インタビュー

「人が集まる場所」を作り続ける。AI時代にこそ人間がやるべきことがある

「人が集まる場所」を作り続ける。AI時代にこそ人間がやるべきことがある
PROFILE
AIリスキル株式会社 代表取締役
山原 慎也

部活・学園祭・人事——「まとめる側」であり続けた学生時代

ハンドボール部の部長として

高校時代は、ずっと部活に打ち込んでいました。ハンドボール部の部長をやっていたんですが、私は「背中を見ろ」タイプのキャプテンじゃなくて、どちらかというとメンバー全員の後ろに回って背中を押すタイプだったんですよね。自分が前に出るというより、組織全体を動かすことに面白さを感じていました。

大学は学園祭実行委員で4年間

大学に入ってからは、学園祭実行委員を4年間やり続けました。設営や舞台づくりなど、祭りという「一つのものを支える」仕事です。今の事業につながっているなとも思うんですが、当時はそんな意識はなくて、ただ楽しくてやっていた感じです。

最近の若い方を見ていると、学生起業をしたり、社会貢献活動をしたりと、すごく多様な選択をしている。でも私の時代は就活をして一般企業に新卒入社するのが普通で、私もそのひとりでした。

人事担当から、「作る人間」へ

新卒は人事担当として5年間

新卒で入社して、いわゆるバックオフィス系の仕事をしていました。営業よりも管理部門に興味があったので、人事として5年ほど働きました。「後ろのポジションが好き」という性格は、学生時代からずっと変わっていないんですよね。

RPA との出会いが転換点に

在職中、ちょうど働き方改革が叫ばれていた時期に、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる業務効率化ツールに触れる機会がありました。若手という理由もあってその担当を任せてもらい、EXCEL のマクロなども含めて「自動化」の面白さにはまっていったんです。

同時に、コロナ禍で自由な時間が増えたことでデザインの勉強も始めました。stand.fm という音声配信サービスがちょうどできたての頃に登録して配信を始めたり、ブログや SNS を 3、4 年続けたりしているうちに、独立志向が少しずつ湧いてきました。

売り上げが立つ前に退職を決意

副業禁止の会社だったので、「どうせなら売り上げが立つ前に辞めてやろう」と、一念発起でフリーランスに転身しました。その後、大学の同級生が一人で会社をやっていたのですが、彼はエンジニアで私はデザイナー、という形でナンバー2として参加させてもらいながら、地力をつけていきました。

「日本最大級」の裏にある、ひたすら続けた3年間

ChatGPT が出た直後に AIツールギャラリーを立ち上げ

ChatGPTが大きな話題になった2023年の11月ごろ、興味本位で「AIツールギャラリー(ai-gallery.jp)」というメディアを作りました。AI ツールを比較・掲載するサイトです。

当時は似たようなサービスをやっている人が他にもいたんですが、運営が大変なので次々と撤退していくんですよね。私はそれでも続けていたら、気づいたら「日本最大級」を名乗れる状況になっていた。競合がほとんどいなくなったということでもあるんですが(笑)。

AIイベント特化プラットフォーム Weabee の誕生

メディアを続けていると、訪れるユーザーが「何を物足りなく感じているか」が見えてきます。AIツールを調べに来る方は、当然 AI に興味があって学びたいという人たち。でも最近は、AI の時代にこそコミュニティが大事だという話が出てきています。

誰が言っている情報なのか、信頼できる人が集まっているのか。文章力もマーケティングも AI が代替できるようになってきた今、AIだけでは代替しにくい価値があるのが、人と人とのつながりやコミュニティだと思っています。

そこで作ったのが、AIイベントに特化したプラットフォーム「Weabee(ウィービー)」です。Peatix や connpass、海外の Luma といった既存のイベントプラットフォームは何でも OK なんですが、Weabee は AI というカテゴリが親カテゴリとして絶対に必要という設計にしています。

