インタビュー

稟議書1枚のために動けない組織から飛び出して、個人資本で会社をつくった

稟議書1枚のために動けない組織から飛び出して、個人資本で会社をつくった
PROFILE
株式会社語れ 代表取締役
八木翔和

新潟県新潟市を拠点に、ブランド戦略の策定からクリエイティブ制作、プロモーションまでを一気通貫で手がける「Branding company 語れ。(KATARE Inc.)」で代表取締役をしている八木翔和です。「地域企業の挑戦と変化を加速させる」ことをミッションに、経営者の伴走役として事業をおこなっています。

芸能マネジメントからテレビ局へ

俳優のDVDパッケージ会議で見つけた転職のきっかけ

私のファーストキャリアは、東京の大手芸能事務所であるアミューズでした。新卒で入り、音楽アーティストや俳優、モデルのマネジメント事業部で、個人のプロデュースやブランディングを基礎から学んでいました。

さまざまなメディアと付き合いがあったこともあり、テレビ局のコンテンツづくりの第一線を見せてもらったり、一緒に仕事をさせてもらったりする機会もありました。そうやって制作にも携わっていたある日、ある俳優さんのDVDパッケージの打ち合わせをしていた時に、たまたま担当者のデスク上に、新潟放送(BSN)の封筒が置いてありました。それが転職のきっかけでした。

Webサイトを見てみると、第二新卒枠の募集が始まっていて、自分は応募できるギリギリの年齢でした。そのため、思い切って応募したところ、とんとん拍子で話が進み、Uターンする形で、TBS系列の放送局である新潟放送に転職しました。

そこからしばらくは、テレビやラジオの広告営業を中心に、企画提案営業のような仕事をしていました。番組のミニ枠制作の企画などにも携わりながら、マスメディアを含めた広告マーケティングを学んでいました。2020年頃には、いわゆる経営企画室にあたる部署に異動し、会社のビジョンを策定し直すプロジェクトに関わることとなりました。

稟議書が教えてくれた「自由」の大切さ

事業部ではなく、個人資本で会社をつくった

2021年に独立しましたが、その流れは2018年頃から始まっていました。なぜなら、テレビやラジオの広告営業にとどまらない提案を社内で独自にするようになっていたからです。

地方局に来て気づいたことは、経営者の方と直接話す機会が非常に多いことでした。話を聞いていくと、経営の悩みや事業戦略、人材の悩みなど、ひとつの広告メディアでは解決できない相談もどんどんといただくようになっていました。そこで、それらを解決したいと思い、2018年頃から外部のフリーランスメンバーも含めたチームを作り、社内で課題解決に取り組むようになりました。

2年ほど続けていたところ、いくつか形になり、規模も大きくなっていきました。そして社内で計上するには少しミスマッチな売上規模になっていった頃、会社側から新規事業部にしないかというオファーをいただきましたが、その時は一度断りました。

事業部にしても意味がないと思った理由は、2つあります。ひとつは、事業部という組織にした場合、監督局のような上部組織ができてしまい、柔軟性を含めたスピード感や経営判断の自由度が失われてしまうことにありました。もうひとつは、組織構造上の稟議の煩雑さが理由です。

稟議1枚のためだけに動けなくなる組織

例えば、1,000万円規模のプロジェクトの中で「YouTube広告に30万円を使う」となった場合、本業のテレビ収益ではない以上、その30万円のためだけに稟議書を1枚書いて承認をもらわなければ広告を出せません。1,000万円規模のプロジェクトの場合、細かい稟議をひとつずつ通していくことになります。その面倒臭さは、とてつもなく大きなものでした。

最終的には、BSNメディアホールディングスと私とで資本を出し合い、2021年7月に会社を立ち上げました。代表が個人資本を入れてつくるスピンオフ企業は、テレビ局というマスメディアの中ではおそらく初めてのケースだったためか、日経新聞など各種メディアにも取り上げていただきました。

ブランド戦略・クリエイティブ・プロモーションを一気通貫で

創業120年の企業と挑んだ採用ブランディング

弊社の事業は、大きく3つに分かれています。1つ目はブランドの開発や戦略策定などのいわゆるコンサルティング業務。2つ目はそれに伴うクリエイティブの制作。3つ目は、プロモーションや浸透施策、PR施策です。この3つを一気通貫で手がけるのが、弊社のスタイルです。

