インタビュー

ゴミ拾いからギネス記録、そしてロボットづくりへ。振れ幅の大きさが挑戦の証

ゴミ拾いからギネス記録、そしてロボットづくりへ。振れ幅の大きさが挑戦の証
PROFILE
ユニロボット株式会社 代表取締役社長
酒井 拓

学生時代は熱中と迷走の連続だった

バスケとゼミに打ち込んだ

学生時代は、バスケットボールとゼミの活動に打ち込んでいました。慶應義塾大学の経済学部で、マクロ経済を扱うゼミに所属していて、地球環境問題について勉強していたんです。ゼミでは、費用対効果のシミュレーションを入れた新しい環境リサイクルシステムの提案を大学に対して行ったり、様々なごみ問題に関するフィールド活動や他大学との交流等を積極的に行い、机に向かって研究に没頭するというより、足を使って現実問題に即した提案をしていくような、社会人的に言えば「実務ベース」の取り組みを中心に行っていました。振り返ってみると、こうした学生時代での研究スタイルが後の社会人になってからも、大きく役に立ったなと感じています。

ゴミ拾いボランティアの輪が、新しいギネス記録への挑戦につながった

社会貢献という側面において、社会人になってからも関心があり、色々とチャレンジをしていたのを思い出します。2000年に住友商事株式会社に入社して、平日は仕事、土日は交流会や勉強会を開催したり、また数年後には、NPO支援や環境問題に関するゴミ拾い活動にボランティアとして取り組んでいました。2007年~2008年にかけて、NYに1年半駐在したときに始めたマンハッタンを綺麗にしようプロジェクト、通称「ゴミュニケーション」という、マンハッタンの周辺を綺麗にするゴミ拾い活動が当時現地でそれなりに反響を呼んで、メディアにも多数取り上げ頂いたことをきっかけに、2009年に帰国後も、当時はMIXIというSNSの掲示板に募集をかけて、隔週にに表参道周辺でゴミ拾い活動を続けていて、日本でも、「ゴミュニケーション」という集まりを立ち上げたんです。ゴミ拾いをしながら、楽しくコミュニケーションを取って、友人の輪を広げるという意味合いです。季節に応じたイベントも工夫を重ねて、冬になると他の団体と一緒にサンタクロースの格好でゴミ拾いをして、子どもたちにプレゼントを渡すみたいな、季節に合わせたレクリエーションも取り入れていましたね。この活動が毎回100名前後集まる大きな輪へと次第と発展していきます。

そして、この活動で人が集まってきたことから、今度は新しい挑戦を掲げようと考え、どうせやるなら他の人がやらないような大きなことへのチャレンジ、それがギネス記録に挑戦しようということになったんです。ここからが大変でしたね(笑) 結果的に沢山のドラマが生まれ、2010年には世界最大の二人三脚で50メートルを走る(当時304人305脚)、2011年には世界最大人数での二人三脚レース(1000人以上)というギネス記録に二つ挑戦しました。最大限リスクを自分でとり、自分が代表として会を発足させ、本当に沢山の人に協力を頂いた結果、2つとも見事に成功させ、多数のメディアにも取り上げていただきました。こうした成功体験は、本当に大きな自信にもなりました。今でも忘れられない思い出です。

こうやっていろいろな活動を積み重ねていくなかで、次第に社会に貢献していきたい意識が強くなり、2011年以降は徐々にNPO活動をしている人の支援や集まりを作っていきました。その結果、いつか起業してみたいと思うようになり、どうせやるならイノベーションを起こせるような技術を生み出したいと夢をみるようになり、その着眼点として、「ドラえもんのようなロボットをつくりたい!」という思いが芽生えて、それがのちの創業につながっていきます。

ニューヨークで九年を過ごした

父の駐在についていった

私は高校時代までニューヨークにいて、慶應義塾大学のニューヨーク学院の三期生なんです。小学五年生のときに、父の仕事の駐在についていくかたちで渡米しました。もちろん最初は英語を話せなかったので、現地の学校でESLのクラスに通ったり、プライベートレッスンを受けたりしながら勉強しました。

