突然の入院が教えてくれたこと
誰とも話せない1週間
株式会社2Lができたのは、私自身の入院体験がきっかけなんですよね。人生で初めて入院を経験して、それまで当たり前だった「誰かと喋る」ということが、突然まったくできなくなりました。
入院期間は1週間くらいでした。別に重症ではなかったのですが、コロナ禍で面会禁止だったため突然人との交流を奪われて、ただひとりきり。その孤独さがすごく辛かったんです。
普段だったら家に帰れば誰かがいたり、大学に行けば友達と喋れたりする。当時は大学生だったんですけど、そういう日常が当たり前だと思っていたんですよね。でも、その「当たり前に喋れる」が本当に消えるんですよ。電話一本すらなくなるような感覚というか。
失ってから気づく大切さ
入院する前は何も考えていませんでした。いい意味で幸せだったんです。たとえば大切な方が亡くなってから初めてその大切さに気づくとか、物をなくしてから発見するとか、よくいうじゃないですか。それと同じだと思います。実際にその状況を体感しないとわからないことってあるんですよね。
入院したことがきっかけではあるんですけど、もう一歩先にいくと、入院によるさまざまな不便を感じたっていうのが一番大きいかもしれません。体力もなくなっちゃうので、そこから生活の不自由さもいろいろと出てきて。そういう経験から、誰かの役に立てるサービスが欲しいと思ったのが、弊社の原点です。サービスを提供すること自体が目的で、起業はあくまでもその手段だったんですよね。
「いろんなことやってる会社」の正体
隙間のニーズに応える仕事
弊社はよく「いろんなことをやってる会社」って言われるんですよ。家事代行系のサービスもやっているし、映像制作もやっている。確かに業種もまったく別なので、そう見えるのかもしれません。
家事代行系でいうと、いわゆるダスキンさんのようなきっちりとしたものではなくて、「日常のちょっとした困りごと」をサポートするイメージです。たとえば電球を替えてあげるとか、ソファを1階から2階に上げてほしいとか。こういうのって、なかなか頼める場所がないじゃないですか。
お客様からは「必要としている隙間を埋めてくれる」という声をいただいています。ご高齢の方に限らず、若い年代の方にも隙間のニーズはあって。初めて赤ちゃんが産まれる方のところに先輩ママさんが行くと、ちょっと安心するっていうお声も結構いただいていますね。
会話のサービスでは、「孫世代くらいの若者が来ると楽しい」って言っていただけることが多くて。人手不足で雑談すらできないという現場の課題に対して、弊社のパートナーが会話を担う形でサポートしています。
映像制作という、もうひとつの柱
弊社は元々映像制作もやっていて、現在はそちらの方が軸になっている部分もあります。CMやミュージックビデオの制作に加えて、2025年10月17日には全国のイオンシネマで映画も公開させていただきました。
映画だけが主軸というよりは、映像制作全体を手がけている会社って思っていただければ。キャスティングも含めて結構幅広くやっているんですよね。
これからのビジョンと挑戦
行政との連携、止まった歩み
弊社のビジョンとしては、大きく2つあります。
ひとつは、家事代行系のサービスをもっと広めていくこと。実は福島市と官民連携の話を進めていたんですよ。ただ担当者さんが変わってしまって、今はちょっと止まっている状況で。行政との連携は引き続き進めていきたいという思いがあります。
課題としては、弊社は営業が得意じゃないんですよね。弊社のサービスの意味をしっかり汲み取って、ちゃんと動いていただける方がいると面白いなと思っています。自分の会社じゃないものを売るのはハードルが高いとは思うんですけど、そこに期待しているところはあります。
世の中にあるようでないサービスなので、なかなか浸透しづらかったり、理解されにくかったりする。そこはずっと感じている課題ですね。
新しいエンタメの世界をつくる
もうひとつは弊社全体のビジョンの話になるんですけど、「人生を刻む瞬間をサポートする」という理念を掲げています。株式会社2Lの「2L」には、LifeとLivingという二つのLの意味が込められていて。
家事代行系は「生きる」「生活」に直結しているし、映像制作もエンタメとして「幸せを提供する」というところで実はつながっている。弊社はキャスティングを含めた映像制作にかなり力を入れていて、そちらを伸ばしていきたいという思いがあります。
映像の世界って、昭和気質な考え方や名残がまだ残っていて。そういう悪循環を変えていこうとする考え方に共感してくれる方がいて、一緒に新しいエンタメを作っていけたらいいなと。新しいエンタメの世界を引っ張っていけるような会社を目指しています。
学生へのメッセージ
好きなことを見つけてほしい
結構答えはひとつだと思っていて。「楽しいこと、やりたいことをやる」。
これに尽きるかなと。
たとえば掃除が苦手だったりすると、やっぱり苦手なことをやるのには抵抗があるんですよ。もちろんやらざるを得ないこともあるけど、結局人間って苦手なことはなかなかできない。逆にTikTokとかは永遠に見れちゃうし、ゲームだって永遠にできるじゃないですか。好きなことだったら努力していなくても努力できるというか。いくらでも前に突き進めるんです。
それで誰かを不幸にするわけじゃないし、自分も幸せになれるし、周りも幸せにできるはず。だから心に嘘をつかず、本当に好きなことを見つけてほしいなと思っています。
すごい理想論に聞こえるかもしれないけど、映像関係をやってる人って結局好きなことをやって生きているし、それで食べていける人もいるわけで。食べていけないことを考えるのも確かに必要ではあるけど、食べていける路線を考えた方が、うまくいくことは多いんですよね。
見つけようとする過程が財産
もちろんリスクは考えなきゃいけない。でも、悪い方に寄りがちなのが日本人だと思っているので。まずはやりたいことを考えてみる。「何だと楽しめるのかな」って考えてみて、そこから先でリスクや組み立てるべきことは組み立てればいいと思うんです。入り口を整えないと話にならないので。
好きなことが見つかるかどうかは、正直わからない。もう見つかっている人もいるかもしれないし、2〜3週間で見つかる可能性もある。なかなか見つからないっていう人もいるかもしれない。でも、とりあえず動くことが大事です。見つかっても見つからなくても、見つけようとする過程がひとつの貴重な財産になると思うんです。
だから、もう一度繰り返しますが、好きなことを見つけてみてほしいです。
編集後記
入院という体験から「当たり前の大切さ」に気づき、家事代行や会話代行、映像制作まで多角的に事業を展開されている石田さん。「隙間のニーズを埋める」という発想は、既存のサービスではカバーしきれない生活の困りごとに光を当てるものだと感じました。とくに「好きなことを見つけてほしい」「見つけようとする過程が財産」という言葉は、将来に悩む私たち学生にとって、肩の力を抜いて前に進む勇気をもらえるメッセージです。まずは自分の心に正直に、動いてみること。その一歩の大切さを教えていただきました。