野球選手になりたくて、医学部に入った
医学部でも野球はやめなかった
大学時代は医学部だったんですけれど、正直、医学の勉強はほどほどでしたね。それよりも野球部としての活動に力を入れていて、大学の6年間はずっと野球を頑張っていました。国家試験の勉強に本腰を入れたのは、本当にギリギリになってからです。
他の学部よりは勉強しなければいけない学部だと思うんですけど、それでもスポーツはちゃんとできましたね。両立していたというより、両立せざるを得なかった、という感覚に近いかもしれません。
体について学ぶなら医学部だった
もともと、小さい頃は野球選手になりたかったんです。そこからスポーツに携わる仕事がしたくなり、体について学ぶなら医学だろうと考えた結果、医学部に入りました。体育学部という選択肢も頭にはあったんですけど、偏差値的にはもう少し上を狙えたので、正直あまり肌に合わないなと感じていました。
整形外科医としてのキャリアから、フリーランスへ
医局を経て整形外科医になった
医学部を卒業したあとは、地元の筑波大学の附属病院で初期研修を受けました。スポーツに携わりたいという思いが一番ダイレクトに叶うのは整形外科だったので、そのまま整形外科の医局に入り、いろいろな病院を転々としながら整形外科医としての経験を積んでいきました。
医局を出たのは5年以上前です。そこからは、フリーランスの整形外科医として働いています。
独立は家族との時間のためだった
フリーランスといっても、開業しているわけでも病院長になっているわけでもありません。複数の病院で手術などを担当している、というイメージです。よくいわれるのは「ドクターX」のような働き方ですね。
一人でやっていこうと思った理由は、家族と一緒の時間を増やしたかった、というのが一番大きいです。それに加えて、情報発信にも力を入れていきたいという思いがありました。YouTubeでの情報発信などに力を入れていくうえで、普通の医者としての働き方よりも自由度があり、自分の得意分野に特化した仕事のしかたができたほうがいい、と判断したんです。
YouTubeは独学で伸ばした
YouTubeでの発信は、仕事のなかで学んだものではなく、実際にやりながら身につけていきました。もちろん、発信のやり方を教えてくれるオンラインスクールはたくさんあるので、そういったものを片っ端から勉強しながら実践していきましたね。
「Dr.SHI-GYO」という挑戦
医師限定スクールを立ち上げた
「Dr.SHI-GYO」を立ち上げたきっかけは、私自身がYouTubeをはじめとした情報発信を学んで、実際に結果を出せたことにあります。直接学ぶ機会をくれた方と一緒に、その経験を教えるという形でスクールのような企画をはじめました。
医師はやれば伸びる、というのは強く感じています。あぐらをかいてほしいわけではないんですけど、牽引力の高さは実感していますね。今は「Dr.SHI-GYO」という形で、YouTubeを中心に出版などさまざまな情報発信を指導しています。もう2年ほど続けてきたので、私自身の経験というより、指導の経験を踏まえて洗練されてきた感覚がありますね。
これまでに延べ50人ほど、医師に限ると40人ほどが受講してくれています。最初は別の職種の方も一緒にやっていた時期がありましたが、今は医師限定でやっていますね。
医師はカモにされやすい
ほとんどの医師は、いきなり医者になって社会人経験もない人がほとんどなのに、お金は持っている。だからこそ、だまされやすいんじゃないかと思います。
たとえばホームページを作ってもらうにしても、何百万円もかけているケースが今でも多くあります。今の時代、AIを使えば自分でも作れますし、何百万円もかけたSEO対策も、実際には良い記事が書けていないことがほとんどです。自費出版もそうですね。営業を受けて、何百万円も使いながら本を作っても、自費出版した本が売れることはまずありません。出版社側もそれだけで潤ってしまうので、頑張って営業しない構造になっています。
