてきました。
システム開発へ舵を切る
コンサルはどこまでいっても自分が動かないとビジネスが成立しませんが、システムであれば、システム自体が働いてくれます。放っておいても毎月のサブスクリプションモデルで、この2年半以上、解約されることなく積み上げ式に契約が増えている状態です。ただ、コンサルからシステム提供に完全に切り替えるタイミングは、案件一つあたりの金額が小さくなる分、自分の時間の使い方を変える必要があり、なかなかしんどい時期でもありました。
中古流通を支えるシステム
30のマーケットに一括出品
弊社のメインのシステムは、商品の買取・仕入れから販売までを一元管理できる仕組みです。日本語で商品を一回登録すれば、英語に変換されてウォルマートに、中国語に変換されてShopee(ショッピー)や台湾のマーケットに出品される、といった連携が30くらいのマーケットプレイスとできます。売れればすべてのプラットフォームの在庫が0になり、海外からの注文もこのシステムで一元管理できるようになっています。写真を撮って情報を入れ、ボタンを押すだけで出品が完了する手軽さも特徴です。
プロの目で育つデータ
強みは、システムに蓄積されているデータの質だと思っています。AIを使って商品登録をしていても、素人が入力したデータだと正しい情報が入っていなかったり、なかには本物ではない商品が紛れ込んでしまうこともあります。弊社の場合は、プロの仕入れ担当者が登録しているので、データが賢く育っていく感覚がありますね。事業者さんとECモールをつなぐ立場として、ECモールには流通が生まれる場づくりを支援し、事業者さんにはあらゆる販売先との接点を提供する事業を展開しています。昨年の実績でいうと、流通総額は5,800億円ほどになりました。
世界を見据えた事業展開
アメリカが最大の販売先
中古品の買取・流通で国内トップ20の企業のうち、14社は弊社のシステムを利用してくださっています。eBay上でも、弊社のシステムを通した流通量はアメリカで一番多いという実績があります。今はタイ、マレーシア、台湾、香港などでも徐々に導入が進んでいますが、売れる場所としては、購買力のあるアメリカが圧倒的に大きいですね。
次の焦点は中国
今後は仕入れ先としての中国に力を入れていきたいと考えています。ユーザー数や、これまで買われてきた商品の出どころとしても、中国の存在感は大きくなっていくはずです。中国最大のブランド品鑑定機関であるCCIC(中国検験認証集団有限公司)の関係者と知り合いだったこともあり、現地で一番大きなBtoB企業との提携も進めているところです。
創業からの苦労
モデル転換のしんどさ
コンサルティングから完全にシステム提供へ切り替える時期は、案件一つあたりの金額が小さくなる分、経営のバランスを取るのが本当に大変でした。売上の1割を超えるような大口の取引先に依存してしまうと、そこを切られた瞬間に経営が立ち行かなくなってしまいます。ビジネスとしてはなるべく多くの取引先から少しずつお金をいただく形が健全だと考えているので、あえて時間をかけて仕組みを変えていきました。
リスクとの向き合い方
まだ資金力がなかったころ、規制対象の商品を誤って海外に出品してしまい、お客さまのアカウントが停止されて売上を失ってしまったこともありました。こうしたリスクを一つずつ潰しながら、いいサービスに育ててきたという感覚があります。新規開拓については、弊社には営業担当がいないので、リユース業界のイベント「リユースフェス」を主催して業界の活性化を図る形で認知を広げています。今年は11月25日に後楽園ホールで開催する予定です。あわせて業界紙でも月に2回ほど、海外の情報発信を続けていて、「日本サービス大賞」をいただいたこともあります。
これからのビジョン
子会社の社長を育てる
私は今51歳なので、全力で走れる時間はあと10年ほどだと思っています。今は子会社を作りながら、社内で優秀なメンバーに社長業を任せて育てているところです。社長という役割は、ゲームのようにだんだん上達していくものだと感じているので、早い段階から経験を積んでもらい、いい形で引き継いでいきたいですね。現在、子会社は4社になりました。
グローバル企業を目指して
弊社としては、本当の意味でグローバル企業になりたいと思っています。世界中に会社を作りながら、海外にまだないもの、日本にまだないものを手がけていきたいですね。従業員は現在およそ100人になりました。うれしいのは、どの国に行っても知り合いや友達がいることです。失敗しても許される会社であることも、弊社の特徴だと思っています。私自身が創業者としてチャレンジを重ねてきたので、うまくいかなかったとしても、それは経験として生きるという考え方をスタッフにも持ってもらいたいですね。
学生へのメッセージ
自分だけで抱えない
たくさんの人に出会ってほしいなと思います。私自身、出会った人によって人生が変わってきました。失敗しても、それをどう捉えるかがすべてだと思っていて、私は割とポジティブに「これはやってはいけないんだ」と学んだ経験として受け止めるようにしています。失敗しているということは、間違いなく挑戦した証です。普通のことだけをやっていても、進化は生まれません。ぜひチャレンジする気持ちを持ってほしいですし、就職活動という枠を少し離れてもいいので、いずれ自分で会社を立ち上げることを目標にしてみるのもおすすめです。目標があると、日々の仕事への向き合い方も変わってくると思います。
自分自身の能力だけでビジネスを考えないほうがいいとも思っています。能力が足りないと思ったら、能力がある人の力を借りればいいんです。私自身、いろいろな国を訪れていますが、英語も中国語も1ミリも話せませんし、システムを組むこともできません。必要なときに必要な人に助けてもらいながら、社内で足りなければ社外の力も借りて、ここまでやってきました。人に助けてもらったり、人に動いてもらえたりすることも立派な能力です。自分の時間は24時間しかないからこそ、そういう力を持った人材にこそ価値があると思っています。
編集後記
大久保さんのお話を伺って、まっすぐな道のりではなくても、そのときどきの経験がすべて今につながっているのだと感じました。携帯ショップや探偵業といった一見畑違いの経験も、リユース業界の課題発見や、人に頼る力へとつながっているように思います。「自分の能力だけで考えない」という言葉は、これから社会に出る私たち学生にとっても、大きなヒントになると感じました。あわせて、失敗を恐れずに挑戦する姿勢も、ぜひ見習っていきたいです。