インタビュー

「無様でも、立ち上がれれば生き様になる」月額1,100円のLINE予約システム「リピモ」を生んだ、岡山発・小規模事業者への恩返し

更新: 2026年7月30日
「無様でも、立ち上がれれば生き様になる」月額1,100円のLINE予約システム「リピモ」を生んだ、岡山発・小規模事業者への恩返し
PROFILE
株式会社Summer Blue 代表取締役
宮木 佑

音楽と、みんなに喜んでもらえるものへのこだわり

オリジナル曲で野外ライブも

学生時代は、昔から好きだった音楽に打ち込んでいました。バンド活動をして、カバーではなく自分で曲を作ることにこだわっていたんですよね。音楽好きの人にありがちな、自分の好きなものだけをとことん追求してマニアックになっていくタイプもいるかと思うのですが、私はどちらかというと、J-POP寄りのキャッチーな曲づくりを意識していました。当時から、一人でも多くの人に楽しんでもらえるものをつくりたいという視点があったように思います。代々木公園にある野外音楽堂のようなステージでライブをやらせてもらったこともありました。

家業のペットフード会社で、ネット通販をゼロから

オリックスから地元・岡山へ

大学卒業後は、オリックス株式会社という金融サービス会社にまず勤めました。父が自分で会社をやっている姿を見てきたこともあって、中小企業や小規模事業者の社長さんの力添えができたらという思いから、中小企業向けの営業を担当していたんです。その後、父が岡山県でペットフードの企画販売の会社を営んでいたので、跡継ぎという形で地元に戻る選択をしました。

ゼロから通販事業を立ち上げた

父の会社では、国産や無添加といった軸で犬の体にいい商品を扱い、ペットショップやホームセンターに卸していました。ただ、当時はインターネット通販が伸びていた時代で、大きい取引先には強気な態度をとられることも多く、パワーバランスに疑問を感じることがありました。お客さまに直接売れるチャネルがあった方がいいと考え、社内でゼロからインターネット通販事業部を立ち上げたんです。7、8年かけて、社内でも稼ぎ頭と言えるところまで育てました。

独立してECコンサルへ

事業は育ったものの、父とはそりが合わなくなっていきました。金融サービス会社での経験もあったので、会社をこうした方がいいのではという意見を伝えていたのですが、ゼロから立ち上げてきた父からすると、口出しをされているように感じられたのかもしれません。だんだん難しくなっていき、最終的には独立を選びました。ネット通販を軌道に乗せた経験とノウハウがあったので、同じように悩む事業者の方に伝える形で、ECコンサルの事業を始めました。そこから、ホームページやECサイトの制作、SNS集客支援へと、少しずつウェブ界隈の仕事を広げていきました。

LINEというインフラに懸けた

九割が使うLINEに着目

ウェブ集客を広げていくなかで、注目したのがLINEでした。総務省が公表しているデータでも、日本人の九割以上がアクティブに使っていて、60代、70代でも七割ほどが利用しているというのは、他のウェブツールにはない特徴です。ここに軸足をしっかり置いてみようと考え、LINEのマーケティングツール「Lステップ(エルステップ)」の代理店を始めました。東京ではテレビCMも展開されているツールですが、岡山では代理店が5、6社ほどしかなく、東京との情報格差もあって、私は岡山では尖った存在になっていったんです。

よろず支援拠点での経営相談

そうしたご縁もあって、国の中小企業庁が展開している無料の経営相談所「よろず支援拠点」の岡山県版から声がかかり、3年近く、週に一度ほど経営支援業務を担当しました。毎週5、6人ほどの相談を受けるなかで見えてきたのは、Lステップのように導入費用が何十万円もかかるツールは、小規模事業者にとって完全に予算オーバーだということでした。皆さん、LINEをうまく使って売上を上げたいと思っているものの、そこまでの予算をかけたいわけではないんですよね。

予約ボタンのないアカウントたち

カートのない通販サイトと同じ

相談に来られる方のアカウントを見せていただくと、予約数を増やしたいと言いながら、そもそも予約ボタンが存在しないケースが多くありました。お客さま一人ひとりに「この日空いていますか」とメッセージを送ってもらい、一件ずつ返信しているという方もいらっしゃったんです。これはもう、カートのついていない通販サイトで「在庫ありますか」と問い合わせさせて物を売っているのと同じ状態です。本気で予約を増やしたいのであれば、まず予約ボタンをつくり、押したらすぐに予約が完了する仕組みからつくらないといけません。ただ、予約システムもそれなりの値段がすることが多く、安いものはLINEとデータ連携していないため、予約完了やリマインドのメッセージが、見られることのないメールアドレス宛てに届いてしまうという課題もありました。

