インタビュー

「もっと、面白く」に終わりはない。双子ではじめたcolyが、エンタメで「心の居場所」をつくるまで

更新: 2026年9月17日
「もっと、面白く」に終わりはない。双子ではじめたcolyが、エンタメで「心の居場所」をつくるまで
PROFILE
株式会社coly 代表取締役社長 代表取締役副社長
中島杏奈 中島瑞木

双子ではじまった会社

留年で1年遅れた

(杏奈)私は大学を留年しているため、社会に出るのが1年遅れています。また当時は何か特別な活動に打ち込んでいたわけでもなく、週5でアルバイトしたり、本を読んだりして過ごす普通の大学生でした。

IT企業でのアルバイトで火がついた

(杏奈)先に瑞木がIT企業でアルバイトをはじめました。大学2年生のときなので、かなり早かったと思います。私はあとから続く形で入りました。そこでインターネットの楽しさに気づいてしまったんですよね。

(瑞木)同時に、自分たちで事業を始めることに興味を持ち始めたのも、あの時期でした。

始発で通ってカップラーメン

(瑞木)私たちはどちらかというとエネルギーを持て余しているタイプで、アルバイトが楽しくてしょうがなかったんです。そんな必要もないのに始発で新宿のオフィスへ行って、8時間は超絶集中して働いていました。

(杏奈)ご飯を食べに行く時間ももったいなくて、デスクでカップラーメンを食べて……。お金のためでもなくて、オンライン上に大勢の他者がいることを実感できる、異様な集中と楽しさがあったことを覚えています。

お互いが一番の理解者

(杏奈)私たちは一卵性双生児ですが、性格がまったく同じというわけではなく、半分くらい似ている感覚でしょうか。それでも二人でやっている理由はシンプルで、仕事においてはお互いが一番の理解者だからです。気づけば30年以上一緒にいるので、二人で話していると、他の人とは普段あまりしないような抽象度の高い話でもどんどん進んでいきます。

喧嘩はマラソンで決着

(杏奈)もちろん喧嘩をしないわけではありません。初期は揉めることもありました。どちらの貢献度が大きいかという創業者同士のあるあるです。

決着のつけ方が、家から最寄り駅までの往復2kmのマラソンです。徒歩15分ほどの道を走って、先にゴールしたほうの言うことを聞く。結果は私が勝ちました。

(瑞木)杏奈は当時、大学の友人と100km走ったり、フルマラソンに行ったりと熱心に頑張っていたんです。さすがに不利でしたね。

(杏奈)でも走ったら勝ち負けがどうでも良くなってしまって。明日からまた一緒に頑張ろうねとなんだか爽やかな気分で帰りました。

3人目の創業メンバーの参画、そして念願の起業へ

(杏奈)そうやってなんだかんだ必死に道を切り拓いていくうちに、3人目の創業メンバーが仲間に加わり、正式な起業へと至りました。

女性向けエンターテインメントという選択

きっかけは友人の一言

(瑞木)女性向けに目を向けた直接のきっかけは、IT企業でアルバイトをしていた時代の友人の一言でした。

(杏奈)もともとエンタメ業界や出版には、めちゃくちゃ興味がありました。その流れで女性向けコンテンツにも目を向け、改めて作品に触れてみると、このジャンルならではの魅力や価値を深く実感しました。そこからは、本当に良いものを作りたいという思いで取り組むようになりました。 

3人が中心となって1年かけた一作目

(杏奈)マーケットとして成長の可能性を感じる一方、少人数でも勝負できる領域だと考えました。ただ、本質的には、自分たちが良いと思えるものを作ることを何より大切にしていました。もう一人の社員の方と合わせて3人を中心に一生懸命に開発を進め、約1年後に最初のタイトルをリリースしました。 

恵まれたのは人と市場

(瑞木)そこから上場まで来られた理由を聞かれると、本当に人に恵まれたという言葉に尽きます。マーケットに恵まれたのが大前提としてあって、そのうえで一緒に作り上げてくれる方々との時間をいただけました。

