インタビュー

継ぐはずじゃなかった会社で、洗浄剤メーカーとしての道を切り拓く

継ぐはずじゃなかった会社で、洗浄剤メーカーとしての道を切り拓く
PROFILE
株式会社OKUTANi 代表取締役
奥谷祐司

2代目として、まったくの畑違いから

塗料卸問屋の家に生まれて

私は創業者ではなく、2代目です。父が塗料の卸問屋という業種の会社を経営しており、私は3人兄弟の末っ子なのですが、なぜか兄ではなく私が継ぐのかな、という雰囲気になっていきました。

前職は広告代理店へ勤めており、CMやテレビ番組制作のアシスタントディレクターのようなことをしていたので、まったく違う畑からこの会社に入りました。私が入社した約30年前というのは「将来、問屋はなくなるよね」とよく言われていた時代で、脱問屋を目指していました。

とは言いながら、10数年前まではいろいろなことを試して、「これも違うな」「あれも違うな」というトライアンドエラーを重ねていました。

洗剤づくりから始まった転機

10数年前から、業務用の洗浄剤をつくろうと動き始めました。洗浄剤を使ってくださるお客様からは「きれいに洗った状態は、いつまで続くのか」というお声があったので、コーティング剤で保護することである一定期間きれいな状態を保てるようにしよう、というところからコーティング剤づくりも始まりました。

最初は建築現場、住宅やオフィス、ビルといった環境向けの商品を主につくっていました。

自動車業界からの引き合いと、弊社ならではの強み

洗浄力と作業の簡便さ

いろいろな方と出会い、アドバイスをいただきながら、現在は実は自動車業界向けの洗浄剤とコーティング剤に一番お引き合いをいただいています。建築用の時代から一貫して、洗浄力もしくは作業の簡便さ、つまり人件費のコストを下げる商品開発にこだわってきました。

洗車をしてカーコーティングやガラスコーティングをする際、ボディの表面をきれいに整えるのに今も皆さん結構な時間を費やしているのですが、弊社の洗浄剤を複数種類使いこなしていただくことで、非常に短時間で作業を終えられるようになります。そのおかげであちこちからお引き合いをいただいていて、来週も関西から四国へ長期出張に出させていただく予定です。

先ほど申し上げた洗浄力の高さや、市場に出回っている商品の中でも長期間長持ちするコーティングの耐久性は、商品としての強みだと思っています。企業体としての強みと言えるかはわかりませんが、小規模企業だからこそ、非常にスピーディーに商品開発やカスタマイズができるというのも特徴です。

実際、今も関西方面のある企業から、海外市場向けにある機能を持ったコーティング剤をつくってほしいというご相談をいただいています。どういうふうに塗布するのか、どう浸透させるのかといった、液体をつくるだけではなく使いこなし方までご相談を承れるというのは、弊社の一つの強みかもしれません。

お客様の一言がきっかけだった

洗浄剤の事業は、私の代になってから10数年前に始めたものです。きっかけの一つは、当時の取引先に洗浄剤の原料をつくっているメーカーさんがいて、そこから調達することで最初の製品をつくり始められたことでした。

もう一つ、広島エリアのテレビ局に出演させていただいた際のインタビューでお話しさせていただいたのですが、これから塗装する物件を見たお客様が「塗装するとお金がかかってしまうけれど、洗ってきれいになるのならば安く仕上がりますよね」とおっしゃっていたことが、大きなきっかけになりました。その時「これだ」と思いました。「洗剤の使い道」という骨格部分はある程度できていましたし、当時の取引先から原料が仕入れられるということもあり、運が良かったのかもしれません。

デジタルマーケティング事業部という新しい挑戦

新規開拓をデジタルで

弊社はメーカーという立ち位置なので、車を流通させている方や、メンテナンス業をされている方といった代理店様に、弊社の洗浄剤とコーティング剤を採用していただけるよう開拓しています。

私たちが社会人になったばかりの頃はタウンページでリストアップして、1件ずつ電話でアポイントを取って訪問していましたが、今はそんな時代ではありません。ネット上でリストをつくり、さまざまなアプローチを重ねて、最終的には現地に行く、もしくは弊社に来ていただいて車を洗車したりコーティングしたりする作業を見ていただく、触れていただくことがゴールです。リストアップからファーストコンタクト、クロージング営業までデジタルツールを目一杯使うというのが、今の時代なのだろうと捉えています。

ノウハウを横展開したい

これがうまくいった先が、今後のビジョンにもなるかもしれません。デジタルツールを使って新規顧客開拓をするというのは、いつの時代もどんな企業も考えていることですから、今私たちが成果を上げつつあるこのやり方を、他社さんのお役に立てるよう横展開していきたいと思っています。

