インタビュー

誰かの基準で生きるのをやめたとき、人生は動きはじめた

誰かの基準で生きるのをやめたとき、人生は動きはじめた
PROFILE
CuoRelease 代表
廣田左希子

創業の経緯

「35歳で独立する」と25歳の自分に約束した

大学を卒業して社会に出てしばらく経った25歳の頃、私は「10年後の35歳で独立しよう」と心に決めました。当時は飲食店で働いていたのですが、仕事の中で最もやりがいを感じていたのが、スタッフの育成でした。一緒に働くアルバイトの方たちが、一生懸命仕事を覚え、お客様に笑顔で丁寧な接客をするようになっていく。そして、就職活動の際に「ここで働いた経験が、自信を持って面接で話せました」と言ってもらえる。人が成長していく姿に関わることに、大きな喜びを感じていました。その経験から、「いつか独立して、人を育てる仕事がしたい」と思うようになりました。当時思い描いていたのは、サービスの世界で活躍したい人たちを育てるスクールをつくること。その目標に向かって、私は16年間、飲食の世界で経験を積んできました。

飲食一筋、16年間の武者修行

大学を卒業して最初に勤めたのは、大手飲食チェーンが手がけるレストランでした。そこでサービス業の楽しさや奥深さを知り、さらにサービスの質や技術、仕事に対する志を高めたいと思い、福岡の外資系ホテルへ転職。ホテルマンとしてサービス技術や心構えを学び、フレンチのフルコースサービスなど、様々な経験を積みました。その後、最も長くお世話になったのが、福岡を拠点とする食品・飲食会社です。本社に併設された店舗で店長を務めながら、毎年入社してくる新入社員の研修も担当しました。地方番組への出演依頼をいただくこともありました。約8年間お世話になった後は、未経験だった出張ケータリングのスキルを身につけるために東京へ。そして最後は、福岡の百貨店内にあるカフェで店長を務めました。振り返ってみると、飲食業界のさまざまな業態を、「いつか独立する」という目的を持って経験してきた16年間でした。

独立、そして10か月での区切り

慌ただしくも充実した時間を過ごしているうちに、あっという間に目標としていた35歳になりました。最初の1年間は会社にも事情を話して理解をいただき、会社員と経営者の二足のわらじでスタートしました。独立してはじめたのは、飲食店の経営です。日中は飲食関係のコンサルタントとして仕事をしながら、夜は福岡・春吉でダイニングバーを経営していました。当時は今ほどSNSが普及していなかったため、チラシを配ったり、お店の前に目立つ看板を出したり。地道に集客をしていました。会社員時代は、プライベーを後回しにして、仕事一筋で生きてきました。担当していた店舗の運営も全体的に順調で、中には経営を大きくV字回復させた店舗もありました。だからこそ、「飲食の経営なら、自分はできる」という自信を持って、経営者としてのスタートを切ったのです。ところが、現実は甘くありませんでした。「飲食店を運営すること」と「自分で事業を経営すること」は、まったく別のものでした。結果として、わずか10か月でお店を閉店することになりました。

どん底で見つけた、生きる理由

最初の飲食店経営に区切りをつけたとき、私は自信も、信頼も、お金も、仕事も失っていました。そして、ひとつだけ残ったものがあります。多額の負債です。個人ひとりで背負うにはあまりにも大きなものでした。そこから何年もかけて返済していくことになります。一度、自分の事業を休業し、ある会社で働かせていただいたこともありました。そこでいただいた手取り20万円を全て返済に充て、生活費は土日にアルバイトをしてまかなう。ほんの少し前まで、着物を着てお店に立ち、お客様と会話を楽しみながら仕事をしていた自分から、あまりにも大きな環境の変化でした。精神的にも、限界に近い状態でした。

未来が見えない。返済に追われる。「この先、自分はどうなってしまうのだろう」。そんな日々の中で、生きることを諦めようと思ったこともありました。けれど、ある日、自分の中で大きな転機となる出来事が起こりました。「もう終わりにしよう」と決めていたはずなのに、どうしても最後を迎えられないことが、いくつも起こったのです。そのとき、ふと立ち止まりました。「自分の決意とは裏腹に、なぜ私はここで終われないのだろう」長い時間、自分自身に問いかけました。そして、ある思いが浮かんできたのです。「もしかすると、私にはまだ、生きてやらなければならないことがあるのかもしれない」地獄のような日々を過ごしていた自分に課せられた「使命」とは何なのか。それを知りたい。それを知るまでは、もう少し生きてみよう。そう思った瞬間、私は再び顔を上げることができました。

