十代からプラットフォームと向き合ってきた
大学一年で起業サークルへ
私が最初にビジネスの世界に触れたのは、大学一年生のときでした。もともと起業志向が強く、大学に入る前からそういう考え方を持っていたと思います。当時、東京大学の学生起業サークルに入ったのですが、これがちょうど学生起業家という存在自体が過渡期にあったタイミングでした。今のように支援体制が整っているわけでもなく、周りの理解もそこまで得られる環境ではなかったですね。
同期には、のちに大きく事業を伸ばしていった仲間もいて、今振り返るとおもしろい世代だったなと思います。大学一年生から二年生にかけては、サークルの同期と一緒に、当時はやり始めていた街コンのようなイベントビジネスをしばらくやっていました。
GMOでの一年で学んだこと
大学二年生の途中から、GMOペイメントゲートウェイ株式会社という決済代行系の会社でインターンをさせていただきました。これは一般的なインターンとは少し違って、完全に紹介制で入る一枠のみのポジションで、自社のデジタルマーケティング予算をまるごと任せてもらうという、非常に密度の濃い経験でした。ここで広告運用やコンテンツマーケティングを一通り学ばせてもらい、それが今の自分のベースになっています。
その後、友人がやっていたデザイン・UXの会社を手伝う時期があり、その会社は私が離れたあとに売却され、さらに売却先も売却されて、最終的にGMOグループに入ったと聞いています。二十歳前後まではそうしてデジタルマーケティングにどっぷり関わっていた時期だったと思います。
二十二歳での起業
その会社を一年ほど手伝ったあと、二十二歳になるタイミングで独立し、会社を立ち上げました。これが現在も代表を務めているデジタルマーケティング支援の会社で、今年で十一期目になります。最初は私自身が広告運用やSEO、SNS運用まで手を動かしながらやっていて、それが二十代前半から半ばにかけてのことです。
エニアドは、その会社からちょうど二年半前に方針を完全に分けるかたちで立ち上げた会社です。最初はミニマムに立ち上げてPOC(検証)をしながら、しっかり大きくしていけそうだと確信できた段階で、資本関係も整理したうえで分社化しました。
ゴルフ場という「唯一無二の媒体」
ゴルフ場に絞った理由
もともとは、ゴルフ場だけでなくスポーツジム、大手百貨店、レストランなど、いろいろな場所にデジタルサイネージを導入して広告として展開していました。ただ、今はゴルフ業界に大きく絞り、そこをバーティカルに掘っていくという戦略に舵を切っています。
ゴルフというフィールドは、富裕層や意思決定権を持つ方に直接アプローチできる、非常に稀有な場所だと考えています。属性がしっかり絞られた形でリーチできる媒体自体がまだ少ないので、そこの課題を解決しようというところからスタートしました。
一兆円規模の市場
意外と知られていないのですが、ゴルフのプレー金額だけで見ても国内で年間九千三百億円ほどの市場規模があります。用品市場もあわせると三千億円ほど積み上がるので、かなり大きな、そしてレガシーな業界です。もともと私たちが狙っていたデジタルサイネージ市場自体は三千億円規模でしたが、ゴルフ業界に絞ることで、そこに広告事業と業界内での事業展開という二つの軸を持てるようになりました。
一方で、ゴルフ場自体はピーク時の約二千三百五十コースから、現在は約二千百コースまで数を減らしています。人的資源や機能が不足していて、施設や来場者という資産をうまく収益化できていないゴルフ場が非常に多い、というのが見えてきた課題でもあります。
泥臭く広げた百コース
事業を始めて三年以上、最初は本当に何のつても人脈もない状態からのスタートでした。私ともう一人、二名だけで関東のゴルフ場に片っ端から電話をかけたり、ゴルフ関連のイベントに参加したり、とにかく足を使って泥臭く歩き回っていました。
国内二千百弱あるゴルフ場のうち、少し前までは設置ベースで五十コースほどでしたが、そこから数ヶ月で百コースを超え、二〇二六年八月末時点では契約ベースで百四十コースを超えています。まだ「ゼロイチ」とは言い切れませんが、0.1くらいのフェーズまでは進んできた実感があります。
広告はどう届くのか
