インタビュー

アイドルから口座残高2万円へ、PRで人生を立て直した話

アイドルから口座残高2万円へ、PRで人生を立て直した話
PROFILE
合同会社MCピーアール/株式会社メディチャン 代表
乙坂 章子

10代のアイドル時代からリポーターへ

おニャン子の姉妹チームでデビュー

10代のころ、アイドルとしてデビューしました。所属していたのは「オールナイターズ」というグループです。おニャン子クラブの姉妹チームで、秋元康プロデューサーが初めて手がけた入れ替え制の女子グループでした。女子大生というものが一躍世の中を席巻した時代で、バブルのちょっと手前くらいのころです。

殺人現場にも駆けつけるリポーターに

その後、1度仕事を離れたのですが、またスカウトを受けて、今度はリポーターとして番組に定期的に出るようになりました。オウム真理教や阪神淡路大震災、統一教会など、大きな事件や災害の現場を1年中駆け回っていましたね。殺人現場に足を運んだこともありますし、オウム真理教のヘッドギアをつけた信者の方に詰め寄られたことも1度や2度ではありません。普通の方が経験できないようなことばかり経験してきたので、そこで度胸がつきました。

ハローワークでPRと出会う

離婚をきっかけに家計が一変した

その後、人生の転機がありました。離婚をして、子供を2人抱えたシングルマザーになったんです。タレントの収入だけでは、とても暮らしていけません。ある月、ふと通帳を見たら残高が2万円しかなくて、これはまずいと血の気が引きました。

渋谷のハローワークでPR代理店を紹介される

このままでは生活保護になってしまうと思い、渋谷・道玄坂のハローワークに初めて足を運びました。ところが、当時はパソコンがまったく使えなくて、お運びさんやレジ打ちの仕事にも軒並み落ちてしまったんです。全国放送で喋ってきたのに、まさかここまで世間についていけないことがあるのかと、かなり打ちのめされました。

そんなときに、キャリアカウンセラーの方から「こんな求人が来ているから行ってごらん」と紹介されたのが、PR代理店だったんです。

PRは「プロモーション」ではない

多くの方は、PRを宣伝や広告、プロモーションだと思っています。私自身もそうでした。ですが、PRはパブリックリレーションズの略で、広告費を使わずに、テレビや新聞といったマスメディアへ人力で営業をかけていく仕事なんです。メディアが1週間後、1か月後、1年後に何を取材したいのかを徹底的にリサーチして、企業とメディアをつなぐ。私が入ったころはAIもありませんでしたから、そのリサーチはほとんど勘に頼っていました。ただ、私自身がテレビの現場、今のミヤネ屋の前身番組にいた人間なので、その勘どころは体にしみついていたんです。

時給1,000円から上がらなかった

パートの時給1,000円から始めて、NHKや日本テレビに取材を取れるようになり、社内で頼りにされる存在になっていきました。ただ、どれだけ実績を積んでも、時給は1,000円のまま上がらなかったんです。当時40代で、子育てをしながらお金が必要だったこともあり、時給を上げてほしいと交渉したのですが、断られてしまいました。悔しくて仕方がなかったのを覚えています。

合同会社MCピーアールを設立

悔しさが起業の原動力になった

ものすごく悔しい思いをして、それならばと会社を辞めて独立したのが、起業の経緯です。メディアに出るというのは本来かなりレアな経験のはずなのに、その才能や経験を、たった時給1,000円で使い倒されるのはおかしいと感じたんですよね。

女子アナや元リポーターのセカンドキャリアを支援

弊社には、元タレントや元リポーター、現役のリポーターも在籍しています。メディアを熟知した人材は、年齢を重ねるとともに仕事が少なくなっていくのが実情です。そうした方々が、弊社でもう1度花を咲かせてほしい、これが事業の大きな思いのひとつです。見た目もきちんとされている方が多く、メディア出身者ならではの丁寧な対応や場数を活かせるのも強みだと思っています。

