パソコン一筋だった学生時代
「今は亡きワープロ」から始まった
私がパソコンに触れたきっかけは、小学校の頃に触っていたワープロです。あの頃はまだワープロしかない時代で、そこから今でいうワードのようなものに触れるようになりました。中学生になってインターネットというものが世の中に出てきて、そこで初めてパソコンを始めました。独学でHTMLを学んだり、自分なりにホームページも作ってみたりして、そこからパソコンに触れる人生が始まりました。
部活と両立した”夜型”の生活
高校生の時は部活に打ち込みながら、その傍らで部活のホームページも作るようになりました。夜8時ぐらいまで部活をして、ご飯を食べてから朝の5時までパソコンに向かうという生活を送っていましたね。部活のホームページでは大会の成績やメンバー紹介をやっていたら、学校の新聞に取り上げられたこともありました。そこから進学先もプログラミングを学べる専門学校を選びました。
15年近いキャリアを経ての起業
最初の就職先は美容室だった
就職した会社はIT系ではなく、実は美容室だったんです。数店舗ぐらい展開している会社で、パソコンの導入やホームページのメンテナンスを全般的に担当していました。そこから自動車メーカーなど、いろいろな業態を経験しながらサラリーマンを続けていました。
個人事業主から株式会社クヒトへ
サラリーマンを15年ほど続けたあと、自分で起業しました。最初は個人事業主として、自宅でプログラミングをしながら活動していて、5年ほど前からはブロックチェーン関連のシステム開発に携わるようになりました。そして今年、起業したのが今の会社です。
ブロックチェーンが「投機」で終わっていることへの違和感
儲かった・損したでしか語られない現実
ブロックチェーン業界の開発に携わって5年ほど経つんですが、なかなか世の中に浸透していないと感じています。もともと私はシステム屋としてITに興味があって、仮想通貨よりもブロックチェーンという文脈に引かれてこの業界に入りました。それなのに、どうしても投機的な文脈、つまり「儲かった」「損した」という話でしか語られていないのが、もったいないと感じていたんです。誰かがやってくれるだろうと待っていたんですが、これは自分が率先して、社会に浸透していく技術に進化させていかなければいけないと思って立ち上げました。
「見せずに証明する」仕組みをつくる
データを開示せず正しさを証明する技術
ブロックチェーンを全面的にビジネスとして打ち出していくのは、難しい面もあります。そこで私たちが注目しているのが、ゼロ知識証明を含むPETs(プライバシー強化技術)です。PETsは、必要以上にデータを開示することなく、その情報の正当性を確認したり、データを安全に活用したりするための技術の総称です。これらの技術はブロックチェーンを使わずに活用することもできますが、ブロックチェーンとの相性が良く、組み合わせることでプライバシーを守りながら信頼性の高い仕組みを構築できます。私たちはこうした技術を活用し、企業が実際のビジネスで利用できるサービスの展開に取り組んでいます。
気づかれずに使われる技術を目指して
地方自治体との実証実験
今、話を進めているのが地方自治体との連携です。ブロックチェーンを意識せず、今のWeb2のような感覚で、市民サービスとしてどう使えるかを実証実験しています。私たちの文脈でいうと、まさにマイナンバーカードの活用シーンがそれにあたります。
中央管理者がいないという安心感
ブロックチェーンの魅力は、中央の管理者がいないという点です。みなさんが監視し合い、管理し合っているからこそ、改ざんがしにくいですし、誰かに乗っ取られる危険性もありません。今、社会で問題になっているのは、Googleのようなサービスを使うことで、自分のデータや個人情報がすべてGoogleに集約されてしまうことだと思うんです。私たちは20年先を見据えて動いています。10年後には、みなさんがブロックチェーンという言葉を意識しないまま、自然に使っている社会が来ると想像しています。PayPayの裏側でブロックチェーンが使われていたり、銀行のサービスの裏側で使われていたり。今、みなさんがPayPayの裏側が何で動いているかわからないのと同じような感覚で、日常に溶け込んでいく未来を思い描いています。
AIとブロックチェーン、次の10年を学生へ
AIとブロックチェーンは相性がいい
世の中的に今はAIが台頭してきていて、みなさんもAIのほうに関心が傾いていると思います。ただ、AIとブロックチェーンはかなり相性がいいと思っているので、ぜひブロックチェーンにも興味を持ちながら、10年先の日本、あるいは世界がAIとブロックチェーンで動いている姿を想像してもらえると楽しいと思います。
技術は難しいところから普及していく
AIも決して突然出てきたわけではなく、二、三十年ずっと研究が続けられてきて、今でこそChatGPTのような対話形式やオートメーションが実現しています。もともとAIもかなり難しい技術で、なかなか一般に浸透しなかったんですよね。ブロックチェーンも今、かなり進化してきて簡単になってきているので、みなさんにとっつきやすい形になれば、わかりやすくなってくると思います。
採用については直近の予定はないんですが、事業が大きくなって開発が活発に進んでいけば、開発者の方に力を借りる場面も出てくると思います。年末ぐらいのタイミングになりそうです。まだわかりづらい技術ではありますが、ゼロ知識証明とブロックチェーンを掛け合わせたこの取り組みは、10年後、20年後には必ず身近な技術になって、開発者の方も多く必要になってくると思うので、ぜひよろしくお願いします。
編集後記
大学生の私にとって、ブロックチェーンは名前こそ知っていても、生活の中で実感する機会が少ない技術でした。今回のお話を伺い、投機的なイメージが先行してしまう現状への違和感から起業に踏み切った加賀谷さんの姿勢に、強い覚悟を感じました。マイナンバーカードを例にした「見せずに証明する」という発想は、身近な課題と最先端技術をつなぐわかりやすい視点で、とても勉強になりました。10年後、ブロックチェーンが当たり前に使われる社会を、私自身も楽しみに見届けたいと思います。