 

コーチングとの出会い

そこから私は、「自分が生きている理由」や「自分の使命」を探すことに没頭しました。各地で開催されている自己啓発セミナーにも参加しました。けれど、いくつものセミナーに参加しても、「自分がなぜ生きているのか」という問いに、明確な答えを見つけることはできませんでした。そして、「次のセミナーを最後にしよう。これで何も見つからなければ、使命探しはいったん休もう」と決めて参加したのが、コーチングのセミナーでした。2018年のことです。そこで教えていただいた、「自分に起こる現実は、自分が潜在的に思い続けていることが一つずつ現実になっている。だから、自分の人生は自分で変えていくことができる」という考え方が、私の心に深く刺さりました。「だったら、開業して間もなく会社を倒産させてしまい、地獄のような日々を送っている今の状態も、自分が何かを望んで生み出しているということなのだろうか。それは、なぜなんだろう。その理由を知りたい」そう思った私は、そのままコーチングの学校に入学しました。受講生として学び続け、2019年12月、現在のコーチングサロン「CuoRelease」を立ち上げ、コーチとして再スタートを切りました。

 

事業内容 ── パーソナルと法人へのコーチング

「思い込み」に気づき、自分の力で人生を動かしていく

現在は、経営者や後継者、会社員、主婦、子育て中の方など、さまざまな方にマンツーマンでコーチングを行っています。人は誰でも、知らないうちに「自分はこういう人間だ」「自分には無理だ」といった思い込みを持っています。そうした思い込みが、自分自身の可能性にブレーキをかけていることもあります。だからこそ、まずは自分の中にある思い込みに気づくこと。そして、それを手放し、自分自身で考え、選び、目標に向かって進んでいく力を育てる。それが、私がコーチングを通じて大切にしていることです。

「人の違い」を理解し合える組織をつくる

もうひとつ力を入れているのが、法人向けの支援です。企業の中で起こる、人間関係のすれ違いやコミュニケーションの問題。その背景には、「相手が何を考えているのかわからない」ということがあります。そこで私は、企業に顧問コーチとして関わりながら、一人ひとりの違いを理解し、互いに力を発揮できる組織づくりを支援しています。目指しているのは、心理的安全性にあふれた組織。そして、社員が「ここで働き続けたい」と思える組織です。

これからのビジョン

相互理解が、組織を強くする

これからの企業にとって、コーチングの考え方はますます重要になっていくと考えています。その中でも、私が特に大切にしているのが「相互理解」です。同じ出来事を見ていても、人によって見えている世界は違います。それなのに、「あの人とは相性が合わない」「あの人はいつも勝手なことをする」と、相手を否定してしまう。でも、同じ出来事に対して違う意見が出てくることは、本来、組織にとって大きな力にもなります。

だからこそ、「違うこと」を問題にするのではなく、「なぜこの人はそう考えるのだろう」と相手を理解することから始める。私は、それが組織を強くするための第一歩だと思っています。そのために、私はAIを活用した個性分析の仕組みも取り入れています。

私自身の感覚だけで人を判断するのではなく、分析結果をもとに、一人ひとりの物事の捉え方やコミュニケーションの特徴を可視化します。

「この人は、こういう視点から物事を見る」「この人に何かを頼むときは、こう伝えると伝わりやすい」そうした違いを社員同士で共有することで、相手を理解するための共通言語をつくっていきます。さらに、社長や管理職、人事など、組織の中で人に関わる立場の方には、傾聴・質問・承認といったコーチングの基本的なスキルを身につけてもらいます。

どんな意見に対しても、いきなり否定するのではなく、「そう思うんですね」と、まず受け止める。そうしたコミュニケーションが社内に少しずつ増えていけば、忖度なく意見やアイデアを言い合える、心理的安全性の高い組織につながっていくと考えています。

