株式会社MONSTER DIVE代表取締役・岡島将人です。弊社はWebサイト制作やシステムインテグレーション、映像制作・ライブ配信を手がけるプロダクションカンパニーです。今日は学生時代から独立までの経緯と、学生の皆さんに伝えたいことをお話しします。
「何者かになれる」~製図室の隅で感じたネットの可能性
大学は建築学科でした。当時、製図は手書きからCAD(コンピューターでの図面作成)へ移行する過渡期でしたが、なぜか大学の授業だけは手書きのまま。世の中の潮流から外れているように感じて納得できず、「僕だけパソコンでやってもいいですか」と教授に直談判して許可をもらいました。みんなが大きな紙を広げている製図室の端っこで、私だけパソコンをポチポチと叩いていたんです。
その頃のパソコン性能では、CGが生成されるまでに1時間以上かかりました。冬は暖房いらずになるくらい複数のパソコンのファンが回る中、待ち時間に没頭したのがインターネットでした。当時はビデオ通話もまだ一般的ではなかったので音声やチャット中心でしたが、海外の方とやり取りするのが楽しく、英語をそこで覚えました。海外の情報に触れ、いろいろなことを吸収しましたね。
あの頃はパソコン通信からインターネットへの移行期。知識とセンスさえあれば、学生でも数日で世界にリーチできる環境が整いつつあり、「インターネットのおかげで何者かになれるんじゃないか」という強い可能性を感じていました。今のインフルエンサーのような感覚に近いかもしれません。
「現場でモノづくりがしたい」~その一心で独立
大学卒業後はまずインターネットの研究開発やコンサルを行う会社に入り、そこからWebメディア企業へ転職しました。映画メディアやハイブランドのメディアを立ち上げる会社でしたが、私はナンバー2として会社を大きくしつつ、一貫して映画メディアを担当していました。当時は日本で最大級の映画メディアになっていたと思います。
配給会社に「公式サイトを作りましょう」と提案して回り、公式サイトを作ったら今度は「その映画のタイトルをうちのメディアに載せませんか」と、プロダクションとメディアの両方の機能を使った独自のビジネスモデルを構築しました。
当時、映画のプロモーションにおいて、インターネットの仕事は規模が小さすぎて大手の広告代理店などは手を出さなかったので、映画会社と直接取引ができたんです。いろいろなプロモーションや作品に関わりながら、デジタルプロモーションを勉強しました。
2009年にそのメディアを売却する話が出たんです。そのまま会社に残って上場を目指すという道もありました。しかし、私はまだ現場でひたすらモノづくりをしていたかった。デジタルで何者かになりたいという気持ちは変わっていなかったので、独立を決意しました。起業は私の想いを実現する手段のひとつでした。
創業時はたった1人。映画のプロモーションを数多く手がけていましたね。翌2010年に日本でもUstreamという動画配信サービスが広まりはじめ、「インターネットで誰もが気軽に映像を届けられる時代が来た」と確信し、即座にライブ配信事業を立ち上げました。これが現在の弊社の柱である「Web制作・デジタルプロモーション」と「ライブ配信」という2軸の原点です。
「これまで苦労はない」~クリエイターの仕事の本質とは
実は、会社設立からこれまでで、苦労したことというのがあまり思い当たらないんです。クライアントワークをしているといろいろな人がいますが、クライアントが実現したいこと(いわば「わがまま」)と、自分たちがやりたいことをすり合わせていくのがクリエイターの仕事だと思っています。嫌なら仕事を受けなければいいだけの話です。
そもそも世の中の仕事は、「自分では面倒だから人に頼む」ことで生まれています。例えば家でも作れるのに牛丼チェーンに行くのは、自分で作るより時短でおいしいからです。自分でやるには面倒なことやできないことに、人は対価を払う。「この人に頼んだ方がクオリティが高くて安くできる、時間の効率もいい」と思ってもらえているからお金を払っていただける。この考え方がベースにあるので、クライアントがどれだけわがままを言っても、私自身はストレスになりません。
