インタビュー

下請けから独自ブランドメーカーへ。300年続く会社を目指す挑戦

下請けから独自ブランドメーカーへ。300年続く会社を目指す挑戦
PROFILE
株式会社 アルナ 代表取締役
雪山大

株式会社アルナで代表取締役を務めている雪山大です。本社を埼玉県川口市に、工場は鹿児島県薩摩川内市に置いています。アルミ製額縁を中心とした額装品の製造・販売をおこなっています。プロ野球全12球団への納品実績もあり、身近なところで弊社の製品を目にしている方も多いのではないでしょうか。

文具メーカーの下請けから始まった

私の父はかつて、文具メーカー様向けにアルミ製額縁を作る下請けのような仕事をしていたそうです。そして、そこから独立する形で、「アルミ製額縁を作る会社を起業した」と聞いています。それが弊社の始まりです。

木目調でも強度は落ちない

弊社は創業以来、ずっとアルミ製の額縁を作ってきました。ただ、アルミ製の額縁といっても写真や絵を入れる額縁だけではありません。弊社の特徴は、ユニフォームやボールなど立体的なものを飾るためのケースなども作っているところです。素材がアルミのため、大きなサイズになっても強度を保てますし、額縁の上に木目調のフィルムを貼る技術も持っているため、さまざまなところでご活用いただいています。

1社目で学んだビジネスのリアル

家業はすぐに継がなかった

大学を卒業してすぐに親の会社に入るより、ほかの会社を経験しておくことが絶対に必要だと思いました。弊社はメーカーですが、私の親族が額縁の小売店を営んでいたこともあり、違う角度から家業を見てみようと思い立ちました。就職したハンドバッグの専門商社では、自社で企画した商品を百貨店で販売していたことから、製造と小売の両方を学べると考え、その会社に勤めることを決めました。

理不尽も学びだった

企業と得意先、あるいは仕入れ先の関係は、理想的には対等であるべきだと思います。ただ実際は、企業規模や売る側・買う側の関係で「対等になること」はほとんどありません。学生の頃は、「企業同士は対等な関係である」という理想的なイメージを持っていましたが、実社会に出て、いざメーカー側の立場に立つと、百貨店のバイヤーや売り場担当者に、言いたいことをなかなか言えないこともありました。

私が新入社員だった頃は、今と比べてコンプライアンスという言葉も浸透していなかったため、理不尽なことも多かったです。「当時はそれが当たり前だった」と言うと良くないかもしれませんが、「実際のビジネスには理不尽な面もある」と理解できたことは、大きな経験だったと思います。

薄利多売からの脱却

二人代表制からのスタート

私が弊社に入社した当初は、利益が出ていない会社でした。いわゆる「薄利多売」の会社だったこともあり、「これでは儲からないだろう」という取引条件や仕事のやり方が多く残っていました。ハンドバッグ会社で身につけたやり方ともだいぶ違ったため、営業の仕方や会社運営方法などのギャップに、最初はかなりとまどいました。当時は父ともう一人、常務による「実質的な二人代表のような体制」でした。そのやり方に違和感を持ち、常務とはよく話をしましたが、社長の息子とはいっても、入社1年目の私と彼とでは、思うように話がかみ合いませんでした。

常務の独立とライバル化

その後、常務は営業の主要メンバーとともに独立し、弊社と競合する会社を立ち上げました。弊社の商品や取引条件を熟知した相手との価格競争に直面し、一時は顧客が流れるなど厳しい状況が続きました。しかし、もともと利益率が低い中で、さらに価格競争を続けても事業は成り立ちません。この経験が、利益の出る経営体質への転換を決意する大きなきっかけとなりました。

「やらないこと」を決めた再建

利益の出ない仕事はやめた

この一件を機に、得意先や商品を見直す中で、まずは「やらないこと」を決めました。具体的には、「利益が出ない商品は作らない」、「利益が出ない得意先には売らない」などです。当時は、営業担当の社員がハイエースなどのワゴン車に商品を積み、納品や回収をしてくるなどの「昔ながらのやり方」も多く残っていました。しかし、私はそれらも見直しました。「絶対にやらないこと」を決めて、会社自体を「少しずつでも利益が出る体質」へと変えていったのです。実際、私が弊社に入って感じたのは、「あまりにも無駄が多いこと」でした。正直に打ち明けてしまえば、当時は無駄な仕事だったり、利益の出ない商品や得意先だったりが多く残っていたのです。特に、価格設定や掛け率については、適正な価格で商品価値を伝えることよりも、「とにかく安くすることが営業だ」という感覚が強かったのだろうと思います。そのため、元常務の会社との一件も経て、「このままでは弊社も成り立たなくなる」という危機感のほうが大きかったのだと思います。そして、ある程度会社を立て直したあとは、外部のデザイナーと組んで、「デザイン性のある新商品を作る」など、ほかの経営者と同じように、新しいことにも取り組めるようになりました。

