インタビュー

「儲かりそう」より「楽しそう」を選んできた ―― 乗っ取られても、また立ち上がる不動産人生

「儲かりそう」より「楽しそう」を選んできた ―― 乗っ取られても、また立ち上がる不動産人生
PROFILE
株式会社IKEZOE TRUST(REMAX JAPAN) CEO
佐久川 靖行

尼崎の団地で育った子ども時代

母子家庭で貧しかった学生時代

学生時代はバスケ部に入っていたのですが、部活の思い出というよりは、兵庫県尼崎市の市営団地で母子家庭として育ったことのほうが記憶に残っています。平たく言えば、、ずっと貧乏な暮らしをしていたというのが学生時代の思い出ですね。

その頃は「社長になりたい」というような野望はまったくありませんでしたただ、高校時代、学校に行かず家でゲームをしながら「好きな時間に、好きな場所に行けたらいいな」とぼんやり考えていたことを今でも覚えています。

「自由に生きたい」から見えた夢

高校の卒業文集に書いた将来の夢は「ラーメン屋台を引いて日本一周する」でした。何かに縛られるよりも、自由に生きたいという気持ちが、当時から根底にあったのだと思います。

添乗員から不動産業界へ

憧れは明石家さんまの職業

高校卒業後の進路は、明石家さんまさんと大竹しのぶさんが結婚するきっかけになった、当時の人気ドラマに大きな影響を受けました。さんまさんが演じるの役が添乗員だったんです。「それなら、まずは添乗員になってみよう」と決めました。

沖縄専門旅行会社からのスタート

沖縄出身だったこともあり、沖縄県人会つながりから沖縄専門の旅行会社に就職し。添乗員として社会人としての第一歩を踏み出しました。ただ、就職してすぐに独立を考えていたかというと、まったくそんなことはありませんでした。

不動産業界での急成長

年間休日50日の日々

添乗員時代は、年間休日が50日ほどしかありませんでした。3名から5名ほどの小さな会社だったので、若手にどんどん仕事が回ってくる環境だったんです。特別なモチベーションがあったわけではなく、「与えられた仕事に必死に向き合っていた」という感覚でした。結局、3年弱ほどでその会社を離れていました。

その後、大手不動産賃貸会社に転職したのが21歳くらいのときです。当時は面接を受ければほぼ採用されるかたちで、無事に合格し。ここから私の不動産人生がスタートしました。ノルマが厳しく、不動産業界ならではの厳しさ、大変さもありましたね。

23歳で最年少店長に

いわゆる不動産屋らしい従来の営業スタイルではなく、自分なりに考えながら工夫して仕事をしていたため、1年目はまったく成果が出ませんでした。しかし、2年目・3年目からは結果が出はじめ、23歳の時に当時の最年少で店長に就任することができました。全国でもトップクラスの店を任せてもらっていたのですが、一般的な社員店長のように部下を詰めるようなスタイルはとりませんでした。叱ることはあっても追い詰めることはせず、40代の業界歴も私より10年以上先輩の方々ばかりの年上の部下たちを伝え方を工夫しながらうまく立て、、しっかりと成果をだしていく。この経験が今の自分の基礎になっています。

物件より先に人を知る

「なぜ業績1位を取れたのか」とよく聞かれますが、多くの営業マンはご要望の条件だけ聞いて「これがおすすめです」と物件を提示してしまいます。一方で私が大切にしていたのは、物件を提案する前の「会話」でした。お客様の奥底にある、まだ言葉にはなっていない本音やインサイトを引き出すこと。その対話の手順再現できる形にまとめてチームに共有したところ、メンバー全体の成績もどんどん上がっていきました。

28歳での独立、そして乗っ取り

マダムの一声で始めた独立

20代で上場企業の管理職という立場にいましたから、会社を辞める理由は本来ありませんでしたし、独立する気もまったくありませんでした。

きっかけは、当時働いていた事務員のおば様でした。とても裕福な方で「あなたは力があるから自分でやりなさい」と後押ししてくださったのです。その方やお友達、そして当時の部下たちからも「旗を上げてください」と言われて、半ば背中を押される形で独立しました。28歳のときです。

