インタビュー

「やりたいことがない」に苦しんだ10代があったから、若者の可能性を広げる会社をつくった

「やりたいことがない」に苦しんだ10代があったから、若者の可能性を広げる会社をつくった
PROFILE
株式会社アドライブエージェント 代表取締役
佐藤 新九郎

野球漬けだった高校時代と、浪人での問い直し

高校時代からお話ししますと、私はもともと野球をやっていて、11年目が高校3年生でした。そこはもう本当に泥臭くて汗臭くて、野球ばかりやっていたなという記憶が高校時代はとくに色濃く残っています。ずっと野球をやってきたこともあって、大学進学については「なんとかなるだろう」というスタンスでいたんですよね。でも全然うまくいかず、1年間浪人することになりました。

父が経営者だったので「継ぐんだぞ」となんとなく言われて育ってきていて、自分の人生というより父の人生を歩んでいるような感覚が大きかったなと思っています。浪人して一人で勉強する時間のなかで、じゃあ自分は何をしたいのか、というところに向き合っていきました。パッと答えが浮かぶわけでもなく、気持ちが乗らない時もありました。

ただ、視点を変えてみると「やりたいことがなくて困っている人」って、実はたくさんいるんだろうなと思ったんです。私自身、野球を長く続けさせてもらっていましたし、海外旅行にも何度か行かせてもらって、いろいろな文化に触れてきました。それでもやりたいことが見つからない。だとしたら、これはもはやニーズなんじゃないかと感じました。やりたいことが見つけられる組織をつくりたい、という思いが根っこにありました。

コロナ禍に学生団体を立ち上げる

その思いを胸に、いろいろな選択肢が持てそうな大学として立教大学に進学しました。ちょうど私が入学したのはコロナ禍がはじまった年で、「やりたいことがない」がさらに加速するような時代だったんですよね。

だからこそ、自分から動いていくしかないと思い、学生団体「BANE↗︎(バネ)」を立ち上げました。自分たちで自分たちのためにイベントをつくり、将来やりたいことの原体験を見つけていく。選択肢を広げ、夢に向かってナビゲートするというビジョンで動きはじめた団体です。

1年目から30人ほどが集まる団体に育ち、今も続いています。卒業していくメンバーのなかには「BANEのおかげでやりたいことが見つかった」と言ってくれる人もいて、自分自身が波をつくれたという成功体験を積めた学生時代だったなと思います。

同世代の挫折を見て、起業を決意した

私自身は学生起業で、現在は2期目の途中、まもなく3期目に入るところです。1年間休学していたこともあり、私より1年先に卒業していった同世代が、実際に会社に入って「やりたいことを見つけたはずなのに、夢が潰れかける瞬間」に直面しているのをたくさん見てきました。

仕事には厳しさも理不尽さもあります。大学時代にやりたいことを原体験として持っていたとしても、それを叶えられる人はごくわずかで、根っこにある課題を解決しないと、ワクワクする挑戦を続けていくことは難しいと感じました。

そこで自分にできることは何かと考えたのが、創業の原点です。仕事や人生を「挑戦」として捉えている人たちが、挑戦しやすい環境をつくる仕事がしたいと思いました。

会社にフィットするかどうかも大切ですが、それ以上に会社が持つ選択肢の分母は、すべて売上から成り立っています。海外展開のような新規事業も、給料を上げることも、福利厚生を整えることも、すべて売上という土台があってこそ実現できる。だからこそ売上をつくることを支援して、巡り巡って学生時代に描いた夢を叶えられる環境づくりに貢献したい。それが今の事業の根っこにある思いです。

成果から逆算するSNS運用

弊社では、おもにInstagramやTikTokをはじめとするショート動画を活用した売上創出を得意としています。やみくもにフォロワーやリーチを伸ばして認知を取るというより、あくまでも成果にこだわり、そこから逆算して設計できるかどうかを大切にしていて、これが他社との違いだと思っています。

たとえば留学事業を展開する企業様では、もともと訪問営業だけに頼った集客に限界を感じていらっしゃいました。弊社が新しい集客チャンネルとして入らせていただいたところ、月に14件がSNS経由で生まれ、3か月間で30件以上の集客につながりました。費用対効果でいうとROAS(広告費用対効果)は750〜800%ほどに達した施策もあります。あくまで一例ですが、上場企業様や大手企業様も含め、現在では100社を超える企業様に導入いただいています。

三層に分けた企画設計

弊社が大切にしているのが「三層企画メソッド」です。ターゲットに刺さるからこの投稿をしようという発想だけでなく、Instagramは潜在層に届けていく施策なので、ユーザーのフェーズによって届けるべき投稿は変わります。

