インタビュー

内装設計からホテル、そして独立へ。宿の現場を知る私が、旅行業界の人手不足に挑みたい理由

更新: 2026年10月30日
内装設計からホテル、そして独立へ。宿の現場を知る私が、旅行業界の人手不足に挑みたい理由
PROFILE
株式会社シークエンス 代表取締役
堀口 祥史

設計事務所からホテル業界へ

設計の世界で芽生えた独立心

弊社はいま、ホテル向けのコンサルティングとホテル向けの人材紹介を主におこなっています。私も前職はホテルに勤めていて、レベニューマネジメントという業務を担当していました。ただ、一番最初の仕事は内装設計で、設計事務所に勤めていたのです。設計の世界は、最終的には独立して自分の事務所を起こすのが基本のゴールという流れがあります。なので、いずれは一人でやってみたいという思いをずっと持ちながら、会社に勤めていました。

いくつもの機会が重なった

独立のきっかけは、いくつかのタイミングが重なったことです。ひとつは、人材紹介や人材派遣の会社を営んでいた母が体調を崩し、今後のことを考え始めていたこと。もうひとつは、ホテルに勤めていたころの取引先などから「個人的に手伝ってくれないか」というお声をいくつか頂戴していたことです。タイミングなのであれば、せっかくですし、昔から抱いていた一人でやってみたいという思いもあり、独立に踏み切りました。

ホテルの売上拡大を支える

設定代行とコンサルの両輪

いまの事業は、ホテルの経営コンサルティングに近いものです。コンサルティングで入っているホテルのオペレーターさんには、当然コンサルティングをおこないます。それ以外にも、実務では専門的な知識が必要なシステムの操作や設定があるのです。たとえば、楽天やじゃらんといった旅行サイトに掲載しているホテルの設定などです。ただ、そうしたスキルをすぐに身につけたり教えたりするのが難しい会社や、専任の人材を雇うほどの体力がない会社もいらっしゃいます。そうした方々に向けてシステムの設定代行を弊社で請け負い、コンサルティングとあわせて販売支援やノウハウの提供をおこなうことで、売上拡大をサポートしています。

人材紹介から予約の仕組みまで

ホテルが抱える課題のひとつに、まさに人材不足があります。そのため、クライアントさんから「こういった人材はいないか」というご相談を受けることがあり、発生ベースで人材のご紹介もさせていただいています。さらに、まだ走り始めの段階ではありますが、旅行業界に向けた予約のプラットフォームなどの仕組みを開発し、世の中に提供していく取り組みも徐々に進めています。

苦労の先に見えた課題

コロナ禍は共倒れの危機

創業してから苦労したことでいうと、やはりコロナ禍は非常に大変でした。旅行業界はとくに大きなダメージを受けてしまったので、その中での会社の維持や、そこからのリカバリーには苦労しました。クライアントさんが倒れてしまったら、弊社も共倒れになってしまいます。そういう意味で、あの時期は会社としても本当に踏ん張りどころでしたし、非常に苦労していたのを覚えています。

即戦力を育てる難しさ

クライアントが増えるにつれて、サポート体制のリソース不足も継続的な課題になっていきます。弊社の業務はシンプルなものではなく、ノウハウやテクニックを駆使してご満足いただくサポートです。仮に新しいスタッフが入ったとしても、いきなり表に出てコンサルタントとして即戦力になるのは難しいのです。かといって、弊社もそこまで大きな会社ではないので、トレーニングに割けるリソースも限られています。そこは課題でもあり、苦労している点でもあります。

スキルの偏りという課題

弊社のスタッフは、ご紹介や知り合いベースで集まったメンバーが多いです。そうなると、私が以前携わっていた業務に近い経験を持つ方が中心になります。私の業務を引き継ぐ方はいても、営業やセールスといった対外的なポジション、さらにはシステム開発を担える人材となると、まだバランスがよいとはいえません。どちらかというとコンサルタントのスキルに特化したチーム体制なので、そこはいまも課題として捉えています。

AIで旅行業界を底上げしたい

まずは自社業務のシステム化

業界全体でも、そして弊社自身もリソースに課題を感じているので、人数を増やすことも並行して考えています。ただ、いまの流れでいうと、目指しているのは業務のシステム化やDX、AI化です。まずは社内の業務を軽減できる仕組みの開発に、まさに着手しているところです。弊社の業務は外部に商品として提供しているものなので、自分たちの業務がシステム化、AI化できれば、その仕組み自体を外へ持っていって販売するといったソリューションの提供も考えています。

地方の宿を支える存在に

そうすることで、弊社だけではなく、旅行業界の人手不足の解消にも貢献していきたいと思っています。こうした仕組みはなるべく安価に提供し、地方の宿泊事業者さんや、ご年配の方が営んでいる旅館などを支えたいと考えています。そういった宿が日本の旅行業からなくなってしまったり、少なくなってしまったりするのは問題だと思うのです。システム面からサポートすることで、将来的には旅行業界そのものの底上げに弊社も関われたらいいなと思っています。

海外と日本をつなぐ人材交流

もっと将来的な話をすると、人材紹介の分野で挑戦したいことがあります。私は学生時代にアメリカへ留学しており、アメリカの大学を卒業して日本に帰ってきたとき、日本で職に就くのが当時は非常に大変だったのです。いまほど情報インフラが整っていなかったこともあり、せっかく海外で得た経験やスキルを活かせる職場となかなかマッチしませんでした。だからこそ、日本から海外へ行く方や、海外から日本に戻って仕事を探す方など、インターナショナルな人材交流のサポートができたらと思っています。

学生へのメッセージ

経験は会話の種になる

幸いなことに、私は学生時代に海外へ行ったり、日本でもいろいろな方と出会ったりし、さまざまな経験をさせていただきました。そうした経験がいまの業務に直接つながっているかというと、ほぼそうではないのですが、ただ、クライアントとコミュニケーションを取るときや、新しい方々と出会うとき、当時のおもしろかった経験や自分がやってきたことは、みなさん食いつきがよく話題の種になるのは喜ばしい確かな瞬間です。よって相手との関係が円滑になり、心の距離がぐっと近づくことは本当によくあります。

肩書きより魅力ある人に

いろいろな経験をして、いろいろな方と触れ合ってほしいと思います。とくに自分たちのコミュニティではない年齢層の方々と積極的に関わることで、いずれその話がネタとなり、トークテーマとなって、さまざまな方とコミュニケーションを取れるようになるはずです。いまの私も含め、中年世代とは基本的に話すことが好きなのですよね。そのような場で、役職や肩書きではなく、魅力的な人間として捉えていただける。そんな話ができる人生を送れたら、それだけで十分ではないかと思います。

編集後記

内装設計からホテルのレベニューマネジメント、そして独立と、一見ばらばらに見えるキャリアが、宿泊業界を支えるいまの事業へとつながっていることに驚きました。とくに印象に残ったのは、コロナ禍の苦労やチームのスキルの偏りといった課題を率直に語りながら、それをAIやDXで乗り越え、地方の旅館まで支えようとする視点です。自社の課題解決をそのまま業界への価値に変えていく発想は、学生起業を少しかじっている私にとって大きな学びとなりました。「経験は会話の種になる」という言葉を胸に、年代の違う方との出会いを大切にしていきたいです。