地主さんとのつながりや集客のノウハウは、それまでの経験があったので、会社は比較的順調に立ち上がりました。休みもないほど忙しかったですが、不思議と苦労したという感覚はありません。前職時代に培った教育や営業のノウハウは、今も社員に伝え続けています。

66.7%の壁に阻まれて

30歳になる頃には、社員50人を抱える不動産会社の社長になり、正直なところ調子に乗っていた部分もあったと思います。ちょうど堀江貴文さんがフジテレビを買収しようとしていた時期でしたが、私自身も似たような形で会社を奪われそうになっていたのです。出資してくださっていたおば様とそのご友人が株式の66.7%を保有しており、私は3分の1しか持っていませんでした。そのため抗いようがなく、追い出される形で会社を去ることになりました。

再起・新会社設立を経て、45歳でのM&A

会社を離れたあとは、社員としての再就職も考えたのですが、当時一緒に働いていた社員から「もう一度会社をつくってほしい」と背中を押され、新たな不動産会社を設立しました。順調に会社は成長しつつも社員と会社の将来を考え、「グループに入って一緒にやってほしい」と声をかけていただいた福利厚生・社宅事業の最大手の一部上場企業に加わりました。社員7,000〜8,000人規模の会社で、代表権を持つ8人目にしてもらったんですが、1年ほどで「M&Aで全部引き取ってほしい」と申し出ました。ずっと休みなく走り続けてきたので、45歳という節目で少しゆっくりしようと思ったんです。

気づけばREMAX JAPANのCEOに

ゆっくりのはずがCEO就任

しばらくゆっくりしようと思っていた矢先、人づてでREMAXの話を聞きました。最初は研修担当や営業を少し手伝う程度のつもりで関わっていたんですが、気づけばCEOを引き受ける流れになっていました(笑)。今はしっかり腹を括って向き合っています。

前の会社のスタッフから「もう一度会社を作ってほしい」と言われたり、今回のように声をかけていただいたり。人の役に立てるのは本当にありがたいことだとですし、「頼まれたら精一杯応える」という気持ちでここまで歩んできました。

見ているのは「誠実さ」だけ

採用において最も重視しているのは、スキルや能力よりも「誠実さ」です。形式的な面接は行わず、リラックスしてざっくばらんに会話をしながら、この人には嘘がないか、コツコツ努力できそうか、というその方の雰囲気を見るようにしています。

自分のビジネスに挑み、仲間と成長するREMAXの魅力

ひとつの型にはまらない働き方

これまで新卒採用は行ってきませんでしたが、REMAXのエージェントという働き方には、他社にはない魅力があると思っています。多くの不動産会社では、決められた商品を決められた形で売っていく働き方が一般的です。一方でエージェントは、自分のビジネスとして不動産に取り組みながら、オフィスや先輩のサポートを受けることができます。自己裁量権を持って、自分のやってみたい不動産ビジネスにチャレンジできる環境です。

例えば、留学経験がある学生など、語学力を活かしたい方であれば、海外の方が日本の不動産を借りたい・買いたいというニーズに直接応える仕事も可能です。

資格がなくてもチャレンジできる

宅地建物取引士の資格は持っているに越したことはありませんが、必須ではありません。英語が話せなくても、友達で部屋を探している人がいる、という身近なところから始めることもできます。国内の物件だけでなく、海外のエージェントと協力しながら世界中の不動産を扱うことも可能です。

支えるのは同じ立場の仲間たち

本部の社員はエージェントを支える役割なので、派手さはないかもしれません。ただ組織自体はコンパクトだからこそ、アメリカ本部とのミーティングや日々のコミュニケーションなど英語力を活かせる場面が多くあります。また、相対するのは全国各地の社長クラスの方たちなので、年齢に関係なく頼りにされる存在になれることも大きな魅力だと思います。

