AIが台頭しても、建設業が残る理由
これからAIがどんどん発達していく中で、いろいろな仕事が取って代わられていくと思います。ただ、そのなかでも建設業という業種は残っていくと考えています。
もちろん自動化できる業務はたくさんあって、実際に導入も進めています。今までにある技術であれば、AIでなんとか対応できるかもしれません。でも、新しい技術を考えるのは、やはり人なんですよね。
だからこの仕事には終わりがないんです。目的や目標が永遠に達成できない。「これはできたけど、まだまだだよね」とずっと思い続けている。満足できないんですよ。でも、それもまた魅力だと思っています。ずっと高みを目指せる仕事というのは、なかなかありません。
一人ひとりが「自分のちょうどいい」を選べる
もちろん、高みを目指す人ばかりではありません。1つのプロジェクトを完成させるにしても、そこにはいろいろな人がかかわっています。「これだけの規模のものができればいい」という人もいれば、「私はもっと先までやりたい」という人もいる。国内だけでなく、海外で一大プロジェクトを手がけたいという人もいるわけです。
だからこそ、いろいろな人が働ける場所になっていると思っています。稼ぎたい人は稼げばいいし、安定を望む人は安定すればいい。ちゃんと区別ができる。そういう業界は、ほかにはなかなかないんじゃないでしょうか。
車で運搬する方々も、職人さんも、図面を書く人も、電話を管理する人も、みんな貴重な人材です。いろいろな業務があるなかで、「私はここまででいい」と自分で決められて、それで満足しているならそこに収まっていい。そう思っています。
新卒の離職はここ6年で1人ほど
女性が多いのも、そういう働き方ができることが理由の一つかもしれません。離職率も本当に低いんです。ここ4、5年ぐらいで、いろいろなところから入社して、そのまま辞めずに続けている子ばかりで、新卒の子が辞めたのは1人ぐらいじゃないかと思います。ほかの会社はほとんど離職に困っていると聞くので、めずらしいことだと思います。
現場ごとに始業時間を変えていい
女性が働きやすい環境という点では、社内文化や環境づくりを工夫しています。今はまだ現場の作業時間が朝8時からというのが当たり前になっていますが、正直、本当はおかしいと思っているんです。この業界は元請けさんに合わせなければいけない部分があるものの、現場によっては9時、10時始業でもいいはずなんですよね。
これまでは1人や2人で現場を回すのが当たり前でしたが、それを3人、4人のチーム体制に変えていって、交代で休める体制にしていきたいと考えています。それが目標ですね。
荒い職人さんはもういない
こうした取り組みが浸透していけば、業界全体のイメージも少しずつ変わっていくと思っています。自分たちだけでは変えられませんが、それでも業界のイメージが少しでもよくなればうれしいです。
「3K(きつい・汚ない・危険)」と呼ばれてきたイメージも、本当に変わってきていると感じます。以前は仮設のトイレや休憩所も簡素なものでしたが、今はきれいに整備されていて、女性用のロッカーもあるのが当たり前になっています。荒っぽい職人さんも減りました。そういう人たちは、むしろ今は働きにくくなっているんじゃないでしょうか。時代とともに、業界も変わっていかなければいけないと思います。ついていける企業と、ついていけない企業の差は、これからますます開いていくはずです。
東京大学と挑む、資源のない日本に資源をつくる研究
会社としては、設備の仕事だけでなく研究開発にも取り組んでいます。東京大学さんとの連携で、4名ほどの体制で進めているところです。テーマは環境やリサイクルにかかわるもので、なかなかめずらしい取り組みだと思います。
環境問題は永遠になくならないテーマです。回収してきたものをリサイクルして、資源を作る。資源のない日本で、資源をつくっていく。そんな取り組みです。とても面白いテーマだと思っています。
ホールディングス内で「選べる会社」を目指す
グループ内ではジョブローテーションもおこなっています。採用された部署にずっといるわけではなく、その人のキャリアやりたいことを踏まえながら、ホールディングス内でいろいろな選択肢を用意したいと思っています。「これに適性があるんじゃないか」「こういうこともやりたい」という声に応えられるように、事業会社や部署をどんどん増やしています。自分に合った仕事を選べる会社にしたいんです。
役職定年なし、年収も下げない
年齢を重ねても、働く意思があれば年収を下げずに働ける仕組みにしています。役職定年もありません。大事な技術を持った人材が他社に流出してしまうのはもったいないですし、その人自身が会社の財産だと思っています。もし体力的に現場がつらくなってきたら、購買でも総務でも人事でも、社員研修でも、何でもできると思っています。
キャリアがあるので、無理に現場に立たなくても、会社を支える形で活躍できます。それが普通の会社なら難しいことかもしれませんが、うちはそこを大切にしています。長く働いてくれる社員には、それだけ愛社精神も生まれると思っています。