その後、高校卒業までの七年半に加えて、住友商事時代にもニューヨークへ一年半ほどトレーニーとして駐在する機会があり、あわせて九年、ニューヨークで過ごしたことになります。駐在の期間には、New York UniversityのビジネススクールでITを学ばせてもらう機会もありました。

住友商事で十五年、大型プロジェクトに携わった

IT企画推進部で経験を積んだ

住友商事には十五年ほど在籍していて、IT企画推進部という部署で、グループのIT戦略やシステム導入を実行する仕事をしていました。在籍中は、プロジェクトマネジメントの勉強にも力を入れて、会社の連結会計システムや予算会計システムといった基幹系システムの導入から、デリバティブなど金融派生商品のシステム開発など、複数の大型案件のPM・PMOを担当してきました。最後に携わっていたシステムは二十数億円規模のプロジェクトで、アクセンチュアさんといったパートナー企業等とチームを組んで進めていました。

米国住友商事でも一年半ほど駐在して、カナダや南米も含めた米国住友商事グループ全体に対するIT施策の実行をPM補佐として担当していました。住友商事グループは連結で八百社を超える規模で、その全体を見ながらIT戦略や基幹系システム導入のPM・PMOを中心に担ってきたのが、この十五年の経歴になります。

自分で新しいことに挑戦したかった

住友商事を辞めた理由は、単純に自分で会社をつくって、イノベーションを起こせるような新しいチャレンジをしたいという思いが強くあったからです。もともとゴミ拾いやNPO支援活動など、直接目に見える形で社会貢献をしていきたい思いが強くあり、社会貢献をするならば、新しい技術革新の領域で、住友商事での経験も踏まえ、IT分野と考えました。そこで考え付いたのが、「ドラえもんのようなロボットを作って、各家庭に届けたい!」という当時無謀に思われてもおかしくない夢を掲げて、走り出したことです。日常生活の中に、ロボットと対話するシーンがいずれ将来、必ず訪れると信じて、具体的なビジョンを描き、親族と相談して会社を立ち上げました。それが、次世代型のソーシャルロボットuniboという製品につながっていきました。会社を創業してから10億以上の資金調達に成功し、完成したuniboは、数多くのテレビや新聞等に取り上げられ、変なホテルさんのコンシェルジェロボットとしてや、様々なホテル、病院、介護施設、会社の受付、時には学校の先生役になったり、さらには家庭向けなど、全国に数多く導入されていき、多くの反響を呼びました。

AIとBPOのハイブリッドで電話を支援する

AI電話サービスを軸にしている

いま主として取り組んでいる事業は、AI関連とBPO関連にシフトしています。AI開発では、通称「ボイスボット」と呼ばれているAIの電話自動化サービスを幅広く手がけていて、インバウンド・アウトバウンドコールの両方に対応しています。人と会話するようにAIが受け答えして、アポイントメントの獲得やリマインドコール、督促電話など、様々な電話応対シーンを人の代わりに代替しておこなうものです。「一番を押してください」のような自動音声IVRではなく、AIがその場で会話を生成して話すところに取り組んでいます。

これに加えてAI議事録ツールの提供や、生成AIやAIエージェントのオーダーメイドのAI開発事業もおこなっていて、AIについての壁打ち相談、要件定義から簡単なPoCの手前まで、完全無料でご提供しています。開発メンバーにはAI開発を得意とする東京大学や慶応大学卒で松尾研究室出身のメンバーや、他で表彰を受けてきたメンバーなど、力のあるAIエンジニアを複数入れてチームを組んでいて、スタートアップから大企業まで幅広く支援しています。

加えて2025年からはBPO、いわゆるバックオフィス支援にも力を入れていて、2025年から格安のテレアポ代行サービスを開始しました。スタートアップや中小企業向けに、LPやウェブサイトの制作、FAX・SMS送信代行、資料制作の代行など、面倒な業務を市場価格より安くまとめて請け負う「BPOシリーズ」を展開しています。AIによる自動化と、人によるヒューマンリソースを掛け合わせたハイブリッドなBPO支援を、会社全体でおこなっているところです。

