インタビュー

フリーマーケットで知った「ネットの力」、4社で磨いた“EC”一筋のキャリア

フリーマーケットで知った「ネットの力」、4社で磨いた“EC”一筋のキャリア
PROFILE
manyC株式会社 代表取締役
陣内 友哉

バドミントン漬けだった学生時代

目の前の大会に一生懸命だった

学生時代を振り返ると、部活動やサークル活動を中心にした学生生活だったなと思います。

中学、高校、大学とずっとバドミントンをやっていて、当時から起業を意識していたわけではありませんでした。 単純に、目の前の大会やイベントに一生懸命取り組むタイプの学生だったと思います。学業では理系で情報系の分野を学びつつ、学生生活の中心は友人との時間、バドミントンやサークル活動でした。

岡山県の大学に進学し、システム開発の基礎やロボットを動かすプログラミングなども学びました。現在の仕事でその技術を直接使う場面は多くありませんが、物事を構造的に考える経験は今にもつながっていると思います。また、サークルや部活動で人と一緒に目標に向かって取り組んだ経験も、現在のチームづくりや仕事の進め方に生きています。

フリーマーケットで知った「ネットで売る面白さ」

学生時代には、古着をフリーマーケットで販売したこともあります。会場では思うように売れなかった商品を、ヤフオクなどインターネット上に出品してみると売れるようになりました。同じ商品でも、写真の撮り方や見せ方、価格、訴求内容を変えるだけで反応が変わる。その体験が純粋に面白く、ECに興味を持つ最初のきっかけになりました。当時から「将来はECの仕事をする」と決めていたわけではありませんが、今振り返ると、現在の仕事につながる原体験だったと思います。

「仕事は思いやりだよ」と教わったアルバイト

サークル以外では、飲食店や引っ越しなど、さまざまなアルバイトも経験しました。その中で、先輩から「仕事は思いやりだよ」と言われたことがあり、その言葉は今も私の中に残っています。自分の仕事だけで完結させるのではなく、次の工程を担う人が仕事をしやすいように、引き継ぎや依頼の仕方まで考えることを意識しています。

岡山で幅広い経験ができるメーカーへ

地元の岡山で働きたいという思いがあり、就職活動では「転勤のない岡山のメーカーであること」と「幅広い仕事に関われる総合職であること」を軸にしていました。当時は職種を一つに絞っていたわけではなく、営業、開発企画、マーケティングなど、さまざまな経験ができる環境を探していました。その中で出会ったのが、パソコン周辺機器メーカーのサンワサプライです。

4社で磨いたEC一筋のキャリア

サンワサプライでECの現場を幅広く経験

サンワサプライでは、パソコンのマウスやデスクチェアなどを扱うEC(ネット通販)の運営部署に配属されました。お客さまからの問い合わせやクレーム対応、倉庫での商品梱包・出荷といった現場業務から始まり、しだいにECサイトのマーケティングや社内システムの開発にも携わるようになりました。複数部門をまたいで仕事をする中で、特にECのマーケティングに面白さを感じるようになりました。

ジャストシステムで会員向けECサイトを担当

25歳ぐらいのころ、より多くの情報や人に触れ、ECの経験を広げたいと考えるようになり、東京に出ることを決めました。ご縁があったのが株式会社ジャストシステムです。現在は「スマイルゼミ」などの教育事業に力を入れている会社ですが、私は自社ソフト「一太郎」の会員向けに商品を販売するECサイトを担当しました。

どんな商品をお客さまに届けるかを考える仕入れ・バイヤー業務に加え、メーカーと一緒に商品を企画する仕事にも携わりました。最終的にはECサイトの店長を任せていただき、仕入れ、販促、商品企画など幅広い業務を経験しました。ECを単なるサイト運営ではなく、事業全体として捉える視点を身につけた経験だったと思います。

カメラのキタムラでEC責任者に

その後、化粧品などの単品リピート通販を手がけるコンサルティング会社を経て、全国に店舗を持つカメラのキタムラでECサイトの運営・マーケティングの責任者を務めました。ファーストキャリアから振り返ると、顧客対応や出荷といった現場から、キタムラでの戦略立案や組織運営といった上流まで、ECを軸に一気通貫で経験してきたことになります。

起業のきっかけは「地方の埋もれた商品」と「支援のあり方への問題意識」

良い商品があっても、売り方に課題を抱える地方メーカー

創業の経緯には大きく2つの理由があります。1つは、バイヤーをしていたころ、地方のメーカーや経営者と話す機会が多く、品質が高く作り手の思いもしっかりある一方で、売り方や販路づくりに課題を抱える企業を数多く見てきたことです。自分が培ってきたECやマーケティングの知見を使って、そうした地方企業の力になれないかと考えるようになりました。

提案だけでなく、実行まで伴走する支援へ

もう1つは、サンワサプライやジャストシステム、カメラのキタムラといった事業会社にいる中で、外部の支援会社からさまざまな提案を受ける機会があったことです。内容としては正しくても、予算や社内体制、現場のリソースまで考えると実行が難しい提案もありました。その経験から、「提案するだけではなく、実際に動かして成果につなげるところまでが支援なのではないか」と考えるようになりました。

