インタビュー

「歯科衛生士」という枠を自分で広げてきた──唯一無二のヘルスケアを歯科業界の新たな選択肢に

「歯科衛生士」という枠を自分で広げてきた──唯一無二のヘルスケアを歯科業界の新たな選択肢に
PROFILE
国際TCHケアオフィス株式会社 代表取締役社長
イ・リナ

猛勉強とラグビーが同居した学生時代

目標に向かって足りないものを全部やる

私はずっとラグビー部だったんですよね。高校も専門学校もラグビー部で、体育会系ではあったんですけど、実は中学生のころから勉強がわりと好きなタイプでした。

休み時間にも予習をするような空気感の学校にいたので、いわゆる「ガリ勉」と体育会系が合わさってしまったような学生時代だったと思います。

もともとは教育系の大学に進学していて、小学校・幼稚園・保育園に関する資格を取れるところだったんです。目標に向かって、足りない部分は全部身につけたいタイプの子どもだったので、そこに向けてまっすぐ進んでいた感覚がありますね。

歯科衛生士との出会いは大学時代のアルバイト

バイト先が人生を変えた

歯科に興味を持ったきっかけは、大学時代のアルバイトです。歯科助手として働いていたら、「何で今これをしているんだろう」「何が起こっているんだろう」というのが気になりすぎてしまって。それで教育系の大学を辞めて、歯科衛生士の専門学校に編入しました。人生がそれによって変わってしまいましたね。

国家試験合格後にできた「ぽっかりとした時間」からの創業

勉強に充てていた時間が空白に

国家試験に合格して勤務が始まると、今まで勉強に充てていた時間をどう使えばいいのかわからなくなってしまったんです。

学校が終わりラグビーの部活も終わって、その後が勉強の時間というリズムで、ずっと生きてきました。勤務後の時間が丸々空いてしまったことに、何となく穴が開いたような感覚になったんですよね。当時、けがなどでスポーツ選手が運動できなくなったとき、起こるような状態に近いと言われたこともありました。

独学で学んだことが「教えてほしい」に変わった

そのまま何もしなくてもよかったのかも知れませんが、それでは私は収まらなかったんです。歯科衛生士として働きながら、整体ボディケアセラピストやメンタルケア心理士などの資格を取り、独学でいろいろな分野を混ぜ合わせて学んでいきました。

実は、私が学んできた内容には、周りではまだ広まっていないものも多かったんですよね。周りの歯科医師さんや歯科衛生士さんから「教えてほしい」という声が相次ぎ、最初は顎関節症の治療法、その後は歯科食育の講座をスタートしました。

それで2017年にフリーランスになり、2018年からは本格的に個人事業主として活動して、法人化したのは2020年です。もうすぐ7期目に入るところですね。

心と体と食、3つのトライアングルで「唯一無二」を目指す

イリナプログラム®︎という独自の考え方

唯一無二の歯科衛生士になりたくて、事業の内容は歯科衛生士の業務範囲には収まっていないんです。

具体的には、整体で学んだ体について、心理分野で学んだ心について、そして食ですね。この心と体と食の3つがトライアングルになっているという考えで、「イリナプログラム®︎」という独自のヘルスケアを考案して、それぞれの事業を展開しています。

Instagramでは、歯科衛生士として1万人以上のフォロワーを持っていて、これは日本でも片手ほどの人数だと思います。

レシピやライフハック系のアカウントだと10万、20万人という規模も珍しくないでしょう。ですが、医療系のアカウントでの1万人は、それと同等といわれるくらい難しい分野なんですよね。それを1年以内で達成できたのは、強みの一つだと思っています。

セミナーと書籍で積極的に情報を発信

当社で開催しているセミナーは12種類ほどあって、歯科医師の先生方向けや歯科衛生士さん向け、ママ向けとさまざまです。マッサージジェルの製造・開発もしていますし、最近は0歳から3歳の子どもを対象にした、ママ向けの漫画形式の書籍も出しました。

夜泣きや授乳で忙しいママさんが活字を読むのは難しいと思ったので、読みやすさを優先して漫画にしたんです。

広告費はかけておらず、自分たちで開催するセミナーは、Instagramのストーリーや投稿で告知しています。現地で開催するセミナーについては、こちらから営業するのではなく、依頼をいただくケースがほとんどですね。

コロナ禍をきっかけにオンラインでの情報発信へ

対面前提のセミナーが止まった時期

創業してから大変だったのは、間違いなくコロナ禍です。当時のメイン事業は「TCH緩和ケアプログラム」という、顎関節症ケアの手技セミナーでした。口の中に指を入れて力加減や手の角度を伝える必要があるので、オンラインでは教えられない内容だったんです。

