途上国を旅した学生時代
バックパッカーだった大学生活
大学生のころは、アルバイトでお金を貯めては長期休暇にあわせて途上国に飛んで、バックパッカーとしていろいろな国を回っていました。とくに貧しいといわれるような国々を選んで訪れていましたね。仲間と学生団体を立ち上げて、カルチャー系のイベントを開いたりもしていて、そこで得た収益を途上国に還元するという活動もしていました。
きっかけは「火垂るの墓」
途上国に興味を持ったのには、特別なきっかけがあったわけではないんです。ただ、五歳くらいのときに「火垂るの墓」を見て、妹がいる自分と重ね合わせて大号泣したのをよく覚えています。自分はたまたま日本に生まれただけで、いまは衣食住に困ることもない。なのに、世界にはまだこういう国がたくさんある。その理不尽さがずっと許せなくて。ただ、メディアで見る世界は知っていても、自分の目で見たことはなかったので、大学生になってようやく自分の足で確かめに行くようになりました。
何もないところからのスタート
すでに動いている人を支えたかった
前職も、まさに途上国と関わる仕事でした。独立を決めたとき、本当は自分自身が不遇な目に遭っている人たちに直接手を差し伸べたかったんです。でも、お金も人脈も何もない。だから、まずはすでに社会に対してアクションを起こしている人たちの事業を支援しようと考えました。いまは医療や福祉、NPOの方々の事業を支援することが多いのですが、そこでも途上国の人と関わったり、国内でつらい状況にいる人と直接関わったりする機会があるので、根っこの部分はいまにつながっているのかなと思います。
WILLBATONSの強み
クライアントの想いが自慢
独自の強みとは、大きく三つあります。一つ目は、クライアントさんが全員、ものすごく想いを持っている人たちだということ。いわゆる儲け主義のような人たちは一人もいなくて、不遇な目に遭っている人たちに働きかけている方々と一緒に仕事をさせていただいています。このクライアントさんの存在は、自分自身の自慢のひとつです。
川上から川下まで伴走する
二つ目は、私たちはブランディングクリエイティブと呼ばれる領域を手がけていて、空間デザインのようなアナログの制作物もあれば、ウェブサイトやグラフィックのような最終アウトプットもあります。ただそれ以上に、まだ言葉にすらできていない状態から話をうかがって、それを言語化したり、グラフィックに落とし込んだり、方向性を指し示したりするところから伴走しています。最終アウトプットだけでなく、事業の川上から川下まですべて一緒に走っているところを、ありがたいことに評価していただくことが多いですね。
いい人が集まる好循環
三つ目は、これはどちらかというと運かもしれませんが、いい人たちが集まってきているので、新しいものがどんどん生まれていくことです。クライアントさん同士で新しいプロジェクトが生まれたり、自社プロダクトを作ったりすることもあって、今年はそのプロダクトがグッドデザイン賞をいただきました。そうやってプロジェクトがすぐアウトプットにつながっていくところが、強みであり面白いところだと思っています。
スモールビジネスとして歩んでいく
外部資本には頼らない
私たちは、いわゆるスタートアップではまったくなくて、本当にスモールビジネスです。外の資本を入れることもしていませんし、自分たちで実直に、一歩ずつ作って試していくというスタンスでやっています。
商店街の戸建てから
創業は2023年5月で、当初はお金もなく、まずはすでに支援活動をしている人たちを支える、いわゆるBtoBという形からスタートしました。いまは商店街の一角にある二階建ての戸建てを借りて事務所にしていて、いろいろな人が集まってくれています。BtoBを続けながらも、いつか自分たちの手で、不遇な目に遭っている人たちに直接働きかけていきたいという思いは、いまも変わらずに持ち続けています。
学生へのメッセージ
正解を探すより、作る
AI時代になって、世の中は誰も予測できない状況になっています。だからこそ、何がコスパいいかとか、何が効率いいかという「正解を探す」スタンスよりも、「正解を作っていく」スタンスのほうが生きやすくなるんじゃないかと思っています。自分がこの世界をどう解釈していて、自分にとっての幸せは何なのか。自分起点で物事を定義していく力は、AIに聞いてもヒントは得られても答えは出てきません。何を正解にするかは自分自身で決断するしかないので、その視点を持って生きていくと、少し楽になれる気がします。
実験と試行錯誤が面白い
私たちは飛び道具を使わずに、本当に一つひとつ自分たちで試しながらやっています。これをすれば効率的とか、時流に乗れるとか、そういう発想はあまりなくて、自分たちにとって、お客さまにとって本当に価値のあるものは何だろうと考えながら、実験と試行錯誤を繰り返しています。その実験思考みたいなところが、この事業のいちばん面白いところだと思っています。
編集後記
想いを言語化し、事業の川上から川下まで伴走するという姿勢に、一貫した軸を感じました。外部資本に頼らず、一歩ずつ実直に積み上げていくというスタンスは、効率や正解を求めがちな私たち学生にとっても、学ぶところが多いと思います。「正解を探すのではなく作る」という言葉は、これから社会に出る身として、心にとどめておきたいです。貴重なお話をありがとうございました。