神戸市との取り組みが教えてくれたこと

昨年度、神戸市の事業として「こうべデジタル活動部」という学生向け AI イベントを毎月開催しました。学びたい学生と、AI や DX について教えられる企業・団体をつなぐ場を作るという取り組みです。

ただ、東京と比べると関西でのオフラインイベントは集客が本当に難しいと感じました。そこで気づいたのが、全国各地の自治体や地域団体が面白いイベントを開催しているのに、自分たちのサイトの中でしか告知していないという課題です。学生からすると、そのイベントを見つけることがそもそも難しい。

Weabee は、主催者・参加ユーザー・自治体や施設という 3 者が一度に集まれる場所を目指しています。いずれは全国 47 都道府県のイベントを拾っていきたいと思っています。

「顔が見える」ことが、AI時代の最大の強みになる

メディア・研修・開発を一気通貫で

弊社 AIリスキル株式会社の事業は、大きく 3 つです。AIツールギャラリーや Weabee といった個人向けのメディア運営、企業・自治体向けの AI 研修・セミナー、そして AI を活用したシステム開発(AIアバター受付・デジタルサイネージなど)。さらに Felo・Skywork・AKOOL・Raccoon AI といった国内外の AI サービスのアンバサダーとして、コンテンツマーケティングの仕事も手掛けています。

顔を出す発信が、信頼のベースになる

AIの時代は似たようなサービスがたくさん存在します。そういう中で弊社が選ばれる理由として、「分かりやすく信頼してもらいやすい」という点があると思っています。大阪・関西万博公式プログラム「メタバース・XR・AIアワード」の「AI HEROES COLLECTION」にて司会進行を担当させていただいたり、MBS の「せやねん!」「よんチャンTV」に出演させていただいたり、神戸市の事業を受けたり、大学への AI 講座を提供したり——そういった実績を、私が顔出しで発信し続けているんです。

問い合わせしてくる方から見ると、「この人に頼んでみよう」と思ってもらいやすい。それがスタートアップでもやっていける理由のひとつかなと。

学生へのメッセージ——人と会い続けることが、すべての基盤になる

「これだけは得意」を持っている人が輝いて見える

大学生の皆さんも、AI のせいでいろいろ考えることが増えている時代だと思います。でも私が周りを見ていて感じるのは、「これだけは自分が得意だ」というものを持っている人は、やっぱりどこか輝いて見えるんですよね。

情報に踊らされることも多いですが、昔から変わらないシンプルなことを大事にしている人が意外と強い。例えば私は最近、訪問して挨拶しに行くことを意識しています。オンラインが当たり前の今だからこそ、直接会いに行くことが思わぬ仕事につながったりするんです。

人とたくさん会うことが、一番の武器になる

今の時代、人とたくさん会っている人の方が有利だなとすごく感じています。いろんなコミュニティに顔を出して、いろんなことを吸収していく。それがどんな仕事にも生きてくると思うので、ぜひ動いてみてほしいですね。

海外旅行も好きで、去年は何か国か回ったんですが、お金もかかるし仕事も忙しいしでストレスもあります(笑)。でもやっぱり行くたびに世界が広がるというか、趣味が増えて人として面白くなれる気がする。「人として面白い人は、何をしても面白い」と思っているので、まずは楽しめることをやってみてほしいです。

編集後記

山原さんのお話を伺って、まず感じたのは「繋ぐ」ことへの一貫したこだわりです。学生時代の部長・学園祭委員から、人事、フリーランス、そして今の事業まで、常に「全体を見てまとめる」ポジションを選んできた。AIツールギャラリーや Weabee も、ツールとユーザー、イベント主催者と参加者、自治体と学生——あらゆる関係者を繋ぐプラットフォームとして設計されています。AI が急速に普及する中で「コミュニティこそが人間の強み」と語る言葉には、単なる流行への反応ではなく、長年のご自身の経験から来る確信が宿っていました。私自身も、まず動いてみることの大切さを改めて感じた取材でした。