広告は、ゴルフ場に設置した大型・小型のデジタルサイネージを通じて配信するのが基本のプランです。エントランスやレストランなど、実際に来場者の目に触れる場所に展開しています。単にサイネージで見せて終わりではなく、アンケートに答えていただくところまでつなげる設計にしているので、八割強以上の方に見ていただける媒体になっていると感じています。
すでに関係を築けているゴルフ場も多いので、受付でのサンプリングや、売店の一角に商品棚を置かせてもらうといった展開もできますし、こういうアイデアがよさそうだとなれば、すぐにPOCをして、良ければ一気に横展開する、という柔軟な環境があります。
富裕層マーケットで「プラットフォーマー」を目指す
認知から購買までを一体化させる
もう少し広い視点で見ると、世界ではすでに貧富の差が広がっていて、日本もその流れに乗ってきています。日本の人口自体は減っていますが、一億円以上の資産を持ついわゆる富裕層の数は、むしろ純増しているマーケットです。ここに向けてサービスを提供していくことの重要性は、これからより一層増していくと考えています。
デジタルマーケティングを長くやってきた身として感じていたのは、デジタルは「刈り取り」、つまり最終購買を取るところに強く、マス広告は「認知」を取るところで終わってしまいがちだという課題です。私たちが運営するメディアでは、この認知と購買をより一体化させ、その場で気に入って実際に使っていただく、購入していただくところまでつなげていきたいと考えています。
メガプラットフォーマーへの思い
事業としては国内だけでなく、海外への展開も見据えています。人口減少の中でも純増している富裕層マーケットに軸足を置きながら、事業を広げていきたいという思いが根底にあります。
もともと十代の頃からグーグルなどのプラットフォームを使ってビジネスをしてきたのですが、ある時から「使っている」というより「使われている」のではないか、という感覚を持つようになりました。だからこそ、自分たちで理想のプラットフォームを作っていきたいという思いが、この四年ほど構想の中心にあります。メガプラットフォームの顔色をうかがい続けるのは、チームのメンバーにとってもしんどいことだと思うので、私たち自身がしっかりとプラットフォーマーとして動いていきたい、という思いは、事業の立ち上げ時から変わっていません。
やりたいことがあるなら、手を出してみる
今は挑戦しやすい時代
私が起業サークルに入ったのは十五年ほど前で、学生起業家という存在自体がまだ過渡期だった時代です。今は当時よりもずっとサポート体制が整っていて、周囲の理解も得やすい環境になっていると思います。AIなどの技術も含めて、過去よりもお金をかけずに何かを始めやすい時代でもあるので、やりたいことがあるなら、まず積極的に手を出してみるのがよいと思います。きっちり決めきらなくても、やっていく中で見えてくるものは、やっていないときの十倍、百倍も違うはずです。挑戦したい思いがあるなら、迷わずやってみてほしいですね。
今が一番おもしろい時期
事業の市場ポテンシャルは先ほどお話ししたとおりですが、今はちょうど拡大期に入っていて、やれることがどんどん増えている時期です。だからこそ、広告営業やゴルフ場の開拓、自社のマーケティング、商品企画など、各所で本当に手が足りていません。すでにゴルフ場百コース以上とコミュニケーションが取れているというアセットはそろっていますが、そこで何をやるかはまだ固まりきっていない部分も多いので、これから決めていくことができる環境です。やりたい、経験したいという気持ちがある方にとっては、これからの一、二年が一番楽しい時期になると思うので、興味を持っていただけたらぜひ声をかけてほしいです。名門のゴルフ場ともつながりがあるので、ゴルフができる機会も多いのも、ひとつの魅力かもしれません。
編集後記
今回のお話を伺って、ゴルフ場の市場規模が一兆円近くにのぼると知り、驚きました。学生起業サークルの黎明期から現在まで、常に「自分たちでプラットフォームを作る」という軸がぶれていないところが印象的でした。富裕層マーケットという視点や、地道な営業からわずか数ヶ月で導入コースを倍増させたお話は、これから起業を考える学生にとっても、大きなヒントになると思います。貴重なお話をありがとうございました。