やる気があれば、事業所の代表も目指せる
学歴も関係ありません。大卒でなければダメということはなく、やる気次第でどこかの事業所の代表になれるくらいのチャンスがある会社を目指しています。今期、来期あたりで、事業会社の社長がどんどん変わっていく予定です。
真面目であれば、どんな子でもチャンスがあります。10年働いて役員や社長を目指したいという声も、実際に出てきています。挑戦してうまくいかなかったとしても、それでダメの烙印(らくいん)を押す必要はありません。何がダメだったのかに気づいて、また挑戦すればいい。何度でもやり直せます。
挫折を乗り越えた人ほど強くなる
管理職になると、気持ちが重くなることもあると思います。ただ、そこで壁を乗り越えた2、3年後には、また変わっているものです。失敗や挫折を味わった子ほど、それを乗り越えて大きく成長する傾向があると感じています。
上場という目標を、紙に書き続けた
ずっと上場を目標に掲げてきました。ただ、それだけでは乗り越えられないこともあります。今年はここまで、5年後、10年後はこういう姿でいる。そうやって常に具体的な目標を設定して、紙に書いたりしてきました。社員にも、お客様にも、公言していたんです。まだ法人化もしていないような小さな会社の頃から、ずっと言い続けてきました。当時は「ほら吹きだ」と思われていたかもしれません。
私は個人事業主として、現場からのスタートでした。富山で、朝6時〜7時から働いて、最初は雑用のような仕事しか回ってこないこともありました。それでも雑草のように立ち上がって、そこから積み重ねてきました。
社員とその家族を、背負う責任
自分についてきてくれる社員、その家族。それを背負えば背負うほど、責任がついてまわります。くじけている場合ではないんです。うつ病になった社員もいましたが、半年ほどで戻ってきてくれました。今は現場のリーダーとして活躍してくれています。そんないい会社はないから戻ってこいと伝えて、実際に戻ってきてくれた。そういう経験を経た子たちは、会社への気持ちも一段と強くなっていると感じます。幹部から「うちの会社はこんな会社だ」と若い子たちに伝え続けることも、離職率が低い理由の一つになっていると思います。うしろを見れば、いつも社員やお客様に支えられてきました。
若い世代へ、選べる仕事の多さを伝えたい
建設業は、これからもっと働きやすく、自分の可能性を引き出せる業界になっていくと思っています。少なくとも私たちはそれを目指しています。
やりたいことがわからない、どの業界に行けばいいのかわからない。そう悩んでいる学生も多いと思います。でも、建設業には現場もあれば、施工管理、CAD、営業もあって、細かく見ればもっとたくさんの仕事があります。運搬だけを専門にすることもできますし、自分に合ったところを選べます。せっかくご縁があって入社してくれたのなら、辞めるくらいなら気軽に相談してほしいと思っています。
経営企画から研究開発まで、選択肢は幅広い
シンコーホールディングスとしては、商品展開や経営企画に携わるのも、とても面白いと思っています。普通の設備屋さんと違って上場しているので、いろいろな職種、いろいろな適性を活かせる場があります。事業会社でやる気があれば、ホールディングスに上がってきてもいいですし、新しい事業会社をどんどん展開してほしいとも思っています。支店を一つずつ増やして、そこに人を配置していく。成長すれば、さらに任せる範囲を広げていく。
物足りなくなったら、ホールディングスの管理部門に上がってきてもいい。早く上がってきて、いずれはホールディングスの代表を目指してほしいと思っています。現場から上がって、ローテーションですべて経験して、後を継いでいけるくらいまで育てたいですね。
投資は、元気なうちにするもの
M&Aや不動産投資も積極的におこなっています。私が元気なうちにどんどん投資をして、辞めるときには借金ではなく資産を残したい。そう考えています。
TOKYO PRO Marketという市場は、性質上、なかなか大きな投資ができない面もあります。一般の市場への移行も選択肢として考えていますが、それで身動きが取れなくなるのであれば、あえて行く必要はないとも思っています。研究開発によって独自の武器ができれば、一般投資家の資金をあてにしなくてもいい。そういう状態を目指したいと思っています。
壁を乗り越えるほど、やりがいが増える
経営にはいろいろな壁があって、それを乗り越えるほどやりがいを感じます。「これぐらいで満足してはいけない」と、常に自分に言い聞かせています。
編集後記
吉田さんのお話を聞いて、経営者としての覚悟の重みを強く感じました。個人事業主として現場からたたき上げてきた歴史があるからこそ、社員一人ひとりの選択を尊重する会社の姿勢が生まれているのだと思います。特に印象的だったのは、「目標に終わりがないことが魅力」という言葉です。私自身、学生起業を通じて目標設定の難しさを日々感じているので、紙に書き続けて公言し続けるという地道な積み重ねに、大きな学びをいただきました。挑戦を後押しする組織づくりは、これからのキャリア選びの参考にしたいと思います。