わかりやすい事例として、創業120年、従業員数120名ほど、年商数十億円のBtoB企業様のお話をよくしています。この会社は毎年新卒採用をおこなっていて、代表交代のタイミングで、創業家の跡取りである当時40歳ほどの新代表への事業承継が進んでいました。

そこで、改めて会社として見つめ直すべきビジョンは何かを考え、数値化できる定量的な目標である「インナービジョン」と、社会的な貢献度を示す「ソーシャルビジョン」を社員の方にも参加していただくワークショップをおこないながら策定するところから始めました。

初年度は、実際にワークショップを経て策定したブランドメッセージやバリューを採用施策に活かしました。ブランドムービーを皮切りに、会社紹介動画、そして採用のランディングページへとつなげるデジタル施策を展開した結果、毎年の採用人数が2倍になり、それまで直接のアプローチが難しかった高校生を指名で採用できるようにもなりました。各種メディアにも取り上げていただき、このお客様とは5年目の今も、社内の組織づくりのお手伝いを続けています。

他社が真似できない、テレビ局資本という強み

ブランディングやコンサルティングは競合が多い領域ですが、弊社の強みは、テレビ局資本が入っていることによるマス連携ができることに尽きると思っています。ここは他社が真似できない部分です。

地域企業の挑戦と変化を加速させる

M&Aや事業承継のタイミングに寄り添う

弊社のミッションは「地域企業の挑戦と変化を加速させる」ことにあります。基本的な事業ドメインは「地域」です。

日本の国力を考えた場合、「中小企業の数は日本のエンジンになる」と言われています。地方の中で淘汰されてしまう企業がある一方、世界や全国でもっと重宝されるはずのサービスやプロダクトを持つ企業もまだまだたくさんあると感じています。そのため、私たちは経営者の方々に寄り添っていきたいと思っています。

M&Aや事業承継のタイミングは、弊社にとってお客様として非常に相性のよい顧客状況です。地域や業種を問わず、成長や変化、挑戦のタイミングで伴走役としてサポートできる状態を目指しています。

全国のテレビ局ネットワークを生かして

全国のテレビ局は今、地方局同士のニュースネットワークを活用して、新たなビジネス模索のための連携を活発に進めています。弊社のように、テレビ局資本が入った状態で、広告事業の本質的な意味を見つめ直しながらエリアビジネスとしての事業をおこなっているスピンオフ企業は、地方にはまだ多くありません。

新潟に限らず、他の地域や東京での仕事も既におこなっていますが、これまで以上に全国の地方局と連携しながら、今の事業を展開していきたいと考えています。

就活生へのメッセージ

好きなこととできることが重なる場所を選ぶ

仕事選びは、ある種、人生の選択だと思います。ただ、10年後や20年後にキャリアの想定が変わることは、十中八九あることです。だからこそ、最初のキャリアは、自分ができることと好きなことが重なる部分の多い仕事を選んだほうがいいと思っています。

最初から完璧な正解を選べる人は、あまりいません。まずは好きなこととできることの重なりを探すところから始めるのがいいのではないでしょうか。

地方にも面白い会社はたくさんある

もうひとつお伝えしたいのは、仕事や会社選びは、東京や都心だけではなく、地方にも面白い企業がたくさんあるということです。

私が就職活動をしていた15年前より、今はUターンやIターンをする人が圧倒的に増えています。「東京で働いてから地元に戻って起業する」というケースも珍しくありません。実は地方にも面白い企業はたくさんあるため、一度肩の力を抜いて、地元での企業探しをしてみてもらえるとうれしいです。

この会社のよくある質問

Q.どんな人と一緒に働きたいですか。 

新潟出身で東京で働いた経験がある人に限らず、「地方の暮らしや企業のポテンシャルに関心がある人と一緒に仕事ができたら嬉しいな」と思っています。

Q.未経験でもブランディングの仕事に関われますか。

弊社はプロジェクト型の組織で、幅広い領域の外部パートナーと連携しながらお客様の課題解決に当たっています。ブランド戦略、クリエイティブ、プロモーションと領域は広いため、興味を持ってもらえるところから関わってもらえたらと思います。

編集後記

稟議書1枚のために身動きが取れなくなる組織のもどかしさから飛び出し、個人資本で会社をつくるという選択に、強い意思を感じたインタビューでした。地方に生まれ育った身として、東京に対して「お腹いっぱいになった」という八木さんの感覚には、共感する学生も多いのではないでしょうか。地方にも面白い企業があるという言葉を就職活動を控えるみなさんにもぜひ届けたいです。貴重なお話をありがとうございます。