AIを選んだ理由
会社を立ち上げる前に、いろいろな領域をリサーチしました。当時は自分が何にでもなれる段階だったので、選択肢は複数ありましたが、私が選んだのは、博士課程への進学と起業、そして業界の案件を取っていくことを同時に進める道でした。そうして立てた会社が、今の弊社になります。
ただ、闇雲に起業したわけではありません。ビジネスである以上、売れないものをつくっても意味がありません。当時23歳〜24歳で「では、どの領域を狙うか」と考えたとき、今の意思決定層は50代、60代が中心だという現実がありました。その世代とビジネスができる領域はAIだろうと思ったんです。流行っているからAIを選んだわけではなく、意思決定層が知らない知識を私たちが埋めに行かないと、いびつな構造がずっと残ってしまう。それを解消できるのがAIだと感じました。
弊社としても案件を積み重ねていきます。さらに、AIの受託を続けるなかで、もともと関心のあったディープテック領域のお作法や知見も、あわせて吸収していきたいと考えました。将来的には、この会社をディープテックの方向に運んでいきたいというのが、私自身の思いです。
AI受託開発の中身
事業内容は、お客さまの課題や要望に沿った1から設計です。AIモデルの選定からファインチューニングまですべてを含めて最適化し、システムとして統合したうえで、お客さまが使いやすい形で納入するところまでが弊社のメインの仕事です。
単にChatGPTのようなサービスをつなぎ合わせるだけではありません。ChatGPTをはじめとする生成AIも、Transformerなどの基盤技術の発展の上に成り立っています。弊社では、こうした技術的な背景も踏まえながら、用途に応じたモデルの選定やモデルの構築、複数技術の組み合わせ、システムへの統合まで幅広く対応している点が特徴です。
ディープテックへ向かうビジョン
課題として明確に見えているのは、市況環境と、チームアップの難しさです。今の弊社の体制では、まだそこが十分にできていないと感じています。
研究とビジネスの相乗効果
私自身はAIの会社を経営する一方で、ずっと生物の研究をしてきました。今取り組んでいる研究テーマは、顕微鏡の開発に関わるものです。そこで得た知見はビジネスにも生かせますし、逆にビジネスで得た知見が研究に生きることもあります。研究とビジネス、両方の視点があることで、よい相乗効果が生まれていると感じています。
学生へのメッセージ
学生の今という時間は、実はとても恵まれた状況にあると思っています。そのなかで迷いなく突き進んでいけるのは、将来の自分の夢があって、それに対して今の自分が最適な選択を取っていると考えられるからです。50年後、あるいは将来の自分の姿を描いたときに、自分がどう動くべきかを考えていくと、自分の進む道が見えてくると思います。たとえば、寝ることが好きなら、よく眠るためには何をすればよいかを考えて動く。そういう発想が大事なのではないでしょうか。
私より優秀な起業家は、世の中にたくさんいます。地頭のよさで勝てないのであれば、こちらは根性で勝負するしかありません。だからこそ、いかに学びを効率化するかが重要だと思っています。
弊社の強み
弊社は、サイエンスに対するAI受託を手がけています。もちろん、すべての科学領域を網羅しているわけではありません。私自身、大学では科学を学び、今は物理系の分野にも関わっていますが、たとえば電力のことをすべて理解しているかといえば、そうではありません。ただ、弊社のメンバーには電力の研究をしているメンバーなどがいます。完全にマッチしない研究分野があることもありますが、こうしたサイエンティフィックなバックグラウンドを生かした開発力は、弊社の強みだと思っています。どんな分野であっても、キャッチアップする力と、これまでの研究経験が生きていると感じます。
2つ目の強みは柔軟性です。既存のSaaSのようなサービスは、自社のフォーマットに合わせて改変していく発想になりがちですが、弊社はお客さまが「こうしたい」と言ったことに対して、最適なAIモデルやAIシステムを1から組み立てていきます。従来のツールでは実現できなかったことも、柔軟に組み込めるのが強みです。
3つ目はスピード感です。一般的な企業であれば半年かかるような開発を、弊社では3か月で進めることもあります。スピード感とコミットメントには自信があります。
AI開発そのものは、今の技術でできる範囲であれば、スキルのあるAI人材や会社であれば、どこに頼んでも一定の水準はできると思っています。だからこそ選ばれる理由になるのは、サイエンスへの理解、柔軟性、そして付き合いやすさだと考えています。この3つが、弊社がAI受託事業で大切にしているところです。
編集後記
博士課程での研究と経営を両立させながら、「地頭で勝てないなら根性で勝つ」と語る姿が印象的でした。AIという領域を選んだ理由も、流行に乗るのではなく、意思決定層とのギャップを埋めるという明確な視点に基づいていて、学生の私にとっても学びの多い時間でした。同じように将来を模索する学生の方に、ぜひ読んでいただきたいインタビューです。