インタビュー

インテリアデザイナーを、選ばれる職業に。サラダボウルカンパニーが見据える未来

インテリアデザイナーを、選ばれる職業に。サラダボウルカンパニーが見据える未来
PROFILE
株式会社サラダボウルカンパニー 取締役 / 広報責任者
鈴木寿治

デザインを手段に、価値を届ける

表面だけでは終わらせない

鈴木:株式会社サラダボウルカンパニーで取締役を務めております、鈴木寿治と申します。私は創業から少し経ったタイミングで、コーポレートや採用・人事、広報の領域を担当する形で参画いたしました。ですので、創業の経緯そのものは代表の桑野の言葉でお伝えしたいのですが、事業内容やこれからのビジョンについては、私からお話しできればと思います。

弊社は、商業施設や路面店の空間デザインを手がける会社です。カフェや飲食店、物販、アパレル、インテリア用品などを扱うブランド様の空間づくりを担当し、インテリアデザインから設計、施工までを自社で行っています。設立は2022年7月です。

弊社の特徴は、表面的なデザインや意匠だけで勝負をしていないところにあると思っています。お客様やブランド様に深く関わり、理解を極限まで深めたうえで、総合的な提案をしていく。「このような見た目にしてほしい」というご要望よりも、ビジネスモデルからしっかりと考え、レイアウトや店舗のあり方まで踏み込んでご提案し、そこから伴走していく。それが弊社らしさだと感じています。

デザインは、私たちにとってひとつの手段にすぎません。本当に届けたいのは、体験そのものの価値です。店舗の空間設計を通じて、事業や人の可能性を広げていくことを、日々目指しています。

 

デザイナーと経営者、その両方である難しさ

桑野:一番難しいと感じるのは、デザイナーと経営者という、異なる判断軸を持つ立場を同時に担っていることです。

本音を言えば、一つの案件にじっくり向き合い、デザインから図面、施工の段取り、職人さんとのやり取りまで、すべて自分で関わりたい。欲を言えば、自分でつくるところまで含めて、一から十までやりたいくらいです(笑)。完成した空間はもちろん、そこに至るまでの試行錯誤も含めて、この仕事が好きなのだと思います。

ただ、自分一人ですべてを抱えていては、何も進まない会社になってしまいます。それでは、つくれる空間にも、届けられる価値にも限界がある。経営者として会社の未来を考えると、自分がどこまで手を動かし、どうチームと向き合うのか。その境界線には、今も迷いがあります。

以前は、自分が最初から最後まで関わることが、良いものをつくるために必要だと思っていました。でも今は、仲間と一緒に考え、それぞれの視点や得意なことを重ねることで、一人ではたどり着けなかった答えが生まれると感じています。何より、みんなで悩みながら一つの空間をつくっていくことが、純粋に楽しい。その経験が一人ひとりを成長させ、チームとしての強さにもつながっていくのだと思います。

会社を大きくしたいのも、仲間と一緒に、もっと良い空間をつくり、もっと多くの人にデザインの力を届けたいからです。空間は、人の気持ちや行動を変え、お店や会社の未来まで変えられる。それほど大きな可能性を持つ仕事だと思っています。その価値が日本では十分に伝わっていないと思いずっと悔しさがあります。

だからこそ、自分たちが良い仕事を積み重ねることで、インテリアデザインの価値をもっと世の中に伝えていきたい。日本でデザイナーの職位が上がり、様々なデザイナーが活躍できる会社と業界をつくること。それが、経営者としての自分の想いだと思っています。

 

未経験だからこそ見える視点

鈴木:私自身は、もともとはWEB業界でディレクターをしており、その前はアパレル業界でバイヤーをしていました。インテリアとはまったく異なる分野からこの業界に入ってきましたが、もともとインテリアには興味があり、業界未経験だからこそ見える視点や、クライアント目線をしっかりと現場に落とし込むことを、日々の会議などでも意識しています。

「ごちゃまぜ」に込めた、業界を変える思い

鈴木:インテリアデザイン業界の立ち位置を上げたいという思いは、個人としてもとても強く持っています。他業界からこの業界に入ってきたからこそ、感じる部分でもあります。

よく聞かれるのは、社名の「サラダボウル」には、いわゆる「ごちゃまぜ」という意味を込めています。弊社はIT業界やアパレル業界出身の人材もいれば、さまざまなバックボーンを持つメンバーを採用し、今までにない提案や総合力のある提案をしていきたい。案件についても業種を限定せず、幅広い案件に対応できるようにしたい。そういった思いも込めて、この社名を付けました。ひとつの業種や業態に属する人ばかりが何十人、何百人と集まると、どうしても考え方や視点が偏ってしまいます。多様なメンバーが集まることで、新しい可能性が生まれると考えています。

次の軸は「住空間」

20人、30人の組織へ

鈴木:現在は9名ほどのメンバーで運営しています。今後業界を変えていくためには、規模をしっかりと大きくしていくことが欠かせないと考えており、1年後、2年後、3年後には20人、30人規模の組織にすることをまずは一つの目標にしています。

商業施設から住空間へ

現在は商業施設や商空間をメインに手がけていますが、今後のもう一つの軸として考えているのが住空間、つまり住宅です。商業施設のデザインは、どうしても業界内でしか広がらず、より一般の方へは広がっていきにくい面があると考えています。一方で住空間であれば、誰もがいずれ自分ごととして捉えられるテーマです。「将来、こんな家に住みたい」と思ってもらえることで、マス層へのアプローチができ、業界全体の認知も広がっていくのではないかと考えています。また、まだ自分たちが十分に取り組めていない領域だからこそ、そこに挑戦することが、他社との差別化にもつながると考えています。

軸を持てば、仲間が集まる

鈴木:ビジョン図鑑を見ている学生の皆さんに向けて、お伝えしたいことがあります。人生には、いろいろな苦労やぶつかる壁があると思います。それを乗り越えていく要素として大切なのは、会社の思想や自分の夢、スローガンのようなものをしっかりと掲げ、自分の軸を持つことです。

自分なりの軸を持つことで、その思いに共鳴してくれる仲間が集まり、それが良い会社やチーム、そして良い仕事につながっていくと思っています。だからこそ、自分の思想や夢をしっかりと持って、日々の仕事に向き合ってほしいです。自分自身も、ビジョンを持って発信することで、応援してくれる人や、一緒にやりたいと言ってくれる仲間の声をもらうことが本当に多くあります。社内でもそうした思いを共有できることで、チームとして同じ目標に向かって走っていける実感があります。だからこそ、自分が何を大切にして、どこを目指すのか。その軸を持つことは、とても大切だと日々感じています。

編集後記

今回のお話でとくに印象的だったのは、インテリアデザイナーという職業の地位を上げたいという鈴木さんと桑野さんの思いです。ふだん何気なく利用しているお店や空間が、じつは大きな想いのもとに設計されていると知り、見え方が変わりました。異業種から飛び込んだからこそ見える視点を大切にする姿勢は、これから社会に出る私たちにも通じるものがあると感じます。住空間という新しい軸への挑戦も、今後ぜひ注目していきたいです。