個人での活動を経て、2025年に法人化

manyC株式会社として法人化したのは2025年です。それ以前から、個人として現在の事業につながる活動を少しずつ始めていました。活動を続ける中で手応えや成果が積み上がり、「地方企業の力になりたい」「提案だけではなく、実行まで伴走する支援をしたい」という思いを、事業としてさらに大きくしていこうと考えるようになりました。

独立については自分なりの判断基準を持っており、事業として継続していける手応えを持てたことも、2025年に法人化・独立する決断につながりました。

ECの総合支援から部分支援まで、実行を一気通貫で担う

弊社は、ECとデジタルマーケティングを通じて企業の事業成長を支援しています。戦略設計を含むECの総合支援、運営全体を担う店長代行、外部EC責任者として企業に参画する支援に加え、Web広告、SEO、SNS、ページ制作など、特定領域に絞った支援も行っています。個別の施策ありきではなく、クライアントの課題や予算を踏まえ、ECに必要な全体像からオーダーメイドで支援内容を組み立てています。

manyCの強みは、私自身が長く事業会社のEC現場で働き、売上や利益に責任を持ちながら事業を動かしてきた経験にあります。戦略を考えるだけではなく、実際に手を動かし、現場で実行できる形に落とし込むことを大切にしています。実際に、売上や集客、広告効率などの数値改善につながる支援事例も増えています。出荷や顧客対応から、バイヤー、マーケティング、EC責任者まで経験してきたため、EC事業を部分ではなく全体から捉えられることも強みです。現場から戦略までの深さと、商品・マーケティング・運営を横断できる広さ、そして事業者の立場で考える「事業会社目線」の支援が、manyCらしさだと思っています。

一人に依存する会社から、思いを共有する組織へ

事業会社目線を、組織で再現していく

創業期の今は、支援方針や判断基準が私個人の経験に依存している部分があります。今後の課題は、事業会社目線の支援を私一人の経験にとどめず、組織として再現できる状態をつくることです。クライアントとの距離が近い分、決められた業務だけをこなすのではなく、相手の事業そのものを理解し、必要であれば現場まで入り込む姿勢が求められます。同じ志を持ち、地域やスタートアップ、中小企業が継続的に活用できる形で支援したいと思ってくれる仲間を、少しずつ増やしていきたいと考えています。

求めているのは「商品をちゃんと愛せる人」

一緒に働く仲間に求めたいのは、私たちの思いに共感してくれることに加えて、クライアントの商品をちゃんと愛し、自分ごととして理解しようとする姿勢です。たとえば化粧品のクライアントであれば、自分や家族に実際に使ってもらうなど、商品を理解するための一手間を惜しまないことです。スペックデータだけを見て他社と比較するのではなく、社長や現場の声を聞き、自分で一次情報を取りに行く。その姿勢を持った人が、manyCに合うのではないかと思います。知識やスキルは仕事を通じて伸ばせますが、目の前の商品や事業に興味を持ち、自分から理解しようとする姿勢は大切にしたいです。

自社ECと支援事業の「両輪経営」を目指して

今後は、成長途中の企業への支援をより強化していきたいと考えています。AIも活用して業務の効率や品質を高めつつ、私以外のメンバーでも同じ水準の支援を提供できる組織をつくることが、直近の目標です。これまでは、カメラのキタムラやジャストシステムで培った経験を評価いただく機会も多くありました。今後はそれに加えて、「manyCとして何を成し遂げたか」で選ばれる会社にしたいと思っています。そのためにも、manyC自身がEC事業を手がけ、自ら事業を成長させる経験を積んでいきたいです。支援事業と自社ECの両輪を、ここ5年ほどでしっかり回せる状態にしていくことを目指しています。

また、正社員だけでなく、副業や業務委託など多様な形で働ける環境も広げていきたいと考えています。起業する前、岡山に戻りたいと思ったときに、EC関連の経験を活かせる仕事の選択肢が少ないと感じたことがありました。地方にいながら、事業会社で培った視点を活かした質の高いEC支援に携われる。そんな働き方の選択肢をつくり、同じ思いを持つ人たちが地域に住みながらキャリアを築ける会社にしたいです。クライアント、働く人、地域のそれぞれに価値を生み出せる形を目指しています。

編集後記

今回のインタビューを通じて、学生時代の小さな興味や体験が、その後のキャリアの軸につながっていくことが印象に残りました。フリーマーケットでは思うように売れなかった古着が、インターネットでは写真や価格、訴求を変えることで売れるようになったという原体験。その面白さからECに興味を持ち、4社でさまざまな経験を重ねながら専門性を磨いてきた陣内さんのキャリアは、これから自分の進路を考える学生にとってもヒントになるのではないでしょうか。また、アルバイト先で教わった「仕事は思いやり」という言葉が、現在の仕事のスタイルにも生きているというお話も印象的でした。貴重なお話をありがとうございました。