インタビュー

「稼ぐ人・雇われる人・余る人」——就活氷河期に出会った言葉が、25年間ぶれないキャリアをつくった

「稼ぐ人・雇われる人・余る人」——就活氷河期に出会った言葉が、25年間ぶれないキャリアをつくった
PROFILE
ペレグレン・ウェルス・サービシス株式会社 代表取締役
山口 聰

ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社(PEREGRINE Wealth Services)代表取締役の山口聰さんは、証券会社を経て 2017 年に独立。「お金のかかりつけ医」をめざす IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として、富裕層の資産運用に向き合い続けています。人見知りの性格を逆手に取り、じっくりとお客様と向き合うスタイルで生き残ってきた山口さんに、キャリアの軸と金融業界の使命について聞きました。

キャリアの原点

「未来を語れる仕事」を選んだ理由

大学は法学部でした。法律って、過去の事例をもとに解釈していく仕事なんですよね。新しいものをゼロから生み出すというより、すでにあるものを読み解いていく。そういう性格の学問だなと感じていました。

その点、金融の世界は違う。先々のことは誰にもわからない。でも、自分の知識や判断力、勇気を使って仮説を立てて、わからないものに挑戦していく世界です。一言で言うと「未来を語れる仕事」だなと思って、金融業界に進もうと決めました。

就職活動の直前、野村證券出身の OB の方と話す機会がありました。ちょうどインターネットが出始めて、大学にパソコンが入ってきたころ。まだ全員が持っているわけじゃない時代です。その方から言われた言葉が今でも残っています。

「キャリアには 3 種類ある。稼ぐ人、雇われる人、余る人だ。自分がどれになりたいかを考えて仕事を選び、生きていきなさい」

氷河期でしたので、同世代にはフリーターになる方も多くいました。その状況の中で、自分の価値をどう活かすか。まずは組織に入りながらも、自分らしいキャリアの筋を一本通していこうと考えたのが原点です。

高級ホテルのバイトが教えてくれたこと

当時は本当にお金に困っていたので、賄いのあるアルバイトしか考えていませんでした(笑)。一人暮らしをしていた場所の近くに大きなホテルがあって、たまたまそこに採用してもらえたんです。本格的なフレンチやルームサービスを展開している、いわゆる高級ホテルでした。

そこがきつかった。アルバイトなのに、社員の方と同じレベルを求められるんです。でも後から考えると、バイトだからと分け隔てなく厳しく要求されたことが、ものすごくいい経験になりました。

お客様からすると、私がアルバイトか社員かなんてわからない。だから一人前に扱ってくれる。固定のお客様がついてきたりもして、おもてなしをする仕事にやりがいを感じられた。そのホスピタリティの経験を金融の世界でも活かしていこうというのが、私の仕事観の出発点です。

金融業界での25年

人見知りを逆手に取ったキャリア戦略

証券会社に入ってみて、周りの営業マンを見ていると、すぐ売ってくる瞬発力がある方が多かった。私にはそれができない。人見知りな性格もあって、じっくりお付き合いしながら深く仲良くなる方が得意だったんです。

そこで逆に考えました。じっくり関係を築いていけるスタイルは、転勤のない少数のお客様と長くお付き合いする仕事に向いているんじゃないか。富裕層の方を対象にした金融スペシャリストとして頼られる存在になる——そういうビジョンが、自分の中でパーッと形になっていきました。

なりたい自分の姿が見えたら、次は何が必要かを考えるだけです。富裕層の方は、かかりつけのお医者様やほかの専門家もいる。その中で金融の分野で信頼されるには、きちんとした知識と資格が必要だということで、勉強と資格取得を始めました。

本音で話せる立場を求めて独立

組織にいると、お客様のためを思って「今は少し投資を控えた方がいい」と感じていても、会社の指示が違えば言えないことがある。自分がやりたいホスピタリティをどこまで突き詰められるか考えたとき、最終的には独立しかないという結論になりました。

ちょうど時代の後押しもありました。私たちのような独立系の金融機関が作れるようになったのは、ここ 20 年ほどのことです。2012〜13 年ごろにその存在を知り、経営者のお客様を多く担当する中で成功者の方々を間近に見てきた経験も重なって、2017 年に独立・創業しました。

成功している方々に共通していたのは、「お客様のために徹底して役に立つ」という姿勢でした。その考えと姿勢に周りのスタッフが共鳴して、いい会社になっていく。その光景を横でたくさん見せてもらって、自分もそういう会社を作ろうと決めました。

IFAというサービス

お金のかかりつけ医とアスリートのコーチ

私たちが何者かを説明するとき、よく 2 つの例え話をします。

一つ目は「お金のかかりつけ医」です。急な病気のとき、真っ先に誰に頼るかを考えますよね。お金について相談したい場合においても、本当に困ったときに真っ先に思い浮かべてもらえる存在でありたいと思っています。そのためには、きちんとした知識と実績が必要です。