300年続く会社を目指して

売上より継続を選ぶ

私の目標は、売上の規模を拡大していくことではなく、「長く継続する会社にすること」です。弊社は来年で60周年を迎えますが、その5倍の「300年続く企業にしたい」という目標があります。そのために、今は従業員満足度を高めることに力を入れていて、ホワイト企業認定や「埼玉を代表する企業100選」など、さまざまな賞をいただけるようになりました。一気に成長させるのではなく、「前年よりも着実に成長していける企業にしたい」と考えています。さらに、今後は日本国内だけでなく、海外にも進出していきたいと考えています。

「アルナ国際版画ビエンナーレ」開催を目指して

弊社工場のある鹿児島県薩摩川内市の方々とも、良い関係を築けています。2028年には、弊社主催の版画コンクールを開催する予定です。現在進めている工場のリニューアルでは、ギャラリーの設置も計画しています。コンクールで入選した作品をそのギャラリーに飾り、「工場見学」という形で地元の方にも見に来ていただきたいですし、版画を通じて若手の育成や額縁・絵に興味を持ってくれる方をひとりでも多く増やしていければと考えています。

プロ野球全12球団への納品実績が生む誇り

「従業員満足度を高める」といっても、福利厚生を充実させたり、給与水準を高めたりすることだけが重要ではありません。従業員ひとりひとりが「自分の成長を感じられる」ことや「楽しんで仕事ができること」が大切だと思っています。実は弊社は、ユニフォーム額をはじめとする「メモラビリア関連製品」をプロ野球全12球団に納品した実績があります。もちろん、プロ野球だけでなく、JリーグやBリーグ(日本の男子プロバスケットボールリーグ)のチームとも取引があります。事実、大谷翔平選手やサッカーのアルゼンチン代表として活躍したメッシ選手のサイン入りグッズなど、著名な選手に関する品の額装依頼をいただくこともあります。そのため、絵が好きな方だけでなく、スポーツが好きな方にとっても、仕事のやりがいや魅力を感じやすい会社であると思います。いわば、「仕事を通じて好きなスポーツや選手に関わる」という、他社では得がたい経験を積むことができます。「ファンである選手やチームのグッズを扱いたい」という社員の提案や新規開拓への挑戦も、会社として積極的に応援しています。こうした形で「やりがいを提供し続けること」は、今後も大切にしていきたいと思っています。

女子七種競技の元日本一

弊社には、女子七種競技(100mハードル・走高跳・砲丸投・200m走・走幅跳・やり投げ・800m走の7種目を2日間に分けておこなう陸上競技)において、学生時代にU20日本チャンピオンに輝いたことのあるアスリート社員がいます。埼玉県には、「学生時代に良い成績を残したものの、マイナー競技であることが理由で、大学卒業後に競技を続ける環境がないアスリートと中小企業をマッチングする」取り組みがあり、その縁で入社したのが彼女です。彼女は日々のトレーニングと並行して、広報の仕事を行っています。日本一を経験した彼女の姿勢や言動は、ほかの社員にも良い刺激を与え、モチベーションの向上にもつながっています。

学生へのメッセージ

悩んだら一歩踏み出す勇気を持つ

就職活動ではさまざまな基準で判断に迷うことも多いだろうと思います。そうは言っても、「失敗を怖がらずに一歩踏み出すこと」が大切です。悩んだのなら、足踏みするのではなく、いろいろな人に話を聞いてみるのも方法ですし、実際に行動してみるのもありだと思います。なにはともあれ、一歩踏み出すことが大切だと信じています。

編集後記

今回、株式会社アルナの雪山さんにお話をうかがい、ものづくりの会社が代替わりで直面した現実の厳しさを知ることができました。二人代表制からの独立劇やそこからの立て直しのお話はとても印象的でした。「売上より継続を大切にする」という考えのもと、300年企業を目指す姿勢からも、経営者としての覚悟を感じました。就活生へのメッセージにあった「一歩踏み出す」という言葉を私自身も忘れずにいたいと思います。貴重なお話をありがとうございました。