インタビュー

モノづくり革新の追求が生んだ「世界初のAI」 ―― AIと呼ぶ条件は「判断ができること」――

モノづくり革新の追求が生んだ「世界初のAI」  ―― AIと呼ぶ条件は「判断ができること」――
PROFILE
株式会社PLMレボリューション 代表取締役社長
加藤 幸司

要求定義を軽視したシステム開発はなぜ失敗するのか

私は製造業のPLM(製品ライフサイクル管理)システムの開発現場で長くキャリアを積んできました。目標の成果に届く機能を開発できるかどうかは「要件定義(システム要件)」ではなく「要求定義(業務要求の定義)」で決まります。莫大な投資にもかかわらず成果が見えないシステム導入が散見される中「常に他社の一歩先を行くこと」「改善ではなく革新すること」この言葉を胸に走り続けてきました。定年後、ノウハウをまとめた書籍の出版などを通じ、多くの企業が類似ツールによる「作業支援」ばかりに注力し「真の差別化を実現できていない現実」について「警鐘」を鳴らし続けています。

世界初の「総合判断AI」特許を取得 (特許第7124259号)

他社との差別化を実現するためには、企業が築き上げてきた技術やノウハウという「知的資産」を、業務支援システムに利用できる形でデジタル化する必要があると考えています。また、人に依存してきた業務の自動化も重要であり、人と「同等レベルの機能」を持たせるためには「デジタル化した知見」と、これらを基にした「総合判断機能」が必要であると考えました。 そうして生まれたのが、人が持つ「複数の判断材料」を総合的に考え「最善を判断する能力」の情報処理化に成功した「総合判断AI」特許技術です。既存プログラムでは不可能だった総合判断を、新たな情報処理の方法として日本の特許を取得し、現在はUS特許の特許査定が下り、特許証の発行手続き中です。このノウハウを産業の変革に役立てるべく、IT・AIコンサルティング事業に注力しています。

生成AIと「判断ができるAI」の圧倒的な能力差

現在「AI」と言えば生成AI(LLM)を思い浮かべ「自ら判断する機能がある」と誤解されがちです。しかし生成AIは確実な論理推論ではなく、学習データに基づく統計的確率から「もっともらしい情報」を合成する仕組みであり「判断する機能」はありません。 弊社の総合判断AIにも「自ら考える機能」はありませんが、論理に基づいた明確な「総合判断」が可能なため「AI」と呼称しています。仕組みは非常にシンプルですが、この本質的な違いをご理解いただくのが最大の壁となっています。

自動運転の倫理的課題も解決するシンプルな仕組み

総合判断AIは、産業機器、ロボット、自動運転車などへの組み込みも可能です。現在の自動運転技術は、膨大なデータ学習と高性能なGPUを要し、事故時の責任がメーカーに問われる点が開発のハードルになっています。 対して「総合判断AI」は、ドライバーの意思(例:自分の怪我は軽傷までは許容するから、関わる人の怪我の程度を最小限にしてほしい)を基にした「総合判断による操作」が可能です。(大手自動車メーカー2社の展示会に出展・提案済み)各種センサー情報を総合的に処理するだけなのでパソコンのCPUでも十分に機能します。ドライバーの責任と設定で走るため「AIのブラックボックス化」や「トロッコ問題」といった倫理的課題にも抵触しません。地方の高齢者へ安全なモビリティを届ける一助になると確信しています。

環境変化に対応する「運用世代管理」と現場主導のシステム開発

設計現場の課題も解決可能です。私は30年以上前、技術、規定、機能などの「変化する要素」をテーブル化し、運用の世代ごとに管理する「運用世代管理」の仕組みを実現しました。運用世代を示すコードを部門やファイルに割り当てることで、部門単位、ファイル単位での新規定や新機能活用の移行制御を実現しました。このように、成果に届くシステムの開発には「現場の担当者が持つ業務要求(解決策など)を明確化すること」が重要です。現場の深い知見がなければ、成果を生む要求は定義できません。私自身、IT知識ゼロでPLM開発に参画しましたが、モノづくりの実務経験があったからこそ、目標を達成する仕組みを生み出せたのだと実感しています。

若い世代へ 「たった一度きりの大冒険」を楽しんでほしい

今年に入り、AIの仕組みを伝えるHPを「簡単なイメージと数行の言葉」というシンプルな発信に切り替えたところ、ベトナムの企業から7件ものご相談をいただくなど反響が増加しました。世界への広がりを感じる一方、日本企業からの反応が薄いことには一抹の寂しさも感じています。日本の企業が「競合他社の一歩先を行く」ためには、自社を知り、他社を知る必要があります。積極的に情報を集め、対応を考え、行動に移してほしいと願っています。

若い方々は、すでに必要なものが揃った時代を生きています。環境が完成されているからこそ、ゼロから新しいことに挑むのが難しく見えるのかもしれません。しかし、ビジネスや技術の世界にはまだ変えられることが山のようにあります。人生はたった一度の大冒険。恐れることなく自分なりの冒険を見つけ、全力で楽しんでいただきたいと思います。

編集後記

今回、加藤さんにお話をお伺いして、AIという言葉のとらえ方が私の中で大きく変わりました。生成AIが「確率で言葉を選ぶ仕組み」であるのに対し、総合判断AIは「判断する仕組み」を目指しているという違いは、これまであまり意識したことがありませんでした。ものづくりの現場で培われてきた知見を、特許という形で世界に開いていく姿勢もとても印象的でした。学生である私自身も、目の前の一つのことに全力を注ぐ大切さを改めて感じる時間になりました。貴重なお話をありがとうございました。