インタビュー

コロナ禍で消えたイタリア行き。料理人からSES事業の代表取締役になるまで

コロナ禍で消えたイタリア行き。料理人からSES事業の代表取締役になるまで
PROFILE
アドレイズ株式会社 代表取締役
倉恒 海斗

調理師専門学校からブライダル業界へ

調理の道を選び、キャリアをスタート

私は大学には進学せず、大阪の調理師専門学校を卒業しました。卒業後はレストランなどで勤務し、新卒ではブライダル料理などを手がける大手企業に入社しました。そこではレストラン業務やブライダル料理の提供などを幅広く担当していました。

イタリア行きが決まっていた

働いていたレストランでイタリア人のスタッフとよく一緒に仕事をしていて、イタリアで料理修行がしたいという思いが強くなっていったんです。星付きの店舗から就労ビザを出してもらえる話も進んでいて、それを機に前職を退職し、渡航の準備をしていました。

コロナ禍がキャリアを変えた

ビザが下りずイタリア行きは中止に

ちょうどそのタイミングで新型コロナウイルスが流行してしまって。当時はヨーロッパの状況がかなり厳しく、結局ビザが下りないという結果になりました。そこで、フリーランスとしてパスタ教室の運営や料理人としての活動を始めることにしたんです。

パスタ教室で得た手応えと限界

パスタ教室は、おかげさまで一人で集客もできて、順調に進んでいました。ただ、その手応えから自分の中で驕りのようなものも出てきて、いろいろと手を広げすぎた結果、身体的にかなり疲弊してしまったんです。そこで、経営とは何なのかを改めて見つめ直す機会がありました。

経営を学ぶために東京へ

実務経験を重視する中での課題

自分に不足している能力を痛感し、フリーランスの活動はいったんすべて区切りをつけることにしました。「働きながら学ぶ」ことを信条としていたため、経営コンサルティング会社などで実務を学び、いずれは自身の店舗運営に活かしたいと考えていたのです。しかし、当時は学歴を重視する採用基準の壁に直面することもありました。

大阪から上京し、社員1号として入社

それなら経営者のすぐそばで働きながら学べる環境に身を置きたいと考えて、大阪から東京に出てきました。スタートアップに社員第1号として入社し、約2年ほど勤めた後、創業に至っています。

SES事業を軸に据えた理由

堅実なビジネスモデルを探して

飲食店の運営には、どうしても初期投資が必要になります。だからこそ、自分の中で堅実なビジネスモデルをいろいろと探していました。たどり着いたのが、前職と同じ「人材」に関わる事業です。そこから人材紹介事業やSES事業を立ち上げ、並行して飲食店の運営や店舗展開のコンサルティングもおこなっていたのが、創業の経緯になります。

現在の事業規模

現在は社員数も多くなく、少数精鋭ですが、パートナー企業は約2,000社にのぼります。東証プライム上場企業を中心に150社ほどとお取引があり、そこからいただく案件に対して、パートナー企業の人材を柔軟に活用しながらプロジェクトを進めています。

経営者として一番苦労したこと

マネジメントにおける「引き際」

社長になってから一番苦労したのは、社内の従業員との関わり方です。人数が増えてきた中で、自分がどこまで携わり、どこで引くべきかを見極める必要が出てきました。引けなければマイクロマネジメントになってしまい、従業員の裁量を奪ってしまいます。かといって業務量を一気に渡してしまうと、今度はパンクさせてしまう。段階を踏んでどう引いていくかというところに、今も向き合い続けています。

新サービス「Raisee」で二本柱を目指す

SES事業者向けのCRMパッケージ

案件の開拓や人材の集客、提案、契約時のクロージング、契約書の締結、契約更新、人材のフォローといった多岐にわたる業務を、一つのパッケージでおこなえるようにしたサービスです。営業管理や売上管理としても使え、クラウド上でのドキュメント共有やタスク管理もできるようになっています。

導入社数を増やしていく

今後はSES事業を軸としつつ、Raiseeを二本目の柱として成長させていく方針です。現在はSES事業者向けの「Raisee for SES」を展開していますが、今後は人材紹介会社向けの「Raisee for Agent」や、飲食店舗向けの「Raisee for Food」など、対象業界を順次拡大していく予定です。料金プランは、初期費用20万円・月額5万円の「スターター」をはじめ、「プロフェッショナル」、「エンタープライズ」の3つを用意しています。将来的にはAIを活用したアドオン開発なども計画しています。

3本目の事業の柱として福祉領域も検討

現在はITと飲食の2軸で事業をおこなっていますが、今後は福祉系の領域にも参入していきたいと考えています。弊社でおこなうか、子会社を立ち上げるかは、これから詰めていく段階です。

学生に伝えたいメッセージ

仕事を楽しめるかどうかがすべて

最も大切なのは、仕事を楽しむことだと考えています。学生時代は長くても16年ほどですが、定年までのキャリアは40年以上続きます。人生の充実度は、仕事をどれだけ楽しめたかによって大きく左右されるはずです。だからこそ、目の前の仕事と真摯に向き合い、自分が楽しめるポイントを見つけ、そこに情熱を注いでいくことが重要です。肩肘を張らずに、フットワーク軽く挑戦を繰り返すことが、将来「人生を楽しめた」という実感につながるでしょう。

楽しくないことへの向き合い方

将来設計を立てる中で、自分がワクワクするポイントは必ずあります。たとえば私であれば、飲食店の運営やフランチャイズ展開、福祉領域への進出といった将来像があって、その過程には楽しくないと感じることも含まれています。楽しくないと感じたとしても、その経験は将来のワクワクする自分につながっていくものです。そのため、目の前の楽しくないことは目的意識を持って早めに終わらせて、次のステップに進むことをモチベーションにしています。

編集後記

倉恒さんのお話を聞いて印象的だったのは、コロナ禍でイタリア行きが白紙になるという大きな挫折を経験しながらも、そこから経営を学ぶ道を選び、地道に東京で経験を積んでいったという行動力です。「やりたくないことも将来につながっている」という考え方は、キャリアに悩む学生にとってヒントになるのではないでしょうか。仕事を楽しむことの大切さを教えていただき、大変勉強になりました。