仕事の中で時短できないこと
対クライアントについて強いて悩ましいところを挙げるなら、時間をかけないと築けない関係があることです。業務の効率化はできても、人と信頼関係を築く時間だけは短縮できません。若い世代がその大切さを実感できるようになるまでには5年、10年とかかります。経営者としては会社の未来と社員みんなの未来を考えて、じっくりチームを育てながら事業をたくさん抱えられる会社にしていきたいと思っています。
学生時代に養うべきこと
お金の流れを見る視点
学生や20代前半の人へのアドバイスとしては、特定のツールやスキルを学ぶことにはあまり意味がない、ということです。後からいくらでも学べるからです。
大事なのは考え方や視野を広げることで、どんなアルバイトでもいいので社会に接した方がいい。そして、言われたことだけをやるのではなく「お金がどう流れているかを見る視点」を持つことです。例えば居酒屋でビールを1杯500円で出しているとして、原価はいくらか。樽1個がいくらで何杯売れば元が取れるのか。店舗の家賃はどのくらいか。経営やビジネスは、小中学校で習う四則演算レベルの算数でできてしまいます。加えて「なぜこの人はこの商品を買うのか」と消費者の心理を想像する。これはマーケティング的な視点そのものです。私が尊敬する経営者は、みんな優秀なマーケターです。自分の好みではなく、今世の中がどう動いているかを見られる人は、経営者に向いていると思います。
アルバイトは学生時代の特権
大学の中にいると、どうしても自分と似た属性の友達と集まりがちです。実際の社会にはいろいろな人がいて、多様な人との出会いは大学の友達関係の中だけではなかなか得られません。
社会人になってからいろいろな会社を転々とすると「ジョブホッパー」と思われることもありますし、一度に複数の仕事を持つのも簡単なことではありません。しかし、学生のうちであれば、異なる業種や職種のアルバイトをすることができ、多様な人に出会えて視野が広がります。並行していろいろな経験ができる。これは学生ならではのメリットだと思います。
一方で、お金のことだけを考えるなら時給いくらで働くより、AIを使えば学生でも大いに稼げる時代になっています。だから「ひたすらAIをやる」というのも一つの答えではあるのですが、私自身はAIもツールの一つで、いつでも学べるものと捉えています。とはいえ、何もしないぐらいならAIに触れておいた方がいい。ショート動画を延々と見て時間を消費するくらいなら、アルバイトをするかAIに触れるか、どちらかをした方がいいと思いますね。
MONSTER DIVEについてよくある質問
どんな人が向いていますか?
職人的なこだわりとオタク的な探究心を持って、モノづくりに向き合える人が向いていると思います。クライアントのわがままと自分たちの表現をすり合わせながら形にしていく仕事なので、頼まれ仕事ではなく自分ごととして取り組める方、時間をかけてチームの信頼関係を築いていける人を求めています。
未経験でも大丈夫ですか?
ツールの使い方は後から学べるので、映像やWebに関する経験の有無よりも、社会やお金の流れ、人の心理を見ようとする視点を持っているかを大事にしています。アルバイトなどの社会経験の中で培った見方は就職してからも十分に生きます。
編集後記
早稲田大学3年の学生です。建築学科でパソコンを使わせてほしいと交渉するエピソードから、モノづくりへのこだわりが一貫していると感じました。CGができるまでの待ち時間をきっかけに世界とつながり、その経験が会社経営にまで発展していく流れからは、行動することでいくらでも可能性を広げられることを教えてもらいました。
特に印象に残ったのは、アルバイトの中から「お金の流れを見る視点」を身につけていくという話です。普段何気なく利用しているサービスや身近な出来事にも、さまざまなビジネスの仕組みがある。そうした視点を持つことで、日常の見え方も変わるのだと感じました。私も日々の生活の中で、身近な出来事をただ経験するだけでなく、「なぜこの仕組みになっているのか」と考える癖をつけてみようと思います。