親会社での50年の経験から、新しい会社を立ち上げる
父の背中と海外への憧れ
私自身、学生の頃から経営がしたいと思っていたわけではありません。ただ父が商社で働いていて、ずっと海外を渡り歩いていたんですよね。実は私自身も、父がアメリカに住んでいたときに向こうで生まれて、3歳まで暮らしていました。あまり記憶はありませんが、海外というものへの憧れはずっとあって、将来は海外と関わる仕事をしたいという思いは、学生時代から強く持っていました。経営というものとはまた別の話かもしれませんが、そこは父の影響が大きかったのかもしれません。
自ら手を挙げて代表になった
もともと親会社があって、丸善化工(まるぜんかこう)という業務用のBtoB向けの会社がありました。食品加工の現場で使われる衛生資材を扱っている会社で、たとえばお弁当に入っている緑色のギザギザした葉っぱ、あの「バラン」を作っていたのがはじまりです。そこから使い捨ての手袋や、飲食店でテーブルを拭くときに使うふきん、コンビニのお弁当工場で使われるエプロンや腕カバーなど、食品加工に関わる商材全般を展開してきた会社が、弊社の親会社になります。
ただ、この先の成長を考えたとき、日本という国で働いている以上、人口減少という壁からは逃げられません。この先15年ほどで、日本の人口は約1,500万人ほど減っていくといわれています。1億3,000万人いた人口が、いずれ1億人を切っていく。そうなったとき、今までと同じやり方だけでこの会社を成長させていくのは、正直なかなか難しいだろうと感じていました。
そこで、どうすれば会社を伸ばしていけるかを5年、6年とずっと考え続けていました。最終的にたどり着いたのが、親会社の強み、たとえば仕入れ先や社員の営業スタイル、商品力を踏まえると、BtoBからBtoCへ進出するのが一番勝ち筋があるだろうという結論です。それを社内で話したところ、「じゃあやってみよう」ということになって、私が代表を務めることになりました。ゼロから会社を作れと言われて、ちょうど2年前に会社を登記し、そこから今に至っています。
私自身、サラリーマンを長年やってきたなかで、経営というものにずっと興味がありました。いつか自分の手で携わってみたいという思いが強かったので、迷いはありませんでした。
業務用で培った品質を、家庭のキッチンへ
15年前から広がっていた声
この会社を立ち上げる前から、親会社ではスポンジやテーブル用のふきんを展開していました。それがちょうど15年ほど前のことです。今では親会社の業務用スポンジだけで、年間150万個ほど売れています。時間にすると、だいたい25秒に1個売れている計算です。
使っていただいているのは、大手飲食店や大手スーパーが中心です。そうした企業で働く従業員の方から、「店頭で買いたい」「自宅でも使いたい」という声を非常に多くいただいていました。それなら、しっかりブランドを作ってBtoCとして展開していこうと考えて、昨年からスポンジとクロス、拭きものの分野を立ち上げました。今はそこから色やサイズを増やして、少しずつ横展開しているところです。
全国450店舗ほどで販売中
販売先としては、全国のロフトさん、群馬のハンプティ・ダンプティさん、関東圏のジョージズさん、ヨドバシカメラさんなど、大手の店舗を中心に展開を始めています。安いものを安く売るのではなく、しっかり付加価値をつけて販売していくというのが、弊社の事業の軸です。
見た目はオレンジ色でポップな明るい印象です。ただその裏側にあるのは、業務用としてプロの職人さんが使ってきたプロの品質です。それをパッケージから見直して、少しブランディングして届けているというのが、今の事業の形になります。
営業活動をはじめてまだ1年ちょっとですが、今は全国450店舗ほどまで販売をいただけるようになりました。長年業務用で培ってきた品質や機能という強みを持って勝負しているので、店頭に並ぶまでに大きな壁を感じることはあまりなかったんです。ただBtoBからBtoCへ挑戦するとなると、商慣習や営業の仕方など、わからないことも多くて、一つひとつ勉強しながら今に至っています。バイヤーさんには「本当にいい商品だよね」というところまで評価いただけているんですが、そこから一般の消費者の方にどう伝えていくかが、今の課題です。
ゼロから会社を作る大変さと、そこにあるやりがい
会社を一から作る経験
会社を一から作るという経験は、なかなかできるものではありません。それが一番大変だったところだと思います。ただ大変ではあるんですが、初めてやることには知らないことが多いぶん、刺激になることも非常に大きいんです。だから大変ではあるけれど、やりがいや楽しみの方が大きくて、あまり苦労だとは思いませんでした。
