AI時代だからこそエンタメに懸けている
仕事はどんどんAIに巻き取られる
トレカプロ株式会社は、2026年5月に設立したばかりの会社です。トレーディングカードゲーム(TCG)業界に特化したサービス提供、カードショップやリユース事業者向けのマーケティング支援をおこなっています。
なぜ数あるジャンルのなかからトレカを選んだのか。きっかけは、AI時代における仕事の変化について考えていたことでした。
名刺管理ツールを例に挙げると、動画で名刺をパラパラとめくるだけで、あとはAIが自動で処理してくれるようになっています。こうしてタスクがどんどんAIに巻き取られていくと、人はどんどん暇になっていくと思うんですよね。
やらなければいけない仕事をAIが巻き取ってくれた分だけ、時間は増えていく。歴史的にも、労働から解放された時間は娯楽や文化に向かってきました。同じように、これからはエンタメに使う時間がどんどん増えていくと考えました。
資産性という発見
そんなときに代表から聞いたのが、「ポケモンカード」のボックスの話でした。代表の知り合いが昔、友人からプレゼントでもらったボックスを、ずっと大切に持っていたそうなんです。
そのボックスは購入時5,000円台だったのですが、今では数倍の価格で取引されています。商品によっては、数年寝かせることで購入時の何倍もの値がつくケースもあります。こうした資産性のある部分に触れて、これはおもしろいなと感じました。
もうひとつ、代表は子どものころに遊戯王やデュエル・マスターズに熱中していた経験があります。そこにさきほどの資産性の話が重なって、トレカはいけるかもしれない。それが最初のきっかけの1つになりました。
業界にマーケティングの余地がある
そこから情報収集を進めていくと、トレカ業界はマーケティングが進んでおらず、勝ち筋がありそうな領域だとわかってきました。
たとえば、多くのカードショップは自社の売上がどこから来ているのか把握できていません。分析ツールをきちんと使いこなしている事業者も、業界のなかでは少ないのが実情です。
市場としてはこの先、AI時代やIPの強さを背景に長期的に伸び続けると見ていますし、そこに参入している競合もまだ少ない。このふたつが重なったところに、大きなチャンスがあると考えて起業しました。
信頼できる仲間と「砂のお城」をつくる
事業の方向性とは別に、根底にはもうひとつ大切にしている思いがあります。人が一番楽しいのは、信頼できて、リスペクトできる人と何かをつくっているときだと感じているんです。
同じ熱量を持てない相手と一緒にいると、どうしてもつらくなってしまう。部活動でたとえるなら、自分は本気で練習したいのに、周りが「部活は遊びだから」というスタンスだったら、噛み合わずに苦しくなりますよね。
だからこそ弊社では、信頼できて、かつ熱量が同じ仲間と一緒に「砂場」で「お城」をつくっていく、という表現をよく使っています。砂場は安心して試行錯誤できる環境、お城はそこから生まれる事業のことです。これは事業のテーマというより、組織の根底にある思いです。今後もそうした仲間と一緒に働いていきたいと考えています。
事業内容──トレカ特化のサービス提供と支援の両輪
弊社が取り組んでいる領域は、大きく分けると古本や古着、時計などと同じ「リユース市場」と、音楽などと重なる「エンタメ市場」の両方にまたがっています。事業の柱は次のふたつです。
ひとつ目は、トレカユーザー向けのサービスです。たとえば新しいパックの抽選情報はXなどさまざまな場所に分散していますが、これをまとめてわかりやすく見られるサイトを提供しています。代表的なサイトは「カード抽選まとめトレゲト」です。
ふたつ目は、カードショップやリユース事業者向けのマーケティング支援です。集客のためのウェブサイト制作や広告運用を通じて、店舗への来店数や売上を伸ばすお手伝いをしています。
特定の業界に絞るからこその強み
マーケティング支援は、Google検索対策だけ、あるいはGoogleマップ対策だけ、といったように支援範囲が部分的になりがちです。また、トレカ業界の商習慣を前提にしないまま設計してしまうと、事業者が本当に求めている内容とずれてしまいます。
弊社はトレカという領域に絞ることで、消費者が何を求めているのか、課題の構造がどうなっているのかを理解したうえで、包括的かつ的確な支援ができると考えています。
もうひとつの強みは、メディア・サービス運営と代理店機能の両方を持っている点です。
一般的にコンサルティング会社はコンサルティングだけをおこなっていますが、弊社は自分たちでメディアを運営しているからこそ、日々の運用で得た最新のノウハウやAIの活用方法を、そのまま支援先にも転用できます。
こうした強みを支えているのが、経営陣の経歴です。代表の岸田は学生時代から金融・就活メディアを立ち上げ、上場企業への事業譲渡を経験。その後ユニークキャリア株式会社を創業し、朝日新聞社やデーリー東北新聞社との共同メディア運営を含め、累計10件以上の事業譲渡実績を持つメディア構築の知見を有します。
