インタビュー

「世界に挑む」を本気で語るIT社長が、群馬から仕掛ける地方革命

PROFILE
株式会社TheNewGate 代表取締役社長CEO
松下宇流麻

野球少年が抱いた「爪痕を残したい」という衝動

坊主が嫌で野球をやめた

中学まで野球に打ち込んでいたのに、高校進学のタイミングでスパッとやめました。理由はシンプルで、坊主にしたくなかったから(笑)。そこから草野球に移ったんですが、そこで今の恩師となる方にであいました。

当時、某大手企業の経営コンサルティングをされていた方なんですが、私は高校生のころから、その方の後をついて回っては学ばせてもらいました。「1回きりの人生、爪痕を残したい」という思いをずっと伝えながら。

ITとの運命的な出会い

その方から教わったのが、「これからはITの時代になる。何か成し遂げたいなら、その業界に身を置け」という言葉でした。

当時はまだ企業がホームページを作り始めたばかりの時代。それでも私は高校在学中からアニメが大好きだったので、自分でアニメのメディアサイトを立ち上げて、ライティングも含めて一人で運営していました。「何かでかいことをやりたい」という衝動と、ITという武器が、そこで初めてつながった感覚がありました。

一度も就職せず、個人事業からスタート

名刺交換会から始めた仕事

卒業後に会社に入ったことは、一度もありません。当時から名刺交換会などに参加してさまざまな企業の方と出会い、Web制作の案件を自分で受注するかたちで仕事をスタートさせました。

肩書きには全く興味はありませんでした。大きな企業に入った方が世の中にインパクトを残せるんじゃないかとも考えましたが、私はとにかく自由人なので、自分のやり方で独自路線でやりたいという気持ちが決め手になりました。

会社設立のきっかけは「デジタルツイン」

株式会社TheNewGate(ニューゲート)を設立したのは 2018 年。そのころ、物流向けの IT ソリューションプロジェクトに参画していまして、それが今で言うeコマースの業界と密接に関わっていたんです。

楽天や Amazon で買い物をしようとしても「クレジットカード情報を入力するのが怖い」という時代でした。でも私はそのとき、オンラインショッピングという概念がやがてオフラインの世界と融合していくと直感的に感じ、その予感を自分の手で形にしたくて、会社を立ち上げました。

「ITの兵力を増やせ」——地方で気づいた日本の現実

地方移住で感じた衝撃

現在は群馬県を拠点にしていますが、元々の出身は東京です。移住したのは単純に自然を求めて北上したというだけなんですが(笑)、実際に移住してみてびっくりしました。「地方にはITのインフラ(人材や環境)がまだ整っていない」と。

日本の IT 業界は世界の中で成長が鈍化しています。一方で、世界の中心になってほしいという気持ちが強くある。日本発の IT 企業が世界的なブランドになってほしいし、IT の人材・物・金が日本に集まってほしい。そのためにまず必要なのは「IT人材を増やすこと」だと思いました。

誰でも挑戦できる業界にしたい

IT 業界に挑戦したい人が挑戦できる環境がなければ、人口は増えない。そこで、さまざまな地域に拠点を設けて、各地で IT 人材に転換できる仕組みを作るというのが、私たちの教育事業のはじまりです。

教育プラットフォーム「CyTech(サイテック)」は、脳科学の観点を取り入れて設計しています。グローバルエンジニアに欠かせない英語も学べるようにしていて、IT 人材の育成ツールとして社内外の方々にご活用いただいています。

「アート思考」で動く会社

理想が先、収益は結果

すべての事業において、利益は目的ではなく、理想を実現した結果だと考えています。ビジネス性だけを求めてしまうと、理想を実現するのが難しくなる。私たちの会社は「アート思考」を軸にしていて、「こういう世の中にしたいから、こういう手を打つ」という順番で動いています。

たとえばオフィス空間を DX するサービスも開発していますが、「市場規模がどれくらいだから」ではなく、「この方がコミュニケーションがよくなるし、いい仕事ができる」という前提から始まっています。

地方企業を海外へ——越境 EC という武器

eコマース事業でいま力を入れているのが、越境 EC という分野です。日本は島国なので、外に向けたビジネスが苦手な企業が多い。国内の成長率が伸び悩む中、世界に向けて自分たちの製品を販売していくことが、日本企業にとってのキーポイントだと思っています。

都内や大阪でも越境 EC をサポートできる企業は少ない。群馬のような地方になると、海を越えて販売するなんて想像もつかないというのが現実です。でも実際には、すごく手軽にできることでもある。そのきっかけを提供したいという思いで、越境 EC 向けの SaaS プロダクトやサポートサービスを展開しています。

シンガポールに子会社を設立し、そこをハブとして東南アジア全域へ展開していこうとしています。越境 EC モールの「Shopee(ショッピー)」への出店支援も行っていて、ゆくゆくは私たちが作ったプロダクトによって、どこの国でも誰でも簡単に越境販売できるようにしたいと考えています。

世界中の「挑戦したい人」のために

教育の力で垣根を取っ払う

教育というのは使い方によって、人の可能性を引き出せるものだと思っています。人の可能性が引き出されれば、それがやがて会社の可能性になり、組織の発展につながる。それを日本国内だけでなく、さまざまな国で実現したい。挑戦したい人がどこにでも挑戦できる、めちゃくちゃおもしろい世界にしたいと思っています。

続けた人間だけがなれる場所がある

近年は環境を変える選択も増えていますが、続ける中でしか見えないものもあると思っています。

憧れの一流アスリートも、数打席凡退しただけで「向いていない」とやめていたら、一流にはなれなかったはずです。一流になれるのは、続けた人だけです。物事を俯瞰してハイレイヤーで見るには、同じ領域を続けることが必要で、その先にこそ本質が見えてくる。

だから私たちが提供したいのは、やりたいことを見つけて続けられる環境への入り口。自分の心と対話して、かっこ悪いかもしれないけど「これが本当にやりたい」と思えることを見つけてほしい。それを一流まで極めれば、結局かっこよくなるんです。

編集後記

松下さんにお話を伺って、一番印象的だったのは「アート思考」という言葉でした。市場規模や収益よりも先に「こういう世の中にしたい」というビジョンがあって、そこから事業を組み立てていく。起業家の話を聞く機会は増えてきましたが、ここまで軸のぶれない方にはなかなか出会えないと感じました。越境 EC による地方企業のグローバル展開と、IT 教育による人材育成。二つの事業が実は「日本を世界の中心にしたい」という一つの夢でつながっていると気づいたとき、ニュースで見る「地方の衰退」という話がずっとリアルに迫ってきました。私自身、地方出身として地元の産業が元気をなくしていく様子を見てきたからこそ、株式会社TheNewGate の取り組みに純粋に期待したいと思っています。