認知をしっかり取っていくべきフェーズ、ファンになってもらうべきフェーズ、比較検討してもらうべきフェーズ。それぞれを「認知のための投稿」「ファン化のための投稿」「比較検討のための投稿」とジャンル分けし、メソッド化して運用しています。あわせて、運用責任者は全員フォロワー1万人達成の経験者しかアサインしない仕組みにしていて、集客目的でInstagramを活用したい企業様に信頼していただける体制をつくっています。

中学時代の親友を亡くした経験

大変だったことを聞かれると、いくつか思い浮かびますが、大きくは二つあります。

一つは、中学時代の親友を亡くしたことです。彼は好きなものにとことん前向きな努力家で、尊敬できる親友でした。やりたいことがたくさんあっただろうに、道半ばで亡くなってしまった。悲しさもありましたが、それ以上に悔しさが強く残っています。この経験があったからこそ、「やりたいことを見つけていく」ということに強い思いが乗るようになりました。

頭ごなしの否定にも負けず

もう一つは、大学時代です。やりたいことを叶えていくために、いろいろな経営者やフリーランスの方に相談していた時期がありました。そのなかで、私がやりたいと思っていたことを頭ごなしに「それをやっても誰も幸せにならないでしょう」と言われた経験があります。「BANEのもとで一緒に頑張ろうとしている人たちがかわいそうだ」とまで言われたこともありました。

私自身は真っ当なつもりで話を聞いていましたし、わからないからこそ相談していたところもあったのですが、解決策を示されないまま否定された悔しさは今でも覚えています。相談せざるを得なかった自分の力不足も情けなく感じました。それでも身近な仲間たちが「そんなことない」と言ってくれたおかげで、乗り越えることができました。

身近な人の幸せの連鎖をつくりたい

今後のビジョンについては、社会課題を解決するといった大きな目標を立てるというよりも、身近な人たちを幸せにしていくことの積み重ねを大切にしたいと思っています。社内のメンバーにも、これから出会っていく人たちにも、幸せにしたいと思える相手が増えていく。その連鎖が広がっていった先に、日本がより良くなっていったらいいなと、体感的には思っています。

その足がかりが、今取り組んでいるSNS運用支援です。SNS領域はAI化が進んでいる領域だからこそ、一次情報をたくさん持ち、それをしっかり提供できる存在がマーケターとして残っていくと考えています。どんなAIでも出せるような情報ではなく、私たち自身の言葉に信頼を置いてもらえる会社にしていきたいです。

D2Cブランド事業で10億円を目指す

これまで多くの企業様の事業成長に伴走させていただくなかで得た知見を活かし、弊社としてD2C(自社で企画した商品を消費者に直接販売する)ブランドの展開も進めています。今まで力を入れてきたSNS運用代行事業に加え、ブランド単体で10億円を超えることを見据えて、今後展開していきたいと考えています。SNS運用に関わる事業と、自社でD2C展開をしていく事業、この二軸で走らせていく会社にしていきたいです。

社内のリソースとしては、SNSを土台にしながら、PR領域やブランド展開などをゼロイチでも立ち上げやすい強みを活かして、さらに成功事例や知見を広げていくことに今、力を入れています。

選んだ道を正解にする

将来に不安があったり、キャリアに悩んでいたりする学生の皆さんに伝えたいのは、まずはやりたいことをひたすらやってみてほしい、ということです。

ワクワクする感覚で自分自身をを動かしていくと、動いて失敗したとしても、それは今後の挑戦の材料になっていきます。私は、選んだ道を正解にしていくという意思決定の姿勢がとても大切だと思っていて、AかBかを比べて選ぶという感覚はそんなに必要ないんじゃないかと思うんですよね。

たとえばBを選んで結果的にうまくいかなかったとしても、それを失敗と決めつけるのではなく、Bの道でどう成功していくかを考えればいい。Bを選んだことで、ワクワクする道がAだったと気づけたのなら、それはBを選んで正解だったということだと思います。

今、やりたいことがあるのに蓋をしている状況があるのなら、まずはやってみることが今後につながります。頑張ってほしいなと思います。

編集後記

今回お話を伺い、佐藤さんの原点にある「やりたいことがない」という感覚への向き合い方が印象的でした。私自身も学生起業を経験するなかで、選択肢を前にして立ち止まってしまう瞬間があります。「選んだ道を正解にする」という考え方は、意思決定に迷いがちな学生にとって、大きな支えになる言葉だと感じました。中学時代のご親友のお話も含め、ご自身の経験を率直に語ってくださったことに感謝します。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。