ITとの出会い、そして「初めて本気で勉強した」日々
ITを仕事にする覚悟
私は現在、企業様の従業員様向けにDXやAIの研修を行っております。
学生時代は本当に勉強が苦手だったんです。
高校時代はあまり成績が良くなかったんですけど、昔からパソコンが好きなことを知っていた進路指導の先生に「ITを仕事にしたいなら」と紹介してもらって。ポリテクカレッジ(職業能力開発短期大学校)に進学しました。
情報技術を学びたいという明確な目標があったからか、人生で初めてそこで予習復習をしました。小中高とそれまで一度もやったことがなかったのに(笑)。目標がはっきりしていたら、やることも自然と決まってくるんだなって、あのときしみじみ感じましたね。頑張った結果、近畿2府4県のポリテクが集まる卒業制作発表に学校代表として選んでもらえたこともあって、自分の中では一番勉強した時期だったと思っています。
パニック障害、転職、そして「ITと現場」が交差した瞬間
大手SIerからの転身
卒業後は安定した大きな会社で働きたいと思い、500人規模のシステム会社に入社しました。生命保険会社や損害保険、クレジットカード会社のシステム保守をずっとやっていたんですけど、途中でパニック障害になってしまって。会社に行けない時期が2年ほど続きました。
なかなか復帰も難しくて、そんな状態の中で「形あるものを作りたい」という気持ちが強くなって。思い切って退職し、建築関係に転職しました。庭の工事をする会社、工務店、内装工事会社と経験を積んでいく中で、現場の仕事にどっぷりと向き合いました。
kintone との出会いが起業の原点
社長と2人の工務店で働いていたとき、紙でのやり取りが多い中で、過去のお客様の履歴をデータ化することで会社の資産になるのにもったいないと思っていました。中小・零細企業ってやっぱり予算が限られているので、高価なパッケージソフトは難しい。そこで当時月1万円ほどで使えたkintoneを「一度使わせてください」と導入してみたんです。
ちょうどそのころ台風が来て、工事の依頼がどっと増えた時期があったんですね。でも kintone でお客さんの情報を管理していたから、仕事量が増えても対応できた。あのとき「システム管理があったから乗り越えられた」ってはっきりわかって、これを中小企業に広げたいと思ったのが独立のきっかけです。
「旅と仕事は同じ」——DXに込める思いと理念
お母さんを幸せにしたかった
弊社の理念は「新たな発想を提供して豊かな人生を創造する」というものです。この言葉の背景には、私の個人的な体験があります。
私の兄弟が、障がいを持っており、母が懸命にサポートしていたんです。介護があるとなかなか家から出られないので、情報源がテレビ中心になってくる。人との接触が減って、視野が狭くなっていくということをずっと感じていました。
これって企業も同じだなと思っていて。会社に入ると、教えてもらった方法がそのまま「当たり前」になっていく。時代がどんなに変わっても、変えようとすると反発が生まれる。でも、その当たり前を変えることで、やりたいことができるようになったり、家族との時間が増えたりする。DXの力でそれができるなら、私はそこに力を貸したいんです。
ツールより先に「整える」
よく旅に例えてお伝えするんですが、旅行の計画を立てて、当日に台風が来たとします。そのとき「北陸新幹線なら行けそうだ」ってルートを探して何とか目的地に向かおうとするじゃないですか。でも、なんで仕事ではそれをしないんだろう、って私は思っていて。
ツールから入るとうまくいかないことが多いんです。「ChatGPT が便利だから導入しよう」じゃなくて、まず「請求業務が月末に3日かかっているのはなぜか」という課題から入る。原因を探って、理想の状態を描いて、そのためのツールを選ぶ。その順番が大事で、これがまさにDXの本来の流れだと思っています。
しかもパッケージソフトって、100社あれば100通り違う業務フローに完全には合わない。だから「ソフトに業務を合わせに行く」という逆転現象が起きてしまう。そうならないために、お客さん自身がシステムを作り、変更もできるようにする——それが kintone を活用した研修という形につながっています。いわゆるアジャイル開発の考え方で、自分たちで柔軟に変えていける環境を作ることが大事なんです。
現在の事業と、これからの展望
AI×kintone で中小企業の可能性を広げる
今は kintone を使った DX 人材育成研修を中心にしつつ、今年の4月からはAIを活用したシステム開発も始めました。AIの進化でプログラマーの仕事が代替できる部分が増えてきた中で、「スピード感を持って動けること」が社会のニーズになると感じたからです。
半年後には市場のニーズが変わっている——そんな時代だからこそ、AI を使うことで短期間で、低コストで中小企業の「社長の思い」を形にする。成長してくれた企業とずっとお付き合いできたら、それが一番うれしいです。
kintone にもまだまだ活用の余地があって、セキュリティ基盤がしっかりした環境の上でさらに便利にできる方法もある。こういう組み合わせ方は、社会の情勢に応じてどんどん変わっていくと思っています。でも、最終的に立ち返る場所はいつもこの理念——「その人の豊かな人生をどうやって一緒に描けるか」。そこだけはぶれないようにしたいと思っています。
多様な働き方を実現する会社へ
今は1人で業務委託の方にスポットでお願いしながら動いていますが、今期は前年比で倍以上の売上を目指していて、来年以降は採用やパートナーを増やしていく予定です。
若い方の知識や感覚も必要になってくるので、新卒の方を迎えることも考えています。それだけでなく、障がいを持った方の雇用にも取り組んでいきたい。私自身、兄弟のことがあるし、パニック障害で仕事を休んだ経験もある。多様な働き方が実現できる会社にしていきたいという思いは、ずっとあります。
得意なことも、苦手なことも、みんな違う。お互いを認め合いながら、いい会社といい人生を一緒に育んでいきたいと思っています。
誰もが豊かな人生を実現するお手伝いをデジタルを通じて一緒に作れたらと思っております。
学生へのメッセージ
「何でワクワクするか」から就活を始めてほしい
私もたくさん失敗してきたし、転職も繰り返してきました。でも、なんとかなってきた。その経験から言えるのは、まず「自分はどんな人生を歩みたいか」を考えてほしいということです。
それを実現するには、どんな人と出会えばいいか。その視点でたくさん人に会いに行ってほしい。自分が思ってもみなかった世界って、きっとその先にあるので。
会社名や給与、知名度だけで就職先を選ぶのではなく、「何が一番ワクワクするか」を軸に動いてみると、もっと良い選択ができるんじゃないかなと思います。
編集後記
インタビューを終えて、「ITと現場」という一見バラバラに見えるキャリアが、一本の筋で繋がっていることに気づきました。工務店での kintone 導入が、独立の原点になっていたとは——。「課題から入る、ツールは後」という西垣さんのDX哲学は、学んでいるビジネスの基本原則そのものでした。そして、お母さんへの思いが会社の理念になっているというエピソードは、正直かなり刺さりました。就活を控えた自分にとって「何でワクワクするか」という問いは、シンプルだけど一番難しい問いかもしれません。西垣さんの言葉を、長く胸に置いておこうと思います。