私自身は開業医として広告を出すこともないですし、YouTubeも自分が好きでやってきたことなので、だまされそうになった経験はほとんどありません。むしろ、だます側の仕組みがよく分かる立場にいるからこそ、同業の医師に「絶対に騙されないで!」と強く伝えたいし、実際に伝えています。
根拠のない情報発信が氾濫している
医療の情報発信は、本来もっと繊細で慎重であるべきなんです。ただ実際には、大手出版社が出す本でも根拠のない話がひたすら書かれていますし、SNSにも氾濫しています。
情報発信で見てもらったり売れたりするためには、面白くないといけません。だからこそ論文などの根拠を示さないと、ただの感想になってしまう。医者こそそれをやってはいけないはずなのに、実際にはできていない人が多いんです。整体師や柔道整復師、鍼灸師といった、体に携わる他の職種の方たちは、もっとひどいケースもあります。「それ、根拠はありますか」と聞くと、無視されることも少なくありません。
そういう状況を変えていきたいという思いがあって、でも私一人では足りない。だから、指導という形をとっています。もっと正しい情報を発信する人自体を増やしていきたいんです。
「属人性」を武器にする発信のかたち
難しさより悩みの多さがある
医療は人の心身にかかわるので、テーマごとに細分化されやすい領域です。同じジャンルで競合するというより、悩みの種類自体が無限にあるので、差別化を強く意識する必要はまだあまりない、いわゆるブルーオーシャンのような状態が続いていると感じています。
頑張らなくても伸びる仕組みをつくる
自分自身が発信するうえでは、あまり力を入れすぎないようにしています。最近はYouTubeの編集も自分でしていません。意識しているのは、文献を引用して語ることと、AIを使って自分が語りたいことを文章やスライドに組み立てることです。
私自身がすごく頑張ったから成功した、という見せ方をすると誰もついてこられません。できるだけハードルを低くして伸ばしたい、という思いがあります。実際に私は少し頑張りすぎてしまったタイプなので、「Dr.SHI-GYO」の受講生さんにはそうならないようにしてもらいたいんです。再現性を大事にしたいですね。
学生へ、AI時代を生き抜くためのメッセージ
「Dr.SHI-GYO」自体、AIをガンガン使ってやりましょうと伝えています。忙しい医師が時間をかけすぎないためにも、AIは積極的に活用すべきだと思っています。
これから若い方たちも同じようにAIとどう付き合うか考えていくはずです。「SHI-GYO」という言葉には、医師の「師業」や弁護士の「士業」もありますし、最終的には自分自身を「私(SHI)」にしていく、という意味も込めています。資格を取ればもう安心という時代はとっくに終わっていて、これからは私業にしていかないと選ばれない時代になっていくと思います。
AI時代においては、自分じゃないと発信できない情報、自分じゃないとできない仕事は何かを、常に考え続けなければいけません。それをさらに強めるためにAIを活用していく、という順番が大事です。
学生さんがいきなり私業をつくるのは簡単ではありません。だからこそ、まずは量をこなすステージがあって、そのなかで質を上げていき、経験を自分にしかできないものへ昇華させていく。この視点だけでも最初に持っておくと、どんな修行を積むか、どんな経験を重ねるかの考え方が変わってくると思います。
AIのなかで属人性を失うと、それこそAIに食われてしまいます。逆にいえば、自分の経験はAIには代替できないものです。それを積み上げて発信していくことが、結局ナレッジとして残っていく。若い方には、体験や経験をどんどん積み上げていってほしいと思います。
編集後記
今回は、フリーランス整形外科医として活動しながら「Dr.SHI-GYO」を運営する歌島さんにお話を伺いました。医師という「資格」に守られる時代の終わりと、AI時代における属人性の大切さのお話は、就職活動を控える身としてもとても考えさせられる内容でした。頑張りすぎずに伸ばす、という発信のスタンスも印象的で、これからの働き方を考えるうえでのヒントをたくさんいただけたインタビューでした。