インタビュー

世代間のギャップを越えて、女性の力を生かす経営へ。着物とドレスの三松が、台湾で次の挑戦を始める

世代間のギャップを越えて、女性の力を生かす経営へ。着物とドレスの三松が、台湾で次の挑戦を始める
PROFILE
株式会社三松 代表取締役社長
齋藤 徹

着物の延長線上にある挑戦

94年続く老舗呉服専門店

弊社は1932年に呉服店として創業し、創業から94年にわたって、お客様とともに歩んでまいりました。現在は和装やドレスなどのオケージョン商品を中心に、多彩なブランドとサービスを展開しています。企業理念は「ファッションの創造を通じてお客様の心と生活をもっと豊かに美しく」で、行動指針は「すべてはお客様のために」です。この考え方は、どんな新しい挑戦をするときも変わりません。

「モノ」の提供にとどまらず、ファッションの可能性をもっと広げていく

これまでの私たちは、着物やドレスなど目に見える「商品」を通じて、お客様の人生の節目や日々のファッションを彩ってきました。これからはその先へ。着付けレッスンや骨格診断、カラー診断、テキスタイルデータを活用したビジネスなど、ファッションに関する「知識」「体験」「サービス」といった無形の価値を、新たな事業として展開していきます。そうしたいろいろな取り組みを続けてきた延長線上で、今回の台湾での挑戦につながっています。

試行錯誤の先に今がある

振り返ってみると、さまざまな試行錯誤を重ね、いろいろなことに挑戦した結果、今があるのだと思います。すべてがうまくいったわけではありませんが、一つひとつの経験の積み重ねが、今の弊社を作ってきました。台湾での取り組みも、突然始まったものではなく、これまで積み重ねてきた挑戦の延長線上にあると考えています。今後は着物の帯や布地が持つ美しさや素材の魅力を生かし、アート作品やインテリアとして新たな価値を創出し、提供する事業を台湾でスタートします。

経営のバトンを受け継いで

1番下っ端だった当時

当時の私は、役員のなかで1番下っ端でした。社長は私の親でしたし、年齢的にも、役員は自分より20歳以上年上の方が中心でした。そのため、なかなか話が噛み合わない部分が多く、そこにはとても苦慮しました。振り返ってみても、あの時期はいちばん苦労したと感じています。

46歳で社長に就任

社長交代を早めたほうがいいという話になり、46歳のときに代表になりました。就任してからは、業務の面でもこれまでとは大きく変わっていきました。代表になるということは、それまでの立場とは責任の重さがまったく違うと実感したのを覚えています。

価値観のギャップを埋める難しさ

代表になった当初、幹部の多くは私よりも7~10歳年上の方であり、価値観や考え方の違いから、意思疎通や認識の共有に難しさを感じることがありました。意見が食い違うこともありましたが、一つひとつの課題に丁寧に向き合い、対話を重ねることで、少しずつ相互理解を深めていきました。

女性の力を生かせる組織へ

女性が主体の会社だからこそ

弊社のお客様はほとんどが女性です。そのため、女性の力を生かしていくことが非常に大切だと考えていました。ところが、当時の幹部はほとんどが男性でした。それでは、お客様の目線と会社の目線にズレが出てしまうのではないかと感じていました。

幹部に女性を増やしたい

お客様の目線に合う形にしていきたいと思い、できるだけ幹部に女性の方を多く登用したいという思いでやってきました。男性を差別するということではなく、あくまで両方を均等な形で見ていきたいと考えています。性別にかかわらず、お客様の気持ちに近い目線で企画や運営をおこなえる会社をめざしています。

店舗の声を企画に生かす

商品企画においては、店舗スタッフの知見や経験も積極的に活用しています。日々お客様と接する店舗スタッフは、お客様のニーズや反応を直接把握しているため、現場の声を企画に反映することが、商品力の向上や販売実績につながります。

本部と店舗が一体となって事業を推進できる体制づくりを目指し、店舗スタッフが商品企画にも主体的に関われるようサポートしています。実際に、店舗スタッフの意見や発想をもとに生まれたヒット商品もあり、現場の知見を生かすことの重要性を実感しています。

これから描くビジョン

美しさを形にし続ける

創造性を発揮しながら、お客様のライフスタイルに寄り添い、美しさや艶やかさをつくっていきたいと思っています。これから先もその姿勢を変えることなく持ち続けていきます。提供するものが変わったとしても、お客様の暮らしを美しく彩るという軸は変わりません。

モノだけでなくコトも

美しさを形にする方法は、モノだけではないと考えています。体験やサービスなど、さまざまな形があるはずです。私たちが大切にしている軸はぶらさずに、その可能性を広げながら、多様な形で表現していきたいと考えています。これまでの挑戦と同じように、新しい表現にも柔軟に向き合い、可能性を追求していきます。

世界の女性にも届けたい

日本だけでなく、世界の女性に向けても、想いを届けたいと思っています。台湾での挑戦は、その第一歩になるかもしれません。まずは目の前の成果をしっかりと積み重ねたうえで、一つひとつ進めていくつもりです。

学生のみなさんへ

時代の風を読む若い力

時代の変化を敏感に捉え、新しい価値を生み出していくことが、これからの会社の成長には欠かせないと考えています。特に、今の時代の空気や価値観を肌で感じている若い世代の感性や発想は、私たちにとって大きな力になります。若い方々の力を生かすためには、まず私たち自身が一人ひとりの声に耳を傾けることが大切だと思っています。若い方々の自由な発想やチャレンジ精神を生かしながら、世代を超えて力を合わせ、三松を次の時代に向けてさらに発展させていきたいですね。

お客様と接する現場から、仕事の魅力を知る

インターンシップでは、着物やドレスの展示会を外部の会場で開催し、その受付などを体験していただいています。実際にお客様をお迎えする現場に立つことで、私たちがどのような想いでお客様と向き合い、どのような雰囲気の中でサービスを提供しているのかを感じていただきたいと考えています。商品を扱うだけではなく、お客様とのコミュニケーションを通じて価値を届ける仕事であることを、実体験を通して知っていただける機会になればと思います。

お客様が輝く瞬間に立ち会う喜び

着物もドレスも、身にまとうことでお客様の気持ちを華やかにし、特別な一日を彩るものです。私たちが何より大切にしているのは、商品そのものだけではなく、それを手にしたお客様が笑顔になり、輝いていく姿です。インターンシップでは、実際の現場でお客様と接し、その表情がぱっと明るくなる瞬間や、喜んでいただける瞬間をぜひ体感してほしいと思っています。自分たちの仕事がお客様の喜びにつながる。その実感こそが、この仕事ならではの大きなやりがいだと考えています。

編集後記

94年という歴史がある会社でありながら、台湾への挑戦に踏み出すなど、いまも新しいことに向き合い続けている姿が印象的でした。20歳以上も年上の役員の方々と向き合いながら、価値観のギャップを埋めようとされてきたお話からは、立場や年齢にかかわらず「聞く耳を持つ」ことの大切さを学びました。私自身も人と一緒に何かを進めるなかで、考え方のズレに悩むことがあるので、深く共感しました。「その時代の風を1番わかっているのは若い世代」という言葉は、学生にとって心強いですよね。展示会の受付を通じて、お客様が輝く姿を実感できるインターンシップも、ぜひチェックしてみてください。