インタビュー

LINE社長から未開の動画メディア、そしてインフルエンサーマーケティングへ 森川亮が描く「若者の感性」と「共感」の経済圏

PROFILE
C Channel株式会社 代表取締役社長
森川 亮

LINEを飛び出し、当時まだ一般的ではなかった「縦型動画」の世界へ

安定よりも「次の10年」を作るワクワクを選んだ

LINEの社長として上場直前のタイミングで、あえて自分から辞めるという決断をしたのは、やはり「新しいものを作りたい」という気持ちが強かったからです。当時、世の中はテキストやスタンプでのコミュニケーションが主流でしたが、次は絶対に「動画」が生活の中心になるという確信がありました。しかも、テレビのような完成された映像ではなくて、スマホで撮った、よりリアルで身近な動画ですね。

もともとソニーや日テレにいたこともあって、メディアの力は信じていました。でも、大きな組織にいるとどうしても既存のビジネスを守るほうに力が働いてしまいます。だったら、自分でゼロから新しいメディアを作ったほうが、10年後のスタンダードを早く作れるんじゃないか。そう考えて、C Channel(シーチャンネル)を立ち上げることにしたんです。現在はインフルエンサーマーケティングを軸に、クリエイターと企業をつなぐ事業を展開しています。

 

日本からアジアへ、若者の文化を届けるプラットフォーム

創業当初から考えていたのは、日本だけでなくアジア全体をターゲットにすることでした。日本の女子大生や20代の女性が面白いと感じるコンテンツは、実はタイやインドネシア、中国の若者にも共通する感性があるんですよね。

「C」にはコミュニケーションやクリエイティブ、そしてチャンスといった意味を込めています。言葉がわからなくても、動画を見れば「かわいい」「真似したい」と直感で伝わる。そんなアジアNO.1のメディアを目指して、まずは自分たちで動画を制作するところからスタートしました。

「きれいごと」じゃない、等身大のコンテンツが生む圧倒的な共感

1分間の動画に凝縮された「明日使える」体験価値

弊社が成長できた大きな要因は、徹底的にユーザー目線での「役立つ」と「共感」にこだわったことです。たとえばヘアアレンジやメイクの動画。プロがモデルに施す完璧な技術ではなくて、自撮りで「こうやったら自分でもできるよ」という、身近な憧れを形にしていきました。

スマホで見やすい「縦型動画」をいち早く取り入れたのも大きかったですね。当時はまだYouTubeも横型が当たり前でしたけど、今の若い子はスマホを横にしませんから。1分という短い時間のなかで、いかに発見があって、明日から試してみたくなるか。その情報の密度とリズムを突き詰めたことが、多くの支持をいただいた理由だと思っています。

広告からECへ、インフルエンサーと共に歩むビジネスモデル

事業としては、メディアでの広告収入から始まって、今はインフルエンサーのキャスティングやプラットフォーム運営、EC、そして中国やインドネシア市場への展開と、かなり多角化しています。とくに力を入れているのが「共感」を軸にしたマーケティングです。

今の時代、一方的なテレビCMよりも、信頼しているインフルエンサーが「これ本当にいいよ」と言うほうが、圧倒的に人の心に届きますよね。私たちは、ただフォロワー数が多い人を探すのではなくて、特定のジャンルで熱狂的なファンを持つ「クリエイター」を育成し、企業とマッチングさせる仕組みを構築しています。自分たちの感性を大切にする人たちが、正当に評価され、ビジネスとして成立する世界を作りたい。それが弊社の役割だと思っています。

変化を楽しみ、失敗を恐れない組織の力

自分で考えて動く「起業家精神」を持つメンバーを求めて

組織作りで大切にしているのは、とにかくスピード感と、失敗を許容する文化です。インターネットの世界は変化が激しいので、3カ月後の正解が変わっていることも珍しくありません。だから、上からの指示を待つ人よりも、「今のトレンドはこれだから、こういう施策をやってみましょう」と自発的に提案できる人を採用しています。

弊社には、若くして大きなプロジェクトを任されているメンバーがたくさんいます。もちろん失敗することもありますが、そこから何を学んで次に活かすかが重要。現場のクリエイティビティを最大化するために、なるべくフラットなコミュニケーションを心がけています。

日本の感性を世界に。そして「ライフスタイル」のインフラへ

今後の展望としては、インフルエンサーマーケティングを軸に、人々の生活に寄り添う「ライフスタイル・プラットフォーム」になりたいと考えています。今取り組んでいる中国でのライブコマースや、独自のブランド展開もその一環です。

日本の「かわいい」や「丁寧な暮らし」といった感性は、世界に誇れる素晴らしいコンテンツです。それをデジタルとクリエイターの力で、世界中の人たちに届けていきたい。私たちが作ったサービスを通じて、誰かの毎日が少しだけ楽しくなったり、新しい自分を見つけるきっかけになったり。そんなワクワクする未来を、これからも作り続けていきます。

編集後記

今回、森川社長のお話を伺って一番衝撃を受けたのは、LINEの社長という輝かしいキャリアを捨ててまで、「次の10年」のためにゼロから挑戦されたその決断力です。ビジネス未経験の私からすると、安定を捨てて未知の領域に飛び込むのは、想像もできないほど勇気がいることだと思います。

印象的だったのは、「言葉がわからなくても直感で伝わる動画」という視点です。グローバルに展開するうえで、小難しい理屈ではなく「感性」を共通言語にするという考え方は、今のSNS時代においてまさに本質だと感じました。

「失敗から何を学ぶかが大事」という言葉も、就活や将来に不安を感じている今の自分に深く刺さりました。まずは自分も、周りの顔色をうかがうのではなく、自分の直感や「これが面白い」と思う感覚を信じて、小さなことからでも形にしていこうと思います。