誰でも使える価格を、自分でつくる

だったら自分の会社でつくって出そうと考え、2年ほど前にリリースしたのが、月額1,100円(税込)のLINE予約システム「リピモ」です。予約完了やリマインドのメッセージはすべてLINEアカウント宛てに届くため見逃されにくく、予約の流れもホットペッパービューティーのようなわかりやすい設計にしています。何より、初回導入費用0円、月額1,100円という価格にこだわりました。中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が中小企業のDXを促進するためにおすすめアプリをまとめているサイトである「ここからアプリ」にも掲載していただいており、そこに並ぶ類似サービスと比べても、うちはかなり抑えた価格になっています。

業務も、売上も変わった導入事例

Googleカレンダーとのデータ連携もできるようにしていて、オーナーさんが予定を入れると自動でリピモ側の予約枠が調整される仕組みも備えています。実際に導入いただいた足つぼマッサージ店では、閉店後に何件もの「この日空いていますか」というメッセージに一件ずつ返信する日々から解放されました。お客さまの側にも、深夜に連絡するのは非常識かもしれないと感じていた方や、翌日に回して結局送りそびれてしまっていた方がいたようで、そうしたお客さまへの売り逃しがなくなったことで、業務効率だけでなく売上も倍になったという事例も出てきています。契約の七、八割はサロンや美容院、整体、マッサージといった業種で、フォトスタジオや自動車のオイル交換予約、カウンセラーや占い、コンサル業の面談予約など、幅広い使われ方をしています。

岡山で積み重ねてきた信頼

商工会議所や商工会からの依頼

岡山という土地柄、LINEに詳しい人というポジションで見ていただくことが多く、岡山商工会議所、津山商工会議所、総社商工会議所、岡山西商工会、つくぼ商工会など、複数の経済団体からLINE活用のセミナーを依頼していただいています。また、数百人規模の企業のLINE公式アカウント構築を担当させていただいたこともあります。そうした大きな仕事に携わる一方で、月額1,100円のリピモは、北は北海道から南は沖縄まで、全国の事業者さんに使っていただいています。

1万社に使ってもらえるサービスへ

大きい会社がやりたがらない領域だからこそ

小規模事業者は、どうしても大きい会社にとって効率の良い取引先にはなりにくく、置き去りにされがちです。だからこそ、月額1,100円という、払える払えないではなく、やる気があるかどうかで決められる価格帯で、しっかりと向き合っていきたいと思っています。おかげさまで利用者は毎月伸びていて、機能改善も、多くの声があったものから順番に取り組んでいます。3年でどこまでいけるかはわかりませんが、最終的には1万社に使ってもらえるサービスにしたいという大きな目標を持っています。地道な改善と地道な営業を積み重ねて、使ってくれる方の口コミで共感の輪を広げていけたらと考えています。

挑戦の数だけ、判断力は磨かれる

一勝九敗どころか、二十、三十のチャレンジを

学生の皆さんには、いろいろ挑戦してみてほしいと伝えたいです。私自身も何百万円という単位でやらかした経験がありますし、経営者仲間を見渡しても、大なり小なり誰もが失敗を経験しています。ソフトバンクの孫正義さんも、1,000万円を元手に会社を始めて最初の一ヶ月で全額飛ばしてしまったという話がありますし、ユニクロの柳井正さんも著書のなかで、十試合やって一試合しか勝てないとおっしゃっています。トップオブトップの方々でもそうなのだから、私のような凡人であれば、十試合と言わず、二十、三十とチャレンジの数を増やしていかないと、たどり着きたい場所にはとても届きません。

無様でも、立ち上がれれば生き様になる

失敗をするたびに、次はこうしよう、これはやめようという判断基準が自分のなかに積み重なっていきます。この経験に基づく判断力がどれだけ研ぎ澄まされるかで、成功の確率も変わってくると思うんです。以前、本田圭佑さんの「量をこなしていないものが質を語るな」みたいな言葉を見かけましたが、皆さん似たようなことをおっしゃっているように感じます。歌手の氷室京介さんが、引退の前後に「派手な失敗は無様だけれど、立ち上がれれば、それは生き様に変わる」といった趣旨のことを話されていたのが、とても印象に残っています。誰でも派手にやらかせばショックを受けますし、消えてしまいたいと思うこともあると思います。それでも立ち上がれれば、それもまた良い経験になり、生き様の一部になっていくはずです。ぜひ、いろいろなことに挑戦してみてください。

編集後記

今回、株式会社Summer Blue代表・宮木佑さんに取材させていただきました。音楽で「みんなに喜んでもらえるもの」を追求していた学生時代の視点が、そのまま小規模事業者のための低価格なLINE予約システム「リピモ」の開発につながっているというお話が、とても印象的でした。孫正義さんや柳井正さんといった経営者の言葉を、ご自身の言葉として語ってくださったのも印象的で、挑戦の数だけ判断力が磨かれるという考え方は、これから挑戦していく学生にとって、大きな指針になると感じました。