電話をまるごと支援できる会社にしたい

国内でも、AIによる自動電話サービスと、人によるテレアポ代行やコールセンター、カスタマーサクセスといった電話対応を、両方ハイブリッドで支援している会社はほとんどありません。あらゆる電話応対をAIと人で解決していくというところに、私たちの強みがあると思っています。少子高齢化で人手不足が進むなかで、まずはこの電話対応の領域を切り口に支援を広げていきたいです。

そこから派生して、AIの開発やAIエージェントの実装提案もどんどんおこなっていきたいと考えています。単なる経費節減のためのDX化ではなく、お客様の売上に貢献する強いAIを提案していく、というのが私たちのコンセプトです。

AIは自分の秘書のような存在になる

日本ではまだAIの導入が遅れていると感じていますが、調査や資料作成、画像・動画生成といった業務は、すでに多くの会社でAIに任せる流れになってきています。開発の現場でも、作りたいシステムをプロンプトで伝えると、ある程度のコードが生成されるところまで来ていますよね。これが進化していくと、AIがほとんど自分の秘書のような役割を果たしてくれて、一人で二人分、三人分の仕事ができるようになっていくと思います。

人との壁打ちにかけていた時間をAIとの壁打ちに置き換えて、効果的に資料を作成したり、提案をしたりする。AIが自分の秘書として、あるいはパートターとして人を支援する時代になり、業務効率化や利益貢献にAIが当たり前のように貢献していくようになるんじゃないかと思っています。

音声で指示するだけでロボットが動く社会を描いている

私たちは音声テクノロジーを介して、AIのコミュニケーションのあり方を再定義しようとしています。コールセンターをはじめ、あらゆる種類の電話応対をAIで置き換えていける技術を持っていて、それは人とAI、両方のハイブリッドという意味でもあります。

電話だけでなく、音声で指示をすればシステムやロボットが動く、いわゆるフィジカルAI的な社会実装も広げていきたいと考えています。パソコンやキーボードが不要になる時代を見据えて、音声テクノロジーの進化でコミュニケーションのあり方を大きく変えていく。それが、私たちの将来的なビジョンです。

学生には小さな挑戦を積み重ねてほしい

学生さんには、小さくまとまらず、広く挑戦をしていってほしいと思っています。若いうちはできるだけ限界を自分で作らず、自分がやってみたいことや、達成したいことに、小さなことからでも全然良いので、成功体験を積んでいってほしいですね。失敗しても何度でもやりなおせば良いので、とにかく行動してみることから、そして、挑戦することを前向きにやってほしいなと思います。

社会人になると、大きな会社に入社すると努力してきたプロセスも評価されますが、私たちのようなベンチャーだと、プロセスより結果が重視される世界です。学生さんから見ても、結果を出している人がメディアやSNSでも注目が集まりやすく、すごいと感じやすいと思いますが、どうせ挑戦するならば、失敗を恐れずに結果にこだわって挑戦してみる大胆さも大切です。何をしたら結果が出るのか、何をしたら結果が出ないか、色々と試行錯誤していく過程の中で、勉強になることは沢山出てきます。その意味では、経験に勝るものは無いと思います。

学生時代はお金や資材以上に、時間や若さ、フットワーク、熱量を存分に出せる、長い人生のスパンの中でも、黄金の時期だと言われていますよね。この黄金の時期に、失敗を恐れるのではなく、まずやってみたいことから取り組んでいってほしいですね。

編集後記

今回、酒井さんのお話を伺って、ゴミ拾いから始まった活動がギネス記録につながり、さらにドラえもんのようなロボットをつくりたいという思いが創業に結びついていく流れがとても印象的でした。結果にこだわりながらも、まずはフットワーク軽く挑戦してみるという姿勢は、これから社会に出る学生にとって大きなヒントになると感じます。私自身も、小さな一歩から旗を上げてみることを大切にしたいです。貴重なお話をありがとうございました。