コーチングを、もっと身近なものに

これからの企業にとって、コーチングの考え方はますます重要になっていくと考えています。その中でも、私が特に大切にしているのが「相互理解」です。同じ出来事を見ていても、人によって見えている世界は違います。それなのに、「あの人とは相性が合わない」「あの人はいつも勝手なことをする」と、相手を否定してしまう。でも、同じ出来事に対して違う意見が出てくることは、本来、組織にとって大きな力にもなります。だからこそ、「違うこと」を問題にするのではなく、「なぜこの人はそう考えるのだろう」と相手を理解することから始める。私は、それが組織を強くするための第一歩だと思っています。そのために、私はAIを活用した個性分析の仕組みも取り入れています。私自身の感覚だけで人を判断するのではなく、分析結果をもとに、一人ひとりの物事の捉え方やコミュニケーションの特徴を可視化します。「この人は、こういう視点から物事を見る」「この人に何かを頼むときは、こう伝えると伝わりやすい」そうした違いを社員同士で共有することで、相手を理解するための共通言語をつくっていきます。さらに、社長や管理職、人事など、組織の中で人に関わる立場の方には、傾聴・質問・承認といったコーチングの基本的なスキルを身につけてもらいます。どんな意見に対しても、いきなり否定するのではなく、「そう思うんですね」と、まず受け止める。そうしたコミュニケーションが社内に少しずつ増えていけば、忖度なく意見やアイデアを言い合える、心理的安全性で溢れる組織につながっていくと考えています。

「廣田さんだから」を、どう未来につなげるか

もうひとつ、私自身が感じている課題があります。それは、今の仕事があまりにも属人的だということです。現在は、コーチングという商品を買っていただいているというより、「廣田左希子だから」という理由で選んでいただいている部分が大きい。それはとてもありがたいことです。一方で、私ひとりで向き合える人数には限界があります。100人、200人と支援する人数が増えていったとき、一人ひとりに向き合う質をどう守っていくのか。そこは、これからの大きなテーマです。そこで現在、私のもとでコーチングを学べるコーチ養成スクールを開校しています。卒業生の中でも、試験に合格し、認定を取得した方だけが「CuoRelease」を名乗ることができる仕組みにしています。「廣田さんだから」という信頼を大切にしながら、その想いと技術を次の世代につないでいく。そして、より多くの人にコーチングの価値を届けていく。そのための仕組みを、これから少しずつつくっていきたいと思っています。

学生へのメッセージ

一流の環境に身を置いてほしい

私は、環境が人を育てるものだと思っています。一流になりたいなら、一流の環境に身を置く。これは仕事でも、趣味でも、何でもいいと思います。「自分らしく生きられる」「生まれてきてよかったと思える」そんなものを見つけたら、ぜひ、その道で一流を目指している人たちが集まる場所に身を置いてみてください。人は、環境によって大きく変わります。自分ひとりの力だけで頑張るのではなく、どんな人たちと時間を過ごすのかを、自分自身で選んでほしいと思っています。

誰かの基準ではなく、自分の人生を生きてほしい

私はこれまで、たくさんの失敗や挫折を経験してきました。でも、そこから気づいたことがあります。それは、自分の人生を生きることの大切さです。周りからどう見られるか。人から何と言われるか。「普通はこうするものだから」と、誰かの基準に合わせて生きるのではなく、自分はどう生きたいのかを、自分自身に問い続けてほしい。人生の時間には限りがあります。人はいつか、必ず人生の終わりを迎えます。それがいつなのかは、誰にもわかりません。だからこそ、限られた時間を生きているということを忘れずに、一日一日を大切にしてほしいと思います。私自身も、これからの人生を「誰かに決められた人生」ではなく、自分で選びながら歩んでいきたいと思っています。

編集後記

今回、廣田さんに16年間の飲食業界での経験から、事業でのつまずき、そしてコーチングとの出会いまでを、包み隠さずお話しいただきました。とくに印象に残ったのは、「つらい時期を乗り越えたからこそ、まだやるべきことがあると気づいた」という言葉です。就職活動を控える身として、環境を選ぶことの重みや、日々を大切に生きることの大切さを、あらためて考えさせられる時間でした。