実務的な研修や仕組みはご用意していますが、事業計画の策定やモチベーション面は、REMAXX JAPAN全体のコミュニティが支えになっています。様々な地域の頑張っているエージェント同士がつながって相談できる環境があるので、多様な年代の仲間の中で、孤立にならずに歩んでいける仕組みになっているのです。

AI時代でも変わらない価値

反響営業ではなく紹介ビジネス

最近はAIが物件を紹介してくれる時代になりつつあります。しかし、REMAXのエージェントはポータルサイトに物件を載せて反響を待つような、従来型の営業スタイルとは少し違い、紹介でビジネスを広げている人がほとんどです。AIが進化すればするほど、かえって「信頼できる人と一緒に進めたい」という人間味のあるプロセスが求められると感じています。

信頼できる人に相談したい思い

不動産を借りたり買ったりするときに感じる不安や、担当者への不満、業界全体の不透明感は、決して珍しい話ではありません。最近ではポータルサイトの情報よりも、SNSなどを通じた個々の情報のほうが、特に若い世代には信頼されやすい傾向があります。実際、物件を知ったきっかけの調査では、不動産会社経由が6〜7割を占める一方、知人の紹介という割合も確実に存在します。

REMAXでは、エージェントそれぞれが自由に活動し発信しているため、情報発信量そのものが他社とは違うと思っています。最近では、AIに相談したことがきっかけでリマックスのエージェントを知った、という声も聞こえるようになってきました。。

業界の「不」をなくすビジョン

誰も悪くない構造の問題

不動産業界は、契約への不安や担当者への不満、業界全体の不透明感を持たれやすい業界だと感じています。一方で、経営する側にも将来への不安があり、働く社員も拘束時間が長くノルマが厳しいという不満を抱えがちです。これは誰かが悪いということではなく、構造的な問題だと捉えています。

私たちはこの構造をエージェントモデルによって変え、「不動産の世界から不をなくす」ことを大きな目標に掲げています。不動産を通じて、働く人もお客様も、みんなが輝きを持てる世界をつくりたいと挑戦を続けています。

少しずつ仲間が増えていく

業界全体を変えるという肩肘を張った大げさな話ではなく、想いに共感してくれる仲間が少しずつ集まってきた結果、という感覚のほうが近いです。

これから社会に出る学生へ

儲かりそうより楽しそうを選ぶ

これから社会へ飛び立つ学生の皆さんには、二つのことをお伝えしたいと思います。私自身、これまでの人生で「儲かりそう」という理由で仕事を選んだことは一度もありません。とにかく楽しそうだな、と思えるほうを選んできました。楽しくやっていれば、自然とエネルギーが湧いてきますし、それが巡り巡って成果につながっていくものだと思います。

しんどい道でも笑って進む

もう一つは、どちらの道か迷ったときは、あえて「一番しんどそうな道をあえて選んでみる」ということです。逆説的なのですが、苦労した道のりのほうが、あとから振り返ったときに何倍も楽しかったりするものです。

会社を乗っ取られたときのように、予期せぬ壁にぶち当たることもありました。ただ、どんなピンチも「楽しんでやろう」と決めればチャンスに変わる。儲かりそうかではなく、楽しめるかどうか。これから社会に出るみなさんにも、失敗を恐れず、自分自身が笑って進める道を選び取っていってほしいです。

編集後記

今回のインタビューを通して、ひとつの答えに固執せず、目の前の状況を楽しみながら乗り越えていく姿勢が印象に残りました。乗っ取りやM&Aといった壮絶な経験をされていても、「楽しそう」を選択の軸にされているところに、私自身も就職活動で悩んだときの視点をいただいた気がします。儲かるかどうかより、しんどくても楽しめるかどうか。この視点は、これから社会に出る私たち学生にとっても、大切な指針になるのではないでしょうか。