二つ目はアスリートのコーチです。どんなに優れたオリンピック選手でも、コーチをつけますよね。コーチの役割って、技術を教えることよりも、その選手の目標までの時間軸を管理することだと思うんです。どんな食事が必要か、どんなトレーニングメニューを組むか——第三者の目で横に立って管理する存在ですよね。

資産運用も同じで、一人ひとりの時間軸も資産額も収入も違う。情報が氾濫している今、一人一人の考えや状況に合わせて計画を立て、見守り、管理してくれる人が横にいる。これって、絶対に必要だと思うんです。そういう役割を、私たちはきちんと意識してサービスとして提供しています。

ビジョンと若者へのメッセージ

資産運用は「したい人がやるもの」じゃなくなった

日本でも 2023年ごろからインフレと金利がある時代になって、過去 30 年とはがらりと変わりました。これまでの金融理論やシミュレーションはあの 30 年に作られたものですから、前提が変わってきています。そして本格的なインフレの時代になり、資産運用はやりたい人だけがやればいいという話ではなくなっています。全員にとって必要な時代になったのです。

だから私たちの役割の重要性がますます高まっていると感じています。金融商品を売って稼ぐことが目的ではなく、お客様一人ひとりの役に立って感謝される。将来に向けて安心できた、使えるお金の余裕ができた、生活が楽しくなったという方が増えると、経済も良くなると思うんです。

日本の全員に必要とされる、公共性の高い使命感ある仕事だと思っています。そのやりがいに共感して、世の中のために働きたい人が増えてくれればいい。その先頭ランナーになりたいですね。

一つひとつの「点」を、いつかつながる「線」として積む

若い方へのメッセージとして、いつも考えていることがあります。なんでこんな苦しいことに出会うんだろうとか、どうしてこんな困難があるんだろうと感じることは、誰でもきっとあると思います。その経験は、そのときだけ見ると「点」にしか見えないかもしれません。でも、自分のなりたい姿やビジョンという「一筋」を持っていれば、その点がいつか線につながります。

後から考えると、あの経験が必要だったんだと思える日が来る。それを信じて前向きに取り組んでほしいんです。

私自身も実感があります。リーマンショックのころ、キャリアアップを考えましたが転職市場が全部クローズしてしまって、その時縁があった会社での仕事が、営業職ではなく、研修業務の担当でした。資料作りも、人前でしゃべることも、何もできなかった。営業ならできるのにと思いつつ、でも必死に頑張った。それから約8年後、起業したときにその経験があったから事業計画書が書けて、プレゼンができた。あの時の経験がなかったら、独立できていなかったとすら思います。

たとえその時は何の役に立つかわからなくても、しっかりやっておく。その経験を役に立たせようとする強い意志を持つ。無駄なことは何もないということです。

一緒に働く仲間に伝えたい 3 つのこと

弊社に入っていただく方に、最初に必ずお伝えしていることが 3 つあります。

一つ目は、理念に共感してほしいということ。金融はセールス業ではなく、サービス業です。お客様のために尽くして、その対価をいただいて社会に貢献していく。やりたいことや精神的な部分を大事にしてほしい。

二つ目は、当たり前のことを当たり前にしてほしいということ。挨拶、連絡、報告、相談。チームは人と人のつながりですから、周りに対してできないことがお客様に急にできるわけがない。基本動作で信頼関係を作ることが、全ての土台です。

三つ目は、自己実現をしてほしいということ。弊社で仕事をすることで、いい人生だったと思えるように。お金持ちになりたい、旅行やプライベートを楽しみたい、スペシャリストとして尊敬されたい——何でもいいです。そういう自己実現を、ぜひ弊社を通じて果たしてほしいと思っています。

この 3 つに共感できる方は、ぜひ一緒に新しい金融機関を作っていきましょう。

編集後記

山口さんのお話を聞いて、「軸のある人間は、迷いの見え方が違う」と感じました。就職氷河期という逆境の中で、OB から聞いた「稼ぐ人・雇われる人・余る人」という言葉を自分事として受け止め、25 年間ぶれずに来られたのは、その言葉を本当の意味で咀嚼していたからだと思います。リーマンショックで苦しんだ経験も、「何の役に立つかわからないけど、しっかりやっておく」という姿勢があったから、起業の糧になった。私たちはつい「将来に直結すること」だけをやりたがりますが、山口さんのお話を聞いて、今目の前にあることを全力でやり切ることの大切さを改めて感じました。ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社の取り組みは、これからの日本に本当に必要なものだと感じます。