ビジョンは「もっと、面白く」

誰かの人生に寄り添える価値があるか

(杏奈)売れるかどうかだけではなくて、お客様の時間や人生に本当に寄り添えるものか、その時間に値するものか。そこを全員が常に問い続けながらものづくりをすることが、弊社のベースにある考え方です。

預かっているのは時間

(瑞木)社員やクリエイターの皆さまの貴重な時間をいただいて作っているという意識も、とても大事にしています。普段からインプットしてくれていたり、家に帰ってからも考えてくれていたり。自分なりの愛情を持ってやってくれる人ばかりです。その気持ちに応えられる会社でありたいと思っています。

終わりのない改善

(杏奈)ビジョンは「もっと、面白く」です。ここには終わりがありません。改善し続けること、面白くし続けることを妥協なくやる。言葉にするとシンプルでも、続けるのが一番むずかしいところですね。敵は大抵自分自身ですね。

お届けした作品はお客様のもの

(瑞木)試行錯誤を重ねて一度送り出した作品は、お客様に楽しんでいただくものになります。ユーザー様ファースト、お客様ファーストという言い方になりますけれど、要はさらに楽しんでもらえるような運営を続けることが大事だと考えています。

絆や愛を正面から扱う

(杏奈)人間同士、あるいは人間と生き物、人間と世界との絆。信頼や愛、承認、自己承認、自己受容。改めて言葉にすると、少し照れくさい言葉かもしれません。それでも、人間にとって最も大切なことはここにあると考えています。だからこそ、IPやコンテンツで真正面から向き合っていきたい。その積み重ねで、colyを世界最高のコンテンツメーカーにすることが目標です。

感性を感性のままで放置しない

(杏奈)とはいえ、感性や信念は寝かせておくだけでは何にもならないので(笑)。結局は、まず手を動かして生み出そうとする、そのトライアンドエラーの集積がいちばん大事だと考えています。

「推し活」を明日の勇気に

「推し活」

(瑞木)「推し活」という言葉が世の中に浸透して久しいですが、弊社も創業以来、人が誰かや何かを心から好きになれる体験を、IPやコンテンツを通じて届け続けてきました。

見捨てないというメッセージ

(杏奈)作品を楽しむことで、現実を忘れて休憩するひとときや心が癒される時間を持っていただけたら、と思います。そのうえで理想を言えば、お届けしたいのは、キャラクターやこの世界はあなたを絶対に見捨てない、だからあなたもできればあなた自身を見捨てないでほしい、というメッセージです。

キャラクターとの出会いや物語の体験を通じて、「もしかすると自分も、自分自身を見捨てなくて良いのかもしれない」と感じてもらえる。それが、一歩踏み出す明日の勇気につながる。そうした体験をお届けできたら、それが私たちにとって何よりの喜びです。

これから進む人たちへ

双子ならふたりでまずやってみる

(瑞木)双子は1%いるという統計があるので、まず1%の、私たちと同じような双子に生まれた皆さまへ。相方と何がやりたいかを話して、二人でやったほうがいいと思えることをやってみてほしいです。ゲーム作りでも絵を描くことでもいいですし、なかには起業する人がいてもいいと思います。お互いの考えが通じ合う確率が高いので、うまくいく可能性が高い気がするんですよね。

関係性は大きな宝

(瑞木)双子でない皆さまにも、このメッセージは自信を持って届けたいです。本当に信頼できる相手がいるのであれば、一緒に何かに挑戦してみるのも一つの選択肢です。人間関係というのは非常に大きな宝のひとつなので、その力を生かさない手はないと思っています。

入場チケットはインプット量

(杏奈)エンタメ業界に興味があるなら、とにかくめちゃくちゃインプットして、アウトプットを出しまくるのが、現実的にかなりよい方法だと思います。

私なりの観察によると、お仕事をさせていただく尊敬するクリエイターの皆さまは、小さい頃からのインプット量とそれに関する思考量が半端ではないように感じます。当たり前に24時間稼働のような。だから、この業界で頭角を表したいのであれば異常なインプット量が入場チケットになるのではないか、という感覚を持っています。