今すぐ収益の柱になっているわけではありませんが、何年か先にはそういう時代が来るはずです。もっと言うと、私たち世代よりも、これを読んでくださっている次の世代、デジタルネイティブの方々の方が圧倒的に得意なはずです。世代を越えて、企業体であろうとなかろうと力を合わせてビジネスを展開していく時代になっていくのだろうと考えています。

人と組織にまつわる課題

新卒採用ゼロという現実

代表に就任して以降、新卒の採用実績はお1人もなく、中途採用しかありません。弊社があるのは山口県宇部市という、のどかな町です。転職人材もそれほど豊富にいるわけではありません。

これまでの弊社の企業形態からすると、地元の方がいて同じオフィスにデスクがあるというのがマストな時代が長く続いていましたが、コロナ以降は状況が変わってきました。在宅でも構わないとか、東京在住の方が弊社に入社したいと言ってくださっても全然お受けできるといったやり方ができるようになってきています。そういう意味では、1人ひとりの得意な部門を生かして、それを成果に変換してあげられる企業体でありたいと思っています。

現在、正規の従業員は10名ほどです。非正規はいませんが、弊社のコーティング剤の作業をしてくださる外部の方がプラス数名います。

経営理念と、これから目指す姿

創意工夫と技術力で社会に貢献する

弊社の経営理念は「創意工夫と技術力で社会に貢献します」という言葉です。技術力だけでは大手企業さんには敵いませんから、そこに創意工夫が必要になります。「社会に貢献する」とは簡単に言えますが、それがどういうことなのかを考えることが大切だと思っています。

そこには雇用環境の整備も含まれますし、これだけたくさんの企業がある中で、従来からお取引をしてくださっている方や新たに取引をしたいという方に、埋もれずわかりやすくメッセージを伝えられることも大事だと思います。洗浄剤にしてもコーティング剤にしても、今回は車業界についてしかお話ししませんでしたが、わかりやすくお伝えしたい。だとすると、「車好きな方、集まれ」という感じですね。

オンとオフを上手に切り替える

私自身、堅苦しいことが得意ではないので、やることをこなしたらあとは楽しく過ごしたいと思っています。趣味は写真を撮ることで、暑い中の出張も大変だなと思いつつ、小さなカメラを1つ持っていくと「行ったことのない町の写真が撮れるぞ」と楽しさに変換できます。こういうスパイラルをつくっていけると、結構楽しく仕事ができます。

休日に何をしていたかという話を聞かせてもらえると嬉しいですし、仕事ばかりしている人は仕事の伸びが良くない場合もあると思います。オンとオフをしっかり上手に切り替えられる人が、今後活躍する時代がやってきたのかなという気がしています。

まだ弱い発信力を強化したい

今一番悩んでいるのは、ホームページやSNSでの発信がまだまだ弱いということです。お客様に訪問して製品を見ていただくと「もっと早く知ればよかった」「なんでもっとPRしないの」とよく言われます。創意工夫という気持ちはあっても、そこの技術力が足りずアウトソーシングしているのが実情です。これが社内でできるようになると、理想の形で情報発信ができる企業体になれると思っています。

洗浄剤とコーティング剤をつくるということは、手段か目的かで言えば、今は私の中で目的になっています。ですが将来は手段にしていいはずで、良いものを多くの人にお届けすることで社会に貢献できる会社であるべきだというのが、理想の形だと思っています。

学生へのメッセージ

田舎にも、素晴らしい会社がある

我が家には4人の子どもがいて、4番目が今年の春から社会人になったばかりです。4人とも就職の時にどんな会社に入ろうかと本人なりに悩んでいた姿を、遠くから見守ることしかできませんでした。

ものづくりに限らず、日本には素晴らしい企業がたくさんあります。皆さんがよく目にするのは大きな企業体の情報がキャッチしやすいものだと思いますが、「そんなところにこんな会社があったのか」と思うような企業にも、素晴らしい組織運営や技術力、いろいろなアドバンテージがあるところがたくさんあります。

自分が就職する時になってからというよりは、普段から何気なく「どんな会社があるんだろう」とアンテナを立てていただいて、端っこの方で「田舎にOKUTANiって会社ある」と見つけていただけると、大変ありがたいなと思います。

編集後記

塗料卸問屋の跡取りとして、まったく違う畑から入社された奥谷様。洗浄剤という新しい事業の柱を打ち立て、今では自動車業界からの引き合いが一番多いというお話が印象的でした。新卒採用ゼロという課題に向き合いながらも、コロナ以降の働き方の変化をチャンスと捉える柔軟さや、写真という趣味で出張を楽しみに変える発想には、経営者としての軽やかさを感じます。「創意工夫と技術力で社会に貢献する」という理念のもと、これから発信力を強化されていく弊社の歩みに、私たち学生世代としても注目していきたいです。