親会社で役員をやっていたときとは、日々考えるポイントがまったく違います。営業をやっていたころは、いかに売るかばかり考えていましたが、それだけでは会社は回りません。調達をどうするか、資金繰りをどうするか、購買計画やインフルエンサーを含めたSNS施策をどう組み立てるか。売ることだけでなく、あらゆる方向を見なくてはいけなくなったので、そこはかなり視点が変わりました。ブランドとして展開しているぶん、いかにブランド力を高めて顧客に伝えていくか、安売りをせずに価値をしっかり評価いただくか、というところも常に意識しています。
今、社員は12人ほどで、親会社と兼任しているメンバーが多いです。1名を除いては、基本的に親会社から来てくれています。
新しい挑戦には反対もある
大変だったこととしては、新しい事業や新しい会社を立ち上げるとき、必ずしも全員が応援してくれるわけではないということもあると思います。知らないことへのアレルギー反応というか、感情的になる方も、出てきてしまいます。自分に携わってくれているメンバーが仕事をやりやすいように、どう環境を整えていくか、ここは少し大変だったところかもしれません。
キッチン雑貨のトータルブランドへ、そして海外展開へ
キッチン周り全般を提案したい
大きな目標としては、キッチン雑貨をトータルでコーディネートできるブランドになっていきたいと考えています。今はスポンジやクロス、お風呂用の洗剤など一部の商品からのスタートですが、キッチン周り全般、バス、トイレまで含めてトータルに提案できる会社に育てていきたいですし、学生時代からずっと思い描いていた海外展開も、今後のビジョンとして持っています。
営業を開始してまだ1年ほどですが、来月からは韓国のロッテ百貨店や現代百貨店、台湾の雑貨店、アメリカ・ニューヨークの雑貨店にも商品が並び始める予定です。ここからラインナップをしっかり増やして、展開を広げていきたいと思っています。
親会社と子会社、BtoBとBtoCを両輪で回せる会社にしていきたいです。どちらかに何かがあっても会社としては成長していける、そういう、社員みんなが安心して働ける会社にしていきたいと思っています。今はまだ少人数でやっているので、徐々に人を増やしながらできることを広げて、しっかり一人立ちできる会社に育てていきたいです。
若いうちに、失敗を恐れずいろいろ経験してほしい
なんでもいいから、自分の好きなことを見つけて、そこで失敗して欲しいです。若いときにたくさん失敗することで、見えてくることがすごく多いと思います。一番よくないのは、何もしないままでいることです。そこからは何も生まれません。実際にやりたいと思ったことに対して行動して、失敗して、成功すればそれでいいですし、頭を打ちながらでも経験を積んで、それを継続していくことで得られるものはとても多いと思います。
スポーツでもほとんどが失敗です。野球でも三振を繰り返し、どうやったらヒットが打てるんだろうと考えながら、みなさん取り組んでいると思うんです。仕事も社会も同じだと思うので、いろいろなことに興味を持って、頑張ってもらいたいなと思います。
仕事以外のことも、海外に行ったりとか、普段なかなか経験できないことを率先してやってみることで、自分の将来につながっていくと思います。私自身、若いときに海外に行った経験が、今すごく生きているなと感じています。
日本人はなかなか、海外の人と比べて会社を作って独立するという意識が薄いように思います。でもそれだけでは、これからの日本の中で戦っていくのは難しい。どんどん自分たちで会社を作ったり、独立したりすることに、チャレンジしてほしいなと思います。情報は誰の前にも平等にあるんです。それをいかに自分から取りに行くかで、大きな差が出てきます。今はメディアもSNSもインターネットも情報量がどんどん増えていますが、それを自分から取りに行って引き出しを増やしていくことで、差が生まれていく。興味を持ったことにいろいろチャレンジして、引き出しを増やしていった先に、大きな山になって人生が変わっていくと思うので、行動して頑張ってほしいなと思います。
編集後記
今回のお話で印象に残ったのは、BtoBで50年培ってきた品質を、そのままBtoCへと橋渡ししていく発想です。私自身、法人向けの事業を展開されている社長様のお話を伺う機会は多いのですが、消費者として日常的に手に取れる商品を扱う福谷さんのお話は、いつもより身近に感じながら聞くことができました。人口減少という誰もが向き合う課題に対して、自ら手を挙げて新しい挑戦をする姿勢から、多くの学びをいただきました。ありがとうございました。