さらに、SNS運用代行を通じて数十万人のフォロワーを抱えるアカウントを育成してきた実績や、事業会社でのプロダクトマネジメント経験に基づくデータ分析の知見も有しています。メディア構築とデータ分析というふたつの専門性を組み合わせることで、マーケティングの全工程を一気通貫で担える体制を築いています。
業界の信頼をつくり、熱狂を生む
今後のビジョンとして、まず取り組みたいのが業界の信頼性の課題です。トレカ業界では、事業者の倒産や、預けたカードが戻ってこないといったトラブルが実際に起きています。過去には、カードショップの倒産に伴い預かり資産が毀損するようなトラブルが話題になったこともありました。
市場自体は盛り上がっている一方で、消費者からするとどの業者が信頼できるのか判断がつきにくいのが現状です。購入の場面でも、転売目的の客層が店頭に殺到して定価で買えない、といった声も聞きます。だからこそ弊社のメディアで、信頼できる店舗の情報や、抽選情報をまとめた便利なツールを提供し、まずは安心して楽しく遊べる環境をつくっていきたいと考えています。
もう少し大きな視点で見ると、IP(知的財産)市場は今後の日本のなかでも伸びていく分野です。ここが伸びることは、日本経済や雇用にとっても意味のあることだと捉えています。事業者の強みとマーケティングの力を掛け合わせることで、事業者が栄え、国内の市場や経済が潤う一助になりたいと思っています。
抽象度を上げて言うと、当社がよく使っている言葉に「熱狂」があります。AIには生み出せないものは何かと考えたとき、行き着いたのがこれでした。仕事に打ち込んで熱狂すること、カードという趣味に熱狂すること。そうした「熱狂している人が幸せである」という状態は、AIには代替できないと思うんです。AI時代に熱狂をつくる、というのが弊社の大きなメッセージです。
学生に伝えたいこと──熱狂できるものにエネルギーを注ぐ
偉そうなことは言えないと前置きしたうえで、学生の皆さんに伝えたいのは「行動そのものに優劣はない」ということです。ゲームに本気で打ち込んで強くなろうとすること、料理が好きで突き詰めていくこと、それが仕事でも勉強でも構いません。
今、自分が熱狂できることにエネルギーを使うのが、一番幸せなことだと思いますし、そこに打ち込んでいけば、周囲からリスペクトされる存在にもなれるはずです。
私自身、学生時代に「時給300円でもいいからやらせてほしい」と自分から手を挙げて、未経験でインスタグラムの運用を始めた経験があります。2019年当時はまだライバルも少なく、ビジネスとして結果を出したいという思いで打ち込みました。
そこで出した結果は、その後の進路やキャリアにもつながっていて、あのとき打ち込んでいなければ見られなかった景色がたくさんあります。今、エネルギーを注げるものに時間を使えていれば、その舞台が何であっても、やりたいことにつながっていくと思っています。
弊社としても、一緒に頑張りたいと思ってくれる仲間はいつでも歓迎しています。まだ立ち上げたばかりのベンチャーで、かなりのスピード感で事業をつくっているため、全員に合う環境とは言い切れない部分もありますが、お互いの熱量が合えば、ぜひ一緒に働きたいと思っています。
設立数ヶ月で結果が出るスピード感
最後にもうひとつ、弊社の強みとして伝えたいのがスピード感です。事業を立ち上げたのは2026年5月ですが、この段階でSNSやウェブメディアの伸びは着実に出てきています。月間40万PVほどの着地を見込んでおり、売上も単月1,000万円ほどまで伸びてきました。これをコアメンバー2人で、複数のメディアを動かしながら実現しています。
スピード感を支えているのが、働き方そのものです。今はほぼ毎朝早くから顔を合わせ、たとえば早朝に公園を散歩しながら議論をすることもあります。フルリモートのほうが働きやすいという声もありますが、それでは一次情報を取りに行きづらくなったり、議論のスピードが落ちてしまったりします。
弊社では、頭を使ってオンラインでAIやマーケティングを動かす部分と、現場に足を運ぶ泥臭い部分の両方を大切にしていて、これを「インテリゾス」と呼んでいます。知性(インテリジェンス)と泥臭さを併せ持つ、という意味の造語です。どちらか一方に偏らず、両方をやれることが、他のマーケティング会社やメディアにはない強みだと思っています。
編集後記
今回、トレカプロ株式会社さまへ取材をおこないました。AI時代に仕事や娯楽の在り方がどう変わっていくのかという視点から、トレカという成長市場に着目された発想力に驚かされました。なかでも印象的だったのが「熱狂」という言葉です。
効率化が進むほど、人が本気で打ち込めるものの価値は上がっていくという視点は、学生である私自身のキャリア選びにも重なるものがありました。
設立数ヶ月というスピード感で結果を出しながら、仲間との信頼関係を大切にする姿勢は、これから挑戦する学生にとっても学びの多いお話だったと感じています。