施工会社への入社から独立へ
高校卒業後、すぐに就職するのではなく専門学校へ
私はよく「高卒みたいなものなんです」と話すのですが、高校を卒業したあと、県立の専門学校のようなところに進学しました。
本当は大学へ行きたいという気持ちもありましたが、当時は今ほど大学進学が一般的ではありませんでしたし、私自身の状況を考えても、大学進学はあまり現実的な選択肢ではありませんでした。
一方で、高校を卒業してすぐに就職したいという気持ちにもなれませんでした。
そこで「もう少し勉強する道を選ぼう」と考えて、専門学校へ進学したんです。
当時から建築をやりたいという明確な目標があったわけではありません。たまたま進学した学校が、建築を学ぶ学校だった。そのことがきっかけで、建築の世界へ入ることになったんです。
厳しい働き方を経験し、自分の将来を考えるように
最初は、設計士になれば事務所の中で仕事ができるだろうと思っていました。
ところが専門学校の先生から「男なら施工会社の方がいい」と勧められ、卒業後は施工会社へ入社しています。
実際に働き始めると、朝7時から夕方5時ごろまで現場監督として働き、さらに夕方から夜11時ごろまで図面を描くような毎日でした。
当時は長野オリンピックを控えた時期で、建設業界そのものが非常に忙しかった時代です。年間休日も10日ほどしかなく、今ではなかなか考えられないような働き方だったと思います。
まだ20代でしたから、仕事だけで毎日が終わってしまう生活を続けているうちに、「このままでいいのだろうか」と考えるようになりました。
ただ、何も残さずに辞めてしまうのも嫌だったので、「二級建築士の資格を取ってから次へ進もう」と決めました。
そして27歳のときに資格を取得し、独立することになります。
オリンピックバブルの終わりと、インターネットとの出会い
建築設計事務所として独立
27歳で独立し、最初は建築設計事務所を始めました。
ただ、長野オリンピックが終われば景気が落ち込むだろうということは、当時から多くの人が感じていました。
実際に、独立して2年ほど経ったころから建築の仕事は徐々に減っていきました。 そんな時期に出会ったのが、インターネットです。
「これから世の中を変える」と感じたインターネット
もともと私はパソコンが好きでした。
1998年にWindows98が登場し、一般家庭にもパソコンやインターネットが普及し始めたころ、「これは世の中を大きく変えるかもしれない」と強く感じたんです。
そこで、まずは自分でホームページを作ってみることにしました。
当時はホームページビルダーを使いながら、分からないことを自分で調べ、一つずつ覚えていきました。
そして、建築の仕事を続けながら、インターネットを使ってお客さんを集める方法を試し始めました。
ところが、その後オリンピックバブルが終わり、建築の仕事が少なくなっていきます。
結果として、少しずつインターネット関連の仕事の割合が増え、自然とITの仕事一本になっていきました。
最初から「IT企業を作ろう」と考えていたわけではありません。その時々で必要なものを学び、試していった結果、今の仕事につながっていったという感覚です。
営業をせず、インターネットから仕事を獲得
ネット集客は全て自分で実践して覚えた
独立してから現在まで、いわゆる飛び込み営業の様なことはほとんどやってきませんでした。
基本的にはインターネットから仕事を獲得しています。
当然、最初からネット集客の方法を知っていたわけではありません。
自分のホームページを作り、「どうしたら検索してもらえるのか」「どうしたら問い合わせにつながるのか」「何を書けばお客さんに伝わるのか」ということを一つずつ試してきました。
今では当たり前になったネットマーケティングですが、当時はまだ教えてくれる人もほとんどいません。
自分で実践して、失敗して、また試す。その繰り返しでした。
紙のセールスレターをホームページに応用
そのうち、「ホームページを作ったけれど、仕事が来ない」という相談を受けるようになりました。
そこで注目したのが、紙のセールスレターの考え方です。
商品やサービスの魅力を順番に説明し、最終的に問い合わせや購入につなげる。