感染対策を取りながら実施するのが難しい内容だったので、2〜3年ほどセミナーを止めることになりました。その分をプラスに捉えて、その間に年子の子どもを2人出産しました。

対面のセミナーを止めている間も、オンラインでできる別のセミナーや舌診断、母親教室の作り方など、歯科医院向けの発信は続けていました。コロナ禍でZoomが普及したこともあり、そこからオンラインでの展開を広げていったんです。

口だけを見ていてはダメだと気づいた瞬間

心・体・食のつながり

2016年に国家試験に合格して勤務を始めたとき、患者さんのお母さんたちから、いろいろ聞かれても、答えられないことや習っていないことが多いと感じていました。それが、より広い視点から、口の健康を考えるようになったきっかけです。

食べ物は口から取り込むわけですし、口や歯だけを見ていてはダメだと思うようになりました。例えば、噛みしめが起こると、首が前に出たり猫背になったりすることがあります。口が開きにくくなって、硬いものを避けるようになると、食事が偏って栄養の問題につながることもあるんですよね。

さらに、気持ちが沈むとうつむきがちになり、噛みしめや食事にも影響する。そうしたことを見ていくなかで、心と体と食は全部つながっているんだと気づきました。

口の健康を広く伝える

それから、誤嚥性肺炎や飲み込みの障害を考える上でも、口の機能は重要だと思っています。

2018年には「口腔機能低下症」や、子どもの「口腔機能発達不全症」という病名ができました。私が学生だったころにはなかった分野なので、こうした知識を伝えるセミナーも開催しています。

歯科から口の健康の大切さを広く伝えることで、医療費の課題や健康上のリスクを減らすことにもつながっていけばいいなと思っています。社会貢献という視点も持ちながら、積極的に取り組んでいるところですね。

世界で一番有名な歯科衛生士を目指して

自分の手技を全国に普及させたい

私が考案した手技を取り扱っている医院は、全国的にはまだ少ないのが現状です。日本には非常に多くの歯科医院がありますが、その中でもごくわずかというのが正直なところです。

ですが、多くの人が当たり前のように使っているLINEのようなサービスも、広く普及するまでには時間がかかったと聞いています。私も同じように、この手技を歯科業界に広げていきたいと思っています。最終的には、どこの歯科医院に行っても、私が考案した手技を受けられるような状態にするのが目標です。

そのためにインストラクター制度を作っていて、全国に仲間を増やしています。それぞれ業務委託という形で活動してもらっていて、歯科医院から依頼があれば、近くの地域にいるインストラクターが手技の説明や、講演・講義ができる体制です。

今は私自身が一人会社で、事務局・運営・秘書もすべて委託しています。会社としては一人ですけど、チームとして多くの仲間が一緒に働いている状態ですね。

歯科衛生士という仕事の幅も広げたい

歯科衛生士という言葉自体、歯科助手さんと混同されたり、高齢の方には看護師さんだと思われたりすることも多いんです。だからこそ、私自身が広告塔になって認知を広げ、「歯科衛生士といえばイ・リナ」と言われるような存在になりたいと思っています。

私は「世界で一番有名な歯科衛生士になる」と言っています。母が日本人で、父がフィリピンとスペインのハーフなので、私自身もいろいろな国にルーツがあります。せっかくそうしたルーツを持っているので、メイドインジャパンのこの手技を世界にも発信していきたいというのが、今後のビジョンですね。

学生へのメッセージ

やりたいことを「やったもん勝ち」だと思っています。私自身、いろいろな事業をしてきたことで、出版業界の方など、多くの人とお話しさせていただく機会が増えました。本当に自分のやりたい道に進んでほしいですね。

ちょっとでも気になることがあるなら、全部飛び込んでしまった方が、人生は楽しくなると思います。人生は一度きりなので、「失敗したらどうしよう」と不安になるよりも、ポジティブに捉えて、やりたいことを全部やっていこうくらいの精神でいいと思うんです。

私はそうやって生きてきて、今があります。もし私とマッチして、何かできそうなことがあれば、いつでも連絡してくださいね。

編集後記

今回お話をうかがって、興味を持ったことを積極的に学び、その学びを事業へとつなげてきた姿勢が印象に残っています。教育系の大学から歯科衛生士の道へ進み、整体・心理・食まで知識を広げてきた行動力からは、自分の可能性を自ら広げていく強さを感じました。

学生への「やりたいことをやったもん勝ち」という言葉は、進路や将来に悩む人にとって、強く背中を押してくれるメッセージだと思います。貴重なお話をありがとうございました。