留年などで焦っている学生さんへ

(杏奈)留年している人は10%くらいいるそうです。私自身の拙い経験から言えば、留年は物理的に時間をもらえるということでもあるので、幸運な時間を手に入れたと思って有効活用したらいいと思います。人生100年時代ですから、最短距離で達成することよりも、私自身は、大きなビジョンを時間をかけてみんなと実現していくやり方を選んで行きたいです。……とはいえ、遠回りすると焦ってしまう気持ちも、もちろんわかるのですが。

colyという会社について

エンタメの力を信じている

(杏奈)エンタメの会社は数多くあります。そのなかで弊社は、エンタメの力をピュアに信じ、それを経済的な継続性と両立させることに正面から取り組んでいる会社です。エンタメへの思いを持っている方にとって、力を発揮しやすい場所だと思っています。

数字とビジョンは両輪

(杏奈)上場企業である以上、数字は必ず出す。その上で、ビジョンも決して手放さない。両方をきちんと考えられる方にとっては、やりがいの大きい環境です。どちらか一方だけでは、しんどいと思います。

愛や絆を掲げているからといって、実務が甘くていいわけではありません。むしろ、目に見えない価値を掲げるからこそ、ベースは誰よりも厳しくないといけない。成果を出し続けた者にしか堂々と語れないビジョンだと思っているので、その両立を高いレベルで実現し続けることに、常に取り組んでいます。

自信をもってお届けする作品たち

(瑞木)コンテンツは、社内外のクリエイターの本気が詰まったものばかりなので、ぜひ触れてみてください。今年10周年を迎える『スタンドマイヒーローズ』は、個性豊かなヒーローたちとの絆をドラマチックに描いた女性向けゲームです。800万ダウンロードを突破した『魔法使いの約束』は、21人の魔法使いたちと紡ぐ重厚な世界観と物語が多くの方に支持されています。5月に2周年を迎えた最新作『ブレイクマイケース』は、音楽をテーマにした新しい体験と心に迫るストーリーが魅力の作品です。colyの創業初期から携わってくださっているクリエイターの方々が手掛けてくださった作品もあります。正直、全部おすすめですね。ディズニーIPを使用した新作スマートフォンゲームも現在リリース準備中です。

Life with coly

(杏奈)今年は「Life with coly」という標語を掲げています。人生や日々の暮らしに長く寄り添い、お客様の心に寄り添い続けられるコンテンツやIPを届けていきたい、という思いを込めています。

コンテンツが次々と生まれる時代だからこそ、時間軸での蓄積や、オフラインとオンラインを問わず人生に寄り添い続けることの価値は、これからますます大きくなっていくと思っています。だからこそ、お客様と一緒に年を重ねていきたい。流行り廃りではなく、世代を超えて受け継がれていくような作品を、届け続けたいと考えています。

ものづくりへの情熱がある人たち

ここからは、広報担当からカルチャーの話を少しだけ。

弊社は、ものづくりに情熱のある人たちが集まっている会社です。社員の7割が女性で、若手も多く活躍しています。役職に関係なく意見を交わしやすく、率直にコミュニケーションできる文化があります。

若いうちから挑戦できる環境だからこそ、新しい才能との出会いを楽しみにしています。コンテンツやIPが好きな方、誰かの「好き」を生み出す仕事に挑戦してみたい方と、ぜひ一緒に働けたら嬉しいです。 

編集後記

「輝きたかったら異常なインプット量が入場チケット」という言葉が、取材のあいだずっと頭に残っていました。学生なりに事業をかじっていると、つい発想の新しさばかりを気にしてしまいます。それより先に、浴びるほど触れてみる。その順番を教えてもらった気がします。留年や遠回りをチャンスと言い切る姿勢にも驚きました。効率的に進むことばかり考えていた自分には、少し肩の力が抜ける時間でした。エンタメの力を信じることと、上場企業として数字を出すこと。その両立の大切さを笑いながら話すお二人の姿が、一番かっこよく見えました。