この考え方をホームページに応用しました。今でいうランディングページです。
当時はまだGoogleが現在のような存在になる前で、Yahoo!などを活用しながら集客を行っていました。時代によってホームページ、検索エンジン、SNS、動画など、使われる手段は大きく変わります。
ただ、「企業自身が情報を発信し、それを集客や営業につなげる」という基本的な考え方は変わりません。
それを、私は約29年間、自分自身の事業で実践し続けてきました。
ホームページ・動画・広告を一気通貫で
ワンストップで対応できることがジェイラインの強み
現在、合同会社ジェイラインでは、ホームページ制作、動画制作、Google広告などの広告運用を中心に、企業の情報発信をサポートしています。
弊社の大きな特徴は、これらをそれぞれ別々のサービスとして考えるのではなく、一つの流れとして考えられることです。
例えば、ホームページを作る。そこに動画を掲載する。広告を使ってホームページへ人を集める。さらに、継続的に情報発信を行う。
それぞれを別の会社へ依頼すると、全体の方向性がバラバラになってしまうことがあります。
ジェイラインでは、ホームページ、動画、広告を一社でまとめて考えることができます。
長く仕事を続けてきたこともあり、現在では地元企業だけでなく、上場企業を含め、さまざまな企業から仕事をいただくようになりました。
今年でこの仕事を始めて29年目になります。 最初から現在の形を目指していたわけではありません。
もともと好きだったパソコンとインターネットに可能性を感じ、その時代ごとに必要だと思ったものを学び、実際に自分で使いながら仕事にしてきました。
結果として、それが現在のジェイラインの強みにつながっています。
YouTubeの可能性を感じ、動画制作へ
動画制作を始めたのは15年ほど前です。
最初は動画制作を外部へ依頼していたのですが、当時でも1本10万円、20万円という費用がかかりました。
それなら「自分で勉強して作れるようになった方がいい」と思ったのがきっかけです。
当時は企業がYouTubeをマーケティングに活用することは、今ほど一般的ではありませんでした。
しかし私は、YouTubeを見たときに大きな可能性を感じたんです。
企業や個人が、自分たちで動画を発信できる。言ってみれば、「自分たちでテレビ局を持つようなものだ」と思ったんです。
これからのマーケティングには、絶対に動画が必要になる。そう感じ、撮影や編集についても自分で勉強を始めました。
現在ではTikTokやInstagram、YouTubeなど、企業も個人も当たり前のように動画を発信する時代になりました。
テレビが中心だった時代から考えると、情報発信のあり方は本当に大きく変わったと思います。
経営で大切にしていること
自分で考えて動く方が性に合っていた
私は、誰かに言われたことをそのままやるよりも、自分で考えて動く方が性に合っているのだと思います。
最初に勤めた会社で仕事をする中でも、それを強く感じました。
決して仕事そのものが嫌だったわけではありません。
ただ、「同じ苦労をするなら、自分で選んだ仕事で苦労した方がいい」と思うようになったんです。
独立するときには、周囲からかなり反対されました。
親戚には公務員や大企業に勤める人も多かったため、安定した会社を辞めて独立するということが、なかなか理解されませんでした。
それでも、自分で考え、自分で決めて仕事をする道を選びました。
結果として、それが自分には合っていたのだと思います。
ビジネスで一番大切なのは「続けること」
ビジネスで一番大切なのは、続けることだと思っています。
どれだけ良い商品やサービスでも、事業として続かなければ、お客さんを支え続けることはできません。
世の中の役に立つ仕事であれば、きちんと利益を出して、続けていく必要があります。
この29年間を振り返ると、扱っているものは随分変わりました。
ホームページや検索エンジン、広告、動画、SNS。そして今ではAIもあります。
ただ、一貫して取り組んできたことは変わりません。
企業が持っている情報や魅力をコンテンツにし、それを発信して、お客さんとの接点を作る。
今でいうコンテンツマーケティングです。