PR教育機関「メディチャン(メディアに出るチャンス)」の誕生

経営者コミュニティで気づいたPRの認知度

社会のことを何も知らないままやけくそで起業した私は、勉強のためにBNIという全国規模の経営者コミュニティに参加しました。そこで、約50名のメンバー全員から「PRって何?」と聞かれてしまったんです。PR代理店で担当していたのは大手企業ばかりで、PRを知らない人などいない環境にいたので、これにはかなり驚きました。

お金がないと気づいてすらもらえない

自分なりの結論としては、理由は「資金力」にあると思っています。メディアへの取材は、企業側がお金を払う仕組みではありません。ただ、そのノウハウを実行する人材には大きな委託費がかかります。規模の大きい企業は、月に100万〜200万円ほどをPR代理店に支払っていて、年間2,000万円以上を出せなければ、そもそもお付き合いが始まらない世界なんです。逆に、小さな企業にはPR代理店からの営業すら来ません。完全に、業界から存在しないものとして扱われているような状態でした。

一方で、社会の役に立ちたい、良いサービスを届けたいという思いを持つ小さな企業の経営者は、BNIのなかにもたくさんいました。そうした方々に向けて、20年分のノウハウを教えるPR講座をつくったのが「メディチャン」です。合同会社MCピーアールがPRの代行事業、メディチャンがPRを教える教育事業と、ふたつの軸を持って活動しています。メディチャンは今年の5月に法人化したばかりで、まだこれから広げていく段階です。

小さくても勝てる「ヒーロー覚醒」

メディチャンのブランドプロミスは「ヒーロー覚醒」です。どんな企業でも世の中を救えるヒーローであると考えています。だからこそ存在している。小さな企業でも、PRの知識を身につけていくと、自分自身がヒーローになれることに気づいていきます。実際に、卒業生のなかには法律を変えるところまでたどり着いた方もいました。能力ではなく、やり方を教えただけで、そこまでの変化が起きたんです。素晴らしい取り組みをしている方たちを応援することが、日本を変え、つらい思いをしている人たちを救うことにつながる。7年ほどメディちゃんを続けてきて、そう気づかされました。

これから目指す姿

天まで飛んでいってほしい

今後については、まずは優秀な女子アナやリポーターのセカンドキャリアを全力で応援していきたいという思いがあります。あわせて、お金や力はなくても、やる気だけはある小さな企業の経営者の方たちに、広報やPRの大切さを知ってもらい、頭ひとつふたつ抜けて、突き抜けてもらいたいです。実際に、広報だけで大きく伸びた企業もありますし、資金力が潤沢でないのない企業こそ、広報に力を入れるべきだと考えています。

なお、自社の売上だけを追い求める経営者の方とは、正直あまり相性が良くありません。弊社は、1年、2年、3年、10年とかけて、コツコツと社会を良くしていくためのPRを大切にしています。

学生へのメッセージ

人生に無駄なことはない

人生って、面白いなと思うんです。PRという仕事と出会うために、離婚を経験したのかもしれませんし、その前にメディアの世界にいたことも、今の私を形づくるピースのひとつだったのかもしれません。今振り返ると、1点の何かに向かって、見えない力に走らされてきたような感覚があります。

だから、迷ったり、うまくいかなかったりすることがあっても、無駄なことはひとつもないと思います。マイナスに感じる出来事であっても、次に進むためのステップになっているはずです。

編集後記

今回の取材を通して、PRという仕事の本当の意味を、初めて深く知ることができました。乙坂さんの半生には、アイドル、リポーター、そして起業と、いくつもの転機があり、そのひとつひとつが今の事業につながっていることに驚かされました。「お金のない企業こそ広報を」という言葉は、これから社会に出る学生としても心に残るものでした。ぜひ、あわせて弊社のサービスもチェックしてみてください。