現場出身の27歳が見た、運送業界のリアル
大型ドライバーとして6年間現場に立ち続けた
今年27歳になります。群馬県伊勢崎市に本社を置く合同会社Ai.SoLinkの代表をしています。お客さまは運送会社さんで、弊社では運賃を上げられるようなツールを提供しているんですよね。
たとえば群馬県の高崎市から東京の板橋まで水を運んでほしいという依頼があったとして、そのコースが4万円だとします。ただ、その4万円が適正な運賃なのかどうかって、走るトラックの減価やドライバーさんへの支払い、燃料費まで含めて計算しないとわからないんです。この原価計算を瞬時にやって、4万円が妥当なのか、もっともらうべきなのかを判断できるようにサポートするサービスになっています。
もともと私は現場出身でして、運送自体には6年ほど携わっています。実際に現場でいろいろ感じたことをもとに、ここはITでどうにかできないかと思って、この事業に取り組み始めました。
21歳で一度起業し、大型ドライバーとして学び直した
実は21歳のときに軽貨物で起業はしたんです。ただ、そこからトラックのことをしっかり学びたいと思って、一度運送会社さんで大型ドライバーとしてお世話になりました。そこから去年、あらためて起業したという流れになります。
苦労の連続だった、起業からの道のり
助成金750万円を返還することになった
正直なところ、ずっと苦労してきたという方が強くて、やっと花開いたのがここ1か月前ぐらいなんですよね。
最初はAI研修を売ろうとしていたんですが、その時はあまり需要がなくて。そこから運送会社さん向けにバックオフィス系のサービスを作って提供したんですけど、運送会社の社長さんとしては経費削減よりも売上を立てたいという思いがどうしても強かったんです。それで、売上を上げるために運賃を上げられるようなツールを作らないといけないというのが、今回のサービスにつながったきっかけになります。
具体的に大変だったこととしては、これはちょっと載せない方がいいかもしれないんですけど、以前AI研修の事業を助成金を活用してやっていたことがあって。75%が国から助成が下りる制度を使って企業に提供する内容で、1,000万円で契約すると750万円は国から戻ってくるので、実質250万円で受けられますよという話だったんです。ただ、実際には先に1,000万円をいただいて、こちらも1,000万円あるものとしていろいろ動いていたところ、助成金が採択されずに750万円をお返ししなければいけなくなりました。かなり資金がきつかったですね、あのときは。
現場を知っているからこそ、届けられるものがある
半年間、運送会社の内側に入り込んだ
経営者として大切にしているのは、現場主義だと思っています。今回サービスを提供するにあたって半年ほど、実際の運送会社さんに内側から入り込ませてもらって、いろいろと機能を試させてもらいました。内側に入り込んで現場を知ったうえでサービスができあがるものだと思っているので、しっかりと現場を理解することが、サービスを提供するうえで大事なのかなと思っています。
運送会社さんに提供しているITベンダーさんってIT出身の方が多いんです。そのなかで私たちはしっかりと現場も経験して理解しているからこそ、適切なニーズに応えられるサービスを届けられると自負しています。運行管理者資格も、実際に運送会社に携わって勉強したうえで取れる資格なので、運送会社を深く理解しているというアピールにもなりますし、サービス自体の差別化はそこまで大きくないからこそ、最後は「誰がやるか」だと感じています。
群馬から関東、そして全国へ
目標としては、まず群馬県の運送会社さんにしっかりサービスを届けて、その次に関東、最終的には全国に広げていきたいと思っています。まずは群馬をしっかり契約してもらわないと、その先にも広がっていかないと考えているので、地方の群馬からという方針です。
拡大していくなかで課題に感じているのは、しっかりとしたエンジニアさんの存在です。フロントの画面部分は今それこそAIでも作れたりしますが、セキュリティの部分は、お金をいただいている以上はしっかりとプロの方に任せなければいけないと思っています。ここは弊社として足りない部分で、拡大していくなかで補っていきたいところですね。
20代がいない業界に、危機感を持っている
若手が本気で変えなければ、物流はまずいことになる
今のこの年齢で運送業界を本当に変えたいと思っている人ってなかなかいないんです。運送会社ってボリューム層が50代で、20代と50代では見ているものが全然違います。本当に20代がいないなかで、私が20代を代表してちゃんと運送業界を変えて、若い世代を入れていかないと、物流業界は本当にまずいと思っています。
そもそもこのサービスを作ったきっかけも、運賃が上がればドライバーへの給料も上げられて、そうすると人が入ってくるというサイクルを作りたいという思いからです。本当に危機感を覚えていて、若い世代が入ってくるようになるまで、代表として変えていきたいと思っています。
学生には、一歩目のハードルを下げてほしい
アンテナを張り、小さく分解して動く
学生のうちからやっておいた方がいいこととしては、常にアンテナを張っておくべきだと思っています。すぐに起業しなくてもいいですが、最新の情報をキャッチアップするアンテナは持っておくべきですね。見る、調べる、勉強する。この辺りは最低限必要なのかなと思います。
一歩を踏み出すのが怖いという人には、一歩目のハードルを下げることが大事だと伝えたいです。起業となると役所への提出が正式な形になりますが、その前段階でやれることはたくさんあります。自分のなかで細分化して、一つずつやっていくことも起業までの準備だと思っていて、いきなり書類を提出してスタートというわけではありません。小さいところから何かしらやってみるのがいいと思いますし、勉強することも立派な一歩目です。勉強すると視野が広がって、また新しいことを勉強したり、可能性が広がっていったりすると思うので、一歩目のハードルを下げることを意識してほしいですね。
編集後記
今回、澤さんのお話を伺って、現場を知り尽くしたうえでサービスを作るという姿勢の強さを感じました。助成金の返還という大きな苦労を乗り越えて事業を軌道に乗せているところに、覚悟の重みを感じます。学生起業に挑戦している身として、「一歩目のハードルを下げる」という言葉はとても励みになりました。運送業界という20代がほとんどいない領域で、若い世代を代表して変えていきたいという思いに、これからも注目していきたいです。