インタビュー

「行きたい星に、行ける時代を。」浜松発・株式会社ALTILANが描く宇宙ビジネスの未来

「行きたい星に、行ける時代を。」浜松発・株式会社ALTILANが描く宇宙ビジネスの未来
PROFILE
永利 光 代表取締役CEO
永利 光

創業の道のり

東京から浜松へ

会社をつくったのが2024年の5月なので、いまちょうど3期目に入ったところです。もともと就職活動のときから、将来的に自分のやりたいことを実現できる環境をつくりたいという話は、当時の社長にもしていました。どこかのタイミングで自分の会社を立ち上げたい、そういう会社をつくりたいという思いは、もとからあったように思います。

直接的なきっかけになっているのは、浜松との出会いです。弊社(株式会社ALTILAN)は浜松で登記して創業していますが、私自身は東京生まれ東京育ちで、もともと浜松に何か関係があったわけではありません。当時就職していた会社が地方に拠点をつくる方針を打ち出す中で、浜松にも拠点をつくろうという話になり、「お前も行ってこい」ということになったのが、大きな転機でした。

挑戦の芽が見えた

弊社は、当時勤めていた会社のグループ会社として立ち上げました。いまも同じグループの一員です。はじめから会社をつくる前提で浜松に来たわけではありません。ただ、浜松でいろいろと動いてみるうえで、自分が思っていたことや、やりたいことへの挑戦がもしかしたらできるかもしれないという可能性が見えてきて、それで創業に至りました。

宇宙ビジネスの入り口をつくる

参入支援から、ものづくりへ

弊社の母体になっているのは、新規事業開発におけるコンサルティングと、実行支援までを組み合わせる会社です。考えるだけでなく、自分たちで手を動かして事業をつくるところまでコミットする、その流れや強みを弊社も引き継いでいます。

宇宙ビジネスへの参入を考えている企業に対して、事業を「企画」と「実行・開発」に分けるとすれば、企画の部分を中心にお手伝いする、というのが弊社のスタンスです。ただ、そこだけであれば既存のコンサルティングファームに任せればいいという話になってしまいます。だからこそ、自分たちでも事業をつくろうと考えていて、その一つの形として、人工衛星の開発にも取り組み始めています。

裾野を広げる文化活動

ものづくりだけでもありません。宇宙にロマンを感じてもらうだけで終わらせず、自分もやってみたい、やれるかもしれないと思ってもらえるかどうかが大事だと考えています。そのために、若い世代をはじめとしたいろいろな人たちが宇宙を応援したくなるような取り組みも進めていて、最近は美術作家と組んでアート作品を制作するといった、文化的な活動にも力を入れています。

静岡という土地の可能性

余白の大きさが可能性になる

伸びしろはたくさんありますが、それは言い換えると「可能性」でもあると思っています。

静岡という地域は、これまで宇宙との接点が大きくはありませんでした。そのぶん、宇宙という選択肢が地域の議論に上がる場面もほとんどなかった。静岡は自動車をはじめとするものづくりで力のある地域で、製造品出荷額は全国でも上位に入ります。2023年は愛知に次ぐ2位でした。足元の産業が強い地域ほど、次の柱を今から仕込む余白も大きいと思っています。

宇宙は、その余白にまだ手がついていない領域です。なぜ今なのか、なぜこの土地なのか。そこを一緒に描いていくことが弊社のミッションで、それが根づいた地域は、これから先とても強い地域になるはずです。

行きたい星に、行ける時代を。

スターウォーズのような世界観

弊社のホームページのトップにも掲げているとおり、「行きたい星に、行ける時代を。」というのが、弊社のビジョンです。国内で宇宙ビジネスを手がける会社は、この数年で相当に増えました。宇宙はまだ儲かりづらいと見られている領域なので、足元の事業をどう立ち上げるかを先に置く会社が多い。それは、産業を成り立たせるうえで欠かせない役割だと思っています。

弊社が引き受けているのは、その隣にある役割です。遠い到達点を先に掲げて、そこから逆算する。

弊社が本当にやりたいのは、スターウォーズのような世界観に近いところです。あの星に行ってみたい、面白そうだと思ったときに、行ける時代をつくりたい。これは私たちの世代だけで完結する話ではありませんが、次の世代に向けてやれることをやった結果として、その時代に少しでも近づいたと言えることが、大きな意味を持つと考えています。いろいろな人たちが宇宙に目を向けてくれること、次の世代がもっと宇宙に挑戦したいと思ってくれることが、最終的な狙いです。

ストーリーを武器にする

言葉にする力が強み

弊社の強みとして、少しずつ形になってきているのが、言語化していくことや、ストーリーを組み立てていくことです。人工衛星の開発も、製造を担う浜松の中部日本プラスチックさんとMOUを締結して進めています。そのなかで、弊社が担っているのは、どのように人を巻き込んでいくか、それが最終的にどのような事業につながっていくかを設計する部分です。

アートの活動もそうで、2025年11月の種子島宇宙芸術祭には、美術作家の山上渡さんとの共同名義で『未知の無知 − タイタン』という作品を出展しました。

造形の主体は山上さんで、私も現地で手を動かしましたが、一番の持ち場は小説の執筆でした。

将来の宇宙がこういう世界だったらワクワクするのではないか。その世界観を広げるための道具として『POINT NEMO』という小説を書いていて、それが弊社の強みであるストーリーづくりの一つの形になっています。

就活生へ伝えたいこと

自分と向き合う時間

就職活動は、自分と一番向き合う時間だと思っています。私自身、就職活動で受けた会社はほとんど落ちましたし、一番行きたかったところにも行けませんでした。そのときに、自分の人生を一度見つめ直したことが、今も考え方の中心にあります。仕事が始まってからは、内省する時間をまとめて取ることがどうしても難しくなります。だからこそ、就職する前は、自分が何をやりたいのか、どういう人でありたいのか、会社に入ることをゴールにせず、最終的に何を実現できていたら納得できるのかを考えられる、大きな機会だと思います。

すごい人たちに会う

学生のうちに必要なことの一つは、自分よりすごい人たちに、どれだけ会えるか、見られるかだと思います。同じような環境にいると、自分の位置は案外わからなくなります。気づきにくかったり、見ないふりをしてしまったりすることもあるかもしれません。でも、世の中にはすさまじい人たちがたくさんいます。その人たちになりたいでもいいし、追いつきたい、追い越したいでもいいし、違うやり方をしたいでもいい。そうやって、自分の現在地をちゃんと測れるようになることが、大事だと思っています。

編集後記

今回のお話で印象的だったのは、「危機感のなさ」を課題ではなくポテンシャルとして語る視点でした。恵まれた地域だからこそ生まれる余白に、宇宙という遠い領域から挑もうとする姿勢に、新規事業というものの本質を見た気がします。ビジネスとアート、両方の手段で「行きたい星に、行ける時代を。」に向き合う永利さんの姿勢は、就職先を条件で選びがちな私たち学生にも、大きな問いを投げかけてくれました。