ホームページ、動画、広告などを組み合わせ、その仕組みを一社でワンストップで作れることが、現在のジェイラインの強みになっています。
これから取り組んでいきたいこと
クリエイター同士が協力できるネットワークづくり
現在、課題の一つとして考えているのが、クリエイターとの協力体制づくりです。
いわゆる社員を増やす「採用」とは少し違います。
今年から「デジタルクリエイターズネットワーク」という取り組みを始め、動画、Web、デザインなどに関わるクリエイター同士がつながり、お互いに仕事を協力できるような仕組みづくりを進めています。
私は現在、東京へ撮影に行く機会も多くあります。
ただ、自分一人ですべての仕事に対応し続けることには限界があります。
何かあったときに、「この人なら安心して撮影を任せられる」という仲間が全国にいれば、お客さんにとっても安心です。
会社を大きくして社員を何十人も雇用するというよりも、それぞれ専門性を持ったクリエイターがつながり、必要なときに協力し合える。
そんなネットワークを作っていきたいと考えています。
企業IP戦略「Project Minori」という新しい挑戦
もう一つ、現在ジェイラインで取り組んでいるのが、AIキャラクターを活用した企業IP戦略です。
その自社実証プロジェクトとして立ち上げたのが、「Project Minori(プロジェクトみのり)」です。
Minoriは、単にAIで作ったキャラクターではありません。
企業やブランドには、ロゴやホームページだけでは伝えきれない、人柄や雰囲気、世界観があります。
そこで、企業独自のキャラクターを一つのIPとして育て、そのキャラクターが企業の情報を発信したり、商品やサービスを紹介したりすることで、企業そのものを覚えてもらいやすくする。
そんな新しい企業の情報発信のあり方を、Project Minoriを通じて実際に検証しています。
MinoriはWebサイトや動画、SNS、広告など、さまざまなコンテンツへ展開しています。
さらに、キャラクターを「動かす」「話す」だけではなく、「歌う」という表現にも挑戦しています。
現在ではTuneCoreなどのサービスを利用することで、Spotify、Apple Music、Amazon Musicなどを通じ、個人や小さな企業でも世界へ楽曲を配信できる時代になりました。
Minoriでも実際に楽曲を制作し、音楽配信やミュージックビデオなどへ展開しています。ただし、音楽活動そのものがProject Minoriの目的ではありません。
音楽も、動画も、SNSも、すべては一つの企業IPをさまざまなメディアで継続的に育てていくための手段です。
これまで企業の情報発信は、ホームページを作る、動画を作る、広告を出す、といった形が中心でした。
これからはそこに、「企業独自のキャラクターを持ち、そのキャラクター自体を企業の資産として育てていく」という選択肢も出てくると考えています。
Project Minoriはその可能性を、まずジェイライン自身で実践しながら検証しているプロジェクトです。
将来的には、こうした経験をもとに、企業専用のAIキャラクターや企業IPの企画・制作・活用まで支援できる形につなげていきたいと考えています。
考えてみれば、インターネットを始めたころから、私はずっと同じことをやってきたのかもしれません。
ホームページも、ネット広告も、YouTubeも、最初はまだ一般的ではない時代から自分で触り、試してきました。それはAIについても同じです。
新しい技術を自分たちで実際に使い、その可能性を検証しながら、企業の情報発信やマーケティングにどう生かせるかを考えていく。
Project Minoriも、その延長線上にある取り組みだと思っています。
編集後記
トータル山本さんのお話は、ブルーカラーとホワイトカラーを掛け持ちしながら資格を取り、独立してからも自分の手でインターネット集客を切り拓いてきた実践の連続でした。人に言われて動くよりも自分で動きたいという姿勢が、29年続く事業の土台になっていることがよく伝わってきました。学生団体として活動する私自身も、条件よりも思いを大切にする働き方の